法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』スネ夫ゆうかい事件/ドラえもんやめます

今回は前後半ともに、ほぼアニメオリジナルストーリー。


前半は、スネ夫の誘拐疑惑事件。TVの影響で誘拐を怖がるようになったスネ夫ドラえもん達にボディーガードを頼む。しかしドラえもん達が少し目を離した間にスネ夫は消失してしまった……
タイムマシンを使って誘拐を調べるという展開で、真相が原作の別話を応用していると見当がつく。しかし、くりかえされるタイムスリップが演出のリズムを生み、克明な調査が不可能性を盛り上げてSFミステリの楽しさを生む。
限定された舞台を様々な角度でながめる*1謎解き興味から、カーチェイス的なアクションまであり、娯楽作品としては一級。


後半は、食べさせた相手を辞めさせられる秘密道具「辞ニンジン」が登場する。その道具を使ってジャイアンリサイタルを辞めさせることができた。しかし道具を手にしたのび太は、いつものように暴走を始める。
ドラえもんに「子守りロボット」を、野比玉子に「ママ」を辞任させ、予想通り困った事態になる。厳しさは子供のためを思ってということを、野比玉子が第三者の口調で淡々と語る描写が面白い。
母と子の繋がりが消えた後、家から出ようとするのび太。玄関で思い入れなく見送る玉子。しかし扉を開けて出ようした背中に、のび太は引っかかりをおぼえる……人間の感情が道具の効果を上回る展開が、良くも悪くも藤子Fテイストと異なる。藤子Fならドラえもんが戻ってきた描写と同じように理屈づけをするだろう*2。ただし、演出が抑制されていたので感動の押し付けとは感じなかった。原作と雰囲気が違うから悪いと感じたわけではなく、あくまで作風の違いが興味深かったという話。

*1:3DCGを活用した一人称視点や低いカメラ位置、事件の舞台を説明する地図イメージ、空中で真上から見下ろす街並、等々の文字通り様々な構図で事件を描いている。不可能性に映像的な説得力を出す演出だ。

*2:あるいは、ドラえもんが道具の効果を消していたという説明を入れるかもしれない。