法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』映画公開直前SP/天の川鉄道の夜

映画の長い予告と、新作中編。
予告映像から読み取れる限りでは、マンガの決闘場面がアニメ化されることが確定したこと、それでいてドラえもんが「ひらりマント」を用いる場面では旧作映画の影響も見られること、少なくとも結末ではドラミが参加すること*1、マンガと違って「タイムふろしき」で偶然助かるのではないらしいこと、といったところが見所かな。
映画予告を見る限り、新生ドラえもん映画の平均的な作りになりそう。さすがに作画の良い映画が続くと予告だけでは『のび太の恐竜2006』ほどの衝撃はない。どことなく『新のび太の魔界大冒険〜7人の魔法使い〜』に似たコンテだったが、そういえば腰繁男監督は演出処理を担当していた。


「天の川鉄道の夜」は、ミステリー仕立てだった原作とは異なり、中盤で真相を明かす。そして、時代に取り残されて消え行く存在を、ノスタルジアあふれる切り口でていねいに物語る。原作とは全く違った方向性だが、傑作だ。
まず操縦席の様子を克明に描写し、続いて華やかなりし過去を語り、老朽化して不便になった現状を見せ、物言わぬ鉄道を実感できる存在として描き出す。ここまで描写を重ねたからこそ、最後に一花咲かせて退役する姿が感動できる。車掌をゴンスケに改変していることも郷愁を効果的に盛り上げた。藤子F作品でポンコツロボットと描写されるゴンスケだからこそ、列車とともに長い年月を走り抜けた説得力がある。
最新の列車に見下される中盤から、立場を逆転する終盤までの流れもいい。ジャイアンスネ夫が態度を変えるドラマと響きあい、強い爽快感を生み出す。天の川鉄道が老朽化しているという設定を活かし、事故が起きる説得力を高めた小技も効いている。
そしてスネ夫ジャイアンのび太がそれぞれの個性を活かした活躍を見せ*2、視聴後には劇場版を思わせる満足感が残った。
コンテは寺本幸代で、演出も連名で担当。メカニックのフェティッシュな魅力を感じさせる操縦席描写から、隕石を破壊する演出の抑揚*3、情感あふれる結末の風景まで、全く隙がない。作画も全体的に整っており、細かい演技で演出を支えている。特に、緻密で破綻のないメカ作画には感心した。

*1:しずか一人で対応していた原作に対して、のび太にはしずかでドラえもんにはドラミという構図になるわけか。

*2:のび太が列車上で隕石を撃つ描写は、原作短編の後日談に当たる大長編『のび太と銀河超特急』を意識しているのだろうか。

*3:一筋の細い光線が巨大な隕石を貫き、一瞬の間を置いてから隕石全体へ亀裂が入る。