法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

真面目に誤読されたかもしれないトリアージの話

以前に書いた不真面目な話について、id:REV氏からブックマークコメントをいただいていた。
はてなブックマーク - 『燃える方程式』〜トリアージについて不真面目な話〜 - 法華狼の日記

2008年08月30日 REV つまり、激甚災害が起こったら、医師と救命救急士を、域外に放り出せば、トリアージは発生せず、リソースも使わないので、みんな幸せになれるわけですね。わかります。

冗談にも取れる口調なので、どう反応すべきかよくわからないが、とりあえず字義通りに取った。主題は作者の意図通りに読む必要はないし、作中事実への誤読もいくらか許容されるべきと個人的に考えている。その上で、書いた者として説明しておく。
まず、現在の騒動では原義から拡張されてとらえられていることが多いとはいえ、トリアージは「発生」するものではない。発生するのは極限状況だろう。
また、域外に放り出すこと自体が広義のトリアージというか、議論になった命の切り捨てだ。
作中でトリアージを主張したのは医師だが、実行したのはパイロット*1
何より、あくまで医師より優秀な医療従事者がいたという展開だ。島本和彦をネタにした以外は何の工夫もないSSで、唯一独自性がなくもない箇所のつもりだ。医師と救命救急士の両方を域外に放り出すという発想が、冗談にしろ皮肉にしろ、どこから出たのかよくわからない。


なお、トリアージ騒動を意識したSSは以前にも書いていた*2
『宇宙砕氷船マスメディア』 - 法華狼の日記
トリアージについては明示してないが、元ネタとした『宇宙戦艦アキバ』への感想でトリアージ論争についてふれている*3。少なくとも、極限状況で切り捨てる者や切り捨てられる者を意識して書いた。
しかし。ブックマークでobjectO氏に指摘されたのとは少し異なる意味だが、戦争を終結させる方法は「ご都合主義」だ*4……結局、自分で設定した極限状況をフィクションとしてすら収拾できず、後退というか撤退というか敗走してしまった。だから最後の章で、それまでの章と主題が微妙にずれてしまっている*5
結局まだ自分の中では、トリアージ論争を部分的にふくむ、排除の論理について未消化のままかかえている。


なお、どちらも必ずしも現実の個人を批判しているとは読んでほしくないが、そう読まれる危険が今ここで書いためあることもわかる。『燃える方程式』のブックマークコメントでid:JuliusCaesar氏に「しまった、期待しすぎた。」という評をもらったのも、もうしわけない気分になった。
その辺りもふくめて、いずれ排除の論理を題材としたSSについては再挑戦したい。せめて、真面目に書くなら全力で、不真面目なら不真面目なりに楽しめるものにしたいものだ。

*1:現実のトリアージでも、タグ付けするのは治療者自身ではないという指摘はすでになされている。

*2:SF的な説明を減らすために時系列を前後させたのだが、読みにくく感じた場合は3→2→4→5→7→6→8→1→9→0の順序にすればキャラクターの思考が理解しやすくなるかもしれない。

*3:http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20080704/1215295531

*4:http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20080714/1216069368等で批判した点が、自作ではもっとひどいのだから話にならない。それこそ、ゲーム理論を用いて意外かつ説得力ある終結方法を提示できれば格好良かったのだが。

*5:正確にいうと、主題の方向性をずらして収拾できそうなところで結末をつけた。