法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

地方都市の図書館

まず、ホームレス問題について詳しいわけではないことを断っておく。大都市において図書館にホームレスが集中するのは、さまざまな選択肢を行政が切り捨てた当然の結果だろう*1、という一般論くらいしか思いつかない。
それを前提として、大都市から遠く離れた地域に住む者から、議論の核から遠く離れたことをいくつか。


田舎都市なので、図書館の周囲を囲むように広い公園があり、街中にも緑地が点在している。図書館内に入らなくても温暖な時期ならすごせる空間が残されているので、ホームレスの姿は少ない。
それでも、ひまができたら図書館で日がな一日のんべんだらりと歩きまわる*2生活をしていたことがあるので、ホームレスらしき人*3を図書館で見かけたことはある。
見た限りでは、机や長椅子で寝ている人はおらず*4、けっこうお堅い専門書関係の棚あたりにいた。児童書関係にはいなかった*5。人の少ない場所だからと床に寝転んでいたり座ったりしていたわけでもないので、普通に本を探していたのだと思う。
なお、利用していた図書館は一人がけ椅子がほとんどで、長椅子も区切ったりしていて*6、机も小さ目だった。上に寝るようなことができない作りだったわけ。これも、寝ている人を滅多に見かけなかった一因かもしれない。ホームレスが眠れないよう道に突起物を並べて通行を阻害する行政は馬鹿だと思うが、図書館利用者全般が寝ることを防ぐための手法ということなら一概には否定できないかもしれない。少なくとも女性専用座席*7よりは真っ当な手法だと思う。


鼻が敏感なので煙草の臭いなどは屋外でも気になるが、ホームレスの体臭には気づくことすら滅多になかった。もともと紙の臭いがする図書館で日常的な風景になれば、体臭くらい気にならないのだろうか。
もともと真昼の図書館は人が多くないので、わざわざ他人と接近して読む必要もなく、少なくとも通っていた図書館では悪臭を感じたことはなかった。むしろ夏休みあたりに学生が多数集まっている状態こそ、よほど汗臭く感じたりもする。図書館の利用者には老人も多く、近づけば加齢臭がする。しかし学生や老人を排除するべきとは思わない。
誰かに連れられてきて、つまらなそうに椅子へ座って足をぷらぷらされている子供も目につく。子供嫌いからすれば追い出したい光景かもしれない。泣き叫ぶ子供もけっこういて、静かな館内だけに遠くまで響いたりする。悪臭など比べ物にならないほど気になる。助けてやろうと思ったりもする。
ついでに煙草嫌いの立場でいわせてもらうと、狭い居酒屋や喫茶店で料理や煙草の臭いがただよってくる状況こそ気になる。本を読むことと臭いの関係に比べまでもなく、料理の味を楽しむ際に嗅覚は大きな要素となる。禁止された行為をしていない利用者に対して排除行動を行っていいなら、たとえば禁煙喫煙を明示していない飲食店*8で飲食を終えて煙草を吸っているような人を追い出しても良かったのだろうか。ホームレスの自己責任を問題にするならば、喫煙者こそ明らかに自己責任で煙草を吸っている。


だいたい図書館の本なんて古くて誰が利用しているかわからないもので、頁が黄ばんでいるのはもちろん、食べ物らしき染みがついていたりする。トイレで読む人もいる。
雑誌のイラストや料理レシピが切り抜かれている例も少なくない。『ケロロ軍曹』を借りた時など、どうも話が繋がらないのでおかしいと思っていたら、水着の出てくる頁を丸ごとカッターで切り取られていた。
図書館で本を読む層は多少の汚れに頓着しないという印象があったので、今回の騒動には驚いた面がある。


……いや、他の場所ならホームレス排除で最終的に一致しそうなところ、ちゃんと排除するなという声があるだけ、図書館利用者はまだ良いのかもしれない。
本を読む者なりの矜持、というか。

*1:つまり図書館を利用する選挙民にも何らかの責任はある。極論をいえば自業自得とすらいえるかもしれない。

*2:興味の対象が浅く広いので、あちこちの棚から面白そうな本を探すだけで時間がつぶれてしまう。

*3:日雇い労働者かもしれない。

*4:学生の自習とか椅子に座っての居眠りとか、「一般人」こそが利用目的外の行動を取っている傾向を感じる。

*5:ちなみに児童書が置いてある棚の机は、大人が座らないようにという注意書きがある。

*6:座る部分が穴を空けた木製の板で、クッションがされていないのは、もしかして悪臭が移るのを防ぐためなのだろうか。

*7:痴漢防止目的ならば、対症療法なりに意義はあるかもしれない。

*8:最近は少なくなったが。