法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

目的外の図書館利用者を排除するため、たったひとつの冴えたやりかた

地方都市では、前回*1経験談を書いたより小さい図書館だと、全くホームレスが見当たらないこともある。
そのようなただでさえホームレスがいない図書館の、大人が滅多に入りこまない*2児童書の棚を見ると、多くの書籍が傷つけらている。鉛筆やボールペンで落書きされていることは少なくなく*3、頁が切り取られていることも日常茶飯事だ*4。人気のありそうな古い児童書では、飲食物らしき染みはあって当たり前とすら感じる。
児童書を読むことも多いので*5、実際に損壊された書籍は何度も見かける。ホームレスの悪臭が染みついて読めなくなった本など少なくとも地方では見当たらず、子供や主婦*6による損壊こそ利用者からすれば現実の脅威だ。


そう思っていたら、来館目的に図書館の立場からの意見があった。
参考になったものの、ホームレスではない利用者の立場から見て疑問をおぼえる部分がある。
図書館はあなたの家ではありません - The best is yet to be.

●ホームレスって図書館が好きだから集まってるんだよね!誇らしいよね!


冗談言うな(泣)。博物館や美術館などの他の文化施設社会教育施設に比べ、入館に対価を取られず、座席数に余裕があり、新聞や雑誌など手軽な娯楽が豊富で、エアコンが効いており、要するにコストパフォーマンスが高いからですよ。図書館本来の機能を求めて訪れている人は少数です。

新聞や雑誌を読んでいるならば間違いなく利用者だろうに、読書という娯楽目的で図書館を利用したら駄目なのか。目的外利用とまでは書いていないものの、ホームレスが新聞や雑誌を読むのは「本来の機能」ではないというのか。ならば、様々な書籍を娯楽目的で読んでいる、私のような利用者も排除されるべきなのか*7。実際、ベストセラーやマンガの大量購入には批判意見もある。極論をいえば、図書館において許されるのは、たとえば大学院生としてid:hokusyu氏が研究目的に専門書の類いを利用すること程度にならないか。
目的内利用に限定し、良い環境や娯楽を求める人々を許容しないなら、人間のためでなく書籍保存目的のためだけにエアコンを使い、座席を無くせばいい。床もカーペットである必要はない。つまり書庫と同じ状態にする。娯楽目的で読まれるような雑著*8の購入もやめよう。そうすれば図書館経営における支出も抑えられるだろう。

目的外利用のユーザーが追い出されるのは、目的内利用のユーザーを妨げる場合の、更にその中でも一部かと思いますが、実際には目的外利用を厳しく見定めることは難しいです。

逆に、快適な空間や暇つぶしを目的として図書館へ来るような人々に引き取ってもらうため、ホームレスに来てもらえばどうか。入り口近くに場所を取って、休んでもらおう。
本気で書籍を求めている人は、悪臭がするだの景観が悪いだのの文句をいわず図書館に来るし、行くだろう*9
ホームレスを館内に呼ぶだけであり、利用者に何ら制限を課すわけではない。利用しようと思えば依然として誰でも利用できる。……これでいいのだろうか、図書館は。

*1:http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20080901/1220311317

*2:椅子や机が小さく、棚の幅も狭いので、寝転んだりする場所がないのだ。しかも本棚が低いので、大人が入ると目立つ。

*3:かいけつゾロリ』シリーズのような彩色されていない絵本でよく見かける。クイズやパズル、特に迷路を扱った本に答を書きこんでいる例が特に多い。

*4:かつて、バーコードを読み取らせて数値を争うという、バーコードバトラーという玩具があった。それを特集する書籍に掲載されていた強いバーコードがそっくり切り取られていて、苦笑したものだ。

*5:現実ではオタク丸出しな外見の男が真っ先に児童書の棚から排除されるかもしれないと、冗談半分に思う。

*6:レシピを記した雑誌が切り取られていたりすることから推測。

*7:おそらく娯楽目的の利用者全体からすれば、ホームレスの比率はかなり少ないだろう。

*8:真面目な話をすれば、真っ当な人々から見向きもされない雑著こそが文化を支える存在だと思う。

*9:時たま肥料の臭いがただよう田舎に住み、すれ違えないほどせまく紙の臭いただよう古本屋で何時間もすごせる人間からすると、ホームレスの悪臭で本を読めなくなると説明する感覚が信じられない。