今さらな話題だが、毎日新聞によるインタビューを読めば読むほど、鳩山法相が何を主張したいのかわからなくなった。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20080704mog00m010029000c.html
何かとお騒がせな鳩山邦夫法務大臣(59)である。安倍改造内閣で昨年8月に就任、同9月の福田内閣発足で再任されて以来、13人の死刑を執行し、朝日新聞の一面コラム「素粒子」に「死に神」と書かれて、怒った。「執行を自動的に」「友人の友人はアルカイダ」発言など、話題が絶えない。鳩山大臣、いかなる人物なのか。
だが、大臣が「日本の生命観は自然と共生であり、日本人はウエット」という持論を話し出したあたりから、分からなくなってきた。「死刑廃止論はドライでかさかさした人たちの考え。人の命を奪ったんですよ。何人奪っても死刑がない、そんなドライな世の中に私は生きたくない」
大臣は、日本人は木や石などすべてのものに神をみるアニミズム(汎神論者)と考えている。「すべての命を大事にする文明だ。すべてと共生するアニミズムこそ、洞爺湖サミット最大の課題である地球環境を救う唯一の道だ」
……分からない。すべての命に死刑囚は含まれないのか。後で元秘書に解釈してもらう。「大臣の立ち位置は死刑囚でなく、遺族。遺族が死刑を望んでいるならその望みを断ち切ることはできない、という意味でウエットなんです」
主張がわかりにくいのは、毎日新聞記者のためではなく、おそらく鳩山法相自身の責任だろう、と思った。正直にいって、鳩山法相の過去から考え、一貫した主張は期待できないと思ったのだ。
はてなブックマーク*1等で見られるような、法相へ批判的な記事という評価は説得力が薄い。
中立的な記述を心がけるより、明確に賞賛もしくは批判する立場を取れば、読みやすい記事にはなったとは思うが。
しかしProdigal_Son氏の評を読み、また考えが変わった。
http://d.hatena.ne.jp/Prodigal_Son/20080705/1215226091
媚びぬ引かぬ退かぬ的な硬骨漢を匂わせれば、どこの後援会の案内チラシだよと思わんばかりだ。
確かに、「執行を自動的に」「友人の友人はアルカイダ」のような有名な失言に対して、主観的な肯定評で字数を埋めているところから考えると、中立を装って賞賛する記事とも読める。
さらに続いて掲載されたインタビュー全体を見て、考えは確信となった。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20080704mog00m010035000c.html
−−「素粒子」に怒るのはなぜですか。
鳩山氏 何度も申し上げたように、政治家は悪口はさんざん書かれる。批判、中傷は慣れとる。「友達の友達にアルカイダ系の人間がいる」という話をしたときも、平和ぼけもいいとこで批判された。友人の友人というのは事実。その人間が日本に入国しているのは怖いでしょ、と警告を発したつもり。外国のマスコミは「率直でよろしい」。日本のマスコミは「法務大臣の友人の友人にアルカイダがいていいのか」。そればっかり。典型的な中傷ですよ。でもそれは慣れている。
アルカイダに意識的に言及したのは、鳩山法相自身だった。最初の記事では論評しようとして毎日新聞側が引用したかのように見え、あたかも鳩山法相に対する批判であったかのように感じられたのだが、これでは全く話が違ってくる。
もちろん、記事に掲載されていない会話で、記者側からアルカイダの話をした可能性はある。しかし少なくとも、引用した部分の質問に対して、優秀な政治家ならばアルカイダ発言に言及して余計な突っ込みどころを増やしたりはしないだろう。
もちろん、今さらアルカイダ発言の正当性を訴えたりもするべきではないし、そもそも訴えてどうしたいのかわからない。
斎戒沐浴してやるべき、と(メディアに)発言したが、やり方が分からない。そのころお袋が電話してきて、「死刑執行するときは先祖の墓ぐらいはお参りしなさいよ」と。
……ちょっと待て。
インタビュー全体を見ていて思ったが、鳩山法相の発言を素直に掲載することこそ、最も過激な批判になりかねない。
死刑執行に賛同する人は、手放しで鳩山法相を賞賛するべきでないと思う。
*1:「法相の死生観が死刑の有無と関係しちゃダメでしょ。死刑なくしたいならこういう個人攻撃やめて法律変えるべき」。ヤフーの掲載ページに対するブックマークでも、「中立なインタビューに見せかけた鳩山批判にしか見えないんだが。」といったコメントがついている。http://b.hatena.ne.jp/entry/http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080704-00000016-maiall-pol