法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ビートたけしの独裁国家で何が悪い!?2〜日本の未来を考えるSP〜』

日本テレビ系列で放映された、3時間足らずのバラエティ特別番組。昨年に引き続き、世界各国の独裁政権を、短所はもちろん長所もふくめて紹介する内容。
一回目の感想*1とほぼ同じで、今回も新聞国際欄等を見ていれば既知の話題がほとんど。キューバ紹介など、病状悪化でカストロ議長が一線を退いていることに言及しなかったり、最新状況からすると遅れている感もある。
一回目と比べると撮影が困難な国に潜入している一方で、世界から注目度の高い国家が多いため資料映像にも目新しさが少ない。
取り上げられたのが米国から名指しされた独裁国家に偏っていることも気にかかった。もちろん、どこの独裁国家を取り上げるのも番組の自由だ。米国高官の発言を引いて恐怖を煽り、次に実態との乖離を見せて独裁国家にも良い部分があると感じさせる演出意図はわからないでもない*2。しかし、南米における独裁国家の多くが、米国の影響下にある独裁政権が先に存在し、現政権に打倒された経緯があることを一度も説明していない。昔のひどい独裁政権から、少しまともな独裁政権に変わった歴史を知らないと、国民の一定数が現独裁政権を支持している理由がわからないだろう。


もちろん、様々な独裁国家の姿がまとまって見られたのは興味深かった。
反政府派と思われないよう大統領写真を待ち受け画面にした携帯電話や、インフレで紙幣の0を数える面倒くささに苦笑する銀行員といった、ジンバブエ潜入取材は貴重。ベネズエラチャベス大統領が毎週日曜日に5時間生放送している番組も、カリスマ性は確かにあるのだろうと思わされた。個々は枝葉の豆知識にすぎないが、出来の良いドキュメンタリーがふるい落としかねない手触りある情報でもある。
最も印象深かったのはボリビアのモラレス大統領インタビューだ。政権の独裁性といったきわどい質問にも受け答えする姿は、政治家として堂に入ったもの。下手な日本の政治家よりも、よほど真摯な姿を見せていた。ボリビアが平和な政治体制かというと、大統領支持者と抗議活動の衝突で大混乱が起きていたりするのだが*3


何が「トンデモ」だったかというと、各独裁国家紹介を終えた後の、ビートたけしと鳩山兄弟の鼎談。
まずビートたけしは、鳩山邦夫元法相の死刑執行を「断行」「偉い」と評する。
それだけならまだしも、鳩山元法相が死刑自動執行を再び主張し、残りの2人も消極的に支持*4。そしてビートたけしは、死刑廃止論者は法務大臣になる前に断るべき、「公務違反みたいな」ものだからと語る。鳩山由紀夫議員も「法律がありながら法務大臣が法律を守らないってのは最悪」と賛同する。
法相が死刑執行の精査する法律は軽視しつつ、死刑廃止論者が法務大臣になることを批判する根拠に法律を持ってくるのは、二重基準といわざるをえない。
何より滑稽なのが、報道に批判された死刑自動執行主張が、世論からは支持されて嬉しかったという鳩山元法相。番組で紹介されたような、国民から一定の支持がある独裁者そのものじゃないか。番組が狙って引き出した発言だとすれば凄い。

*1:http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20070930/1191196459

*2:しかし演出だとしても、アルジャジーラがテロリストと繋がっていると本当に信じている人はどれだけいるだろうか。

*3:ちょうど、反政府側の東部4県が政府と和解協議に入るという報道がされている。

*4:少なくとも反論しなかった。