強制執行妨害事件、通称「安田事件」の記事を見て、裁判所の判断にひっくり返った。あそこまで明確な無罪判決がよくひっくり返ったな、というのが率直な感想だが、それ以上に驚く主張が報じられていたのだ。
引用中の「元社員ら」とは、安田弁護士が不動産隠しの方法を指示したという検察側の証人。この元社員の横領が事件の真相だと弁護側は主張していたのだが……
「元社員らは社長の了承なしに金を持ち出したが横領とは言えない。犯行には被告の助言が重要な役割を果たした」
……凄いな、と驚くしかない。この報道されている文章だけでは、どうにも裁判所は奇怪な判断を行ったとしか読めない。
エントリタイトル*1には仮に「盗人」と表記したが、少なくとも重い罪ではないと裁判所は判断したらしい。そして他の証言と合わせれば、元社員ら証言の核心部分は信用できるという。
「社長の了承なしに金を持ち出した」人の証言を根拠にできるのなら、法律上は罪に問えないはずの変遷した被告人供述も、充分に根拠となるように思える。
……光市母子殺害事件と安田事件の裁判官をいれかえれば、それぞれ違う判決がくだったかもしれない、などと馬鹿なことを思いついてしまった。
もちろん、裁判所は相応の検討も行ったはずだと思いたい*2。しかし、どうしても脳裏に陰謀論がちらついてしまう。報じられていない範囲に判決の核心があるならば、なおさらだ。
しかしそもそも陰謀など考慮する必要もなく、これが不運な状況なのは確かだ。たとえ安田事件が無罪で確定したとしても、それが光市母子殺害事件に人々の注目が集まる時と再び重なるとは考えにくい。人々の脳裏には、有罪になるような弁護士が光市母子殺害事件を弁護していたのだという印象だけが残るだろう*3。