法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

「アサヒる」を何に対して使うのか

アサヒる」という言葉。個人的には朝日新聞の捏造と批判しているつもりで自滅する、という印象がつきまとって離れない。


この言葉が生まれた直後、沖縄県民大会11万人騒動が起こされたことが印象を強固にする。朝日新聞が人数を捏造したという産経新聞の主張を信じた人が「アサヒる」という言葉を使っていた。
はてなブックマーク - 【2ch】ニュー速クオリティ:【アサヒる】沖縄集団自決集会、11万人はやっぱり捏造でした☆
個々の発言は引用しないが、「アサヒる」に類するタグやコメントの比率が高い。
以前にもid:pr3氏のエントリ*1を紹介したし、ブックマーク内でも一部で指摘されているが、朝日新聞主催者発表を伝えただけだ。仮に11万人という数字が誇張されていても朝日が捏造したなどという話にはならない。当時の『週刊新潮』でさえ、朝日と産経のやりとりで産経の分が悪いことは認めていた*2
もちろん、はてなブックマーク程度では全体の一例でしかない。しかしWikipediaアサヒる問題」項目*3にすら「アサヒる」代表例として記載されている。
アサヒる問題 - Wikipedia

本件の前後には、次の事象が生じていた。

1. 直前の第21回参議院議員通常選挙の報道で、朝日新聞が反安倍一色の報道に終始したとの指摘がなされたこと。[8]
2. 直後の9月29日に沖縄県宜野湾市で開かれた教科書検定意見への反対集会で実際には18,179人〜20,000人程度(警備会社「テイケイ」の調査による[9])の参加者数を朝日新聞が「11万人」と伝え[10]、政府が訂正申請に応じる騒ぎが生じたため[11]、「11万人」という数字は虚偽報道ではないかと各方面から疑問が提示されたこと[12][13][14]。

今回の「捏造疑惑」はこれらの事象とともに、本来の報道機関としてあるべき「事実を正確に伝える」という原則から逸脱しているのではないか、或いは「世論誘導」をしようとしているのではないか、と議論となったものである。

日本版Wikipediaに疑問符が多々つけられることは今に始まったことではないが、一定の信頼を置いている人は多いだろう。ネットの一状況を示していることも確かだ。
結果的に、「アサヒる」という言葉を使いたがる人々の問題が浮かび上がってきた。


また、朝日新聞以外に対しても「アサヒる」という言葉を使用する例が見られる。大手ブログがタイトルに使用した一例。エントリ内容の正否は全く別問題として。
毎日新聞がタス通信をアサヒる。「イスカンダルは新型対空ミサイル?」 : 週刊オブイェクト
結局、「アサヒる」と呼んで批判する対象は朝日に限定されないらしい。これは、「アサヒる」という言葉で表現されるような朝日特有の問題が存在しないことを示しているのではないか。そもそも沖縄県決起集会からして、朝日に限らず難癖をつけた産経まで主催者発表を報じている。
こうして「アサヒる」という言葉がただのレッテルでしかなくなった結果、朝日新聞が実際に持つ問題から注意がそれてしまうのではないか。逆に報道機関で普遍的な状況が、朝日新聞という一部の状況で見られるものと受け取られたり、朝日新聞的なこと*4に原因が求められ実態とかけはなれた解釈をされてしまう危険性もある。


もちろん、風刺や皮肉で状況の一部を端的に示そうとする結果、他の視点を排除してしまうことは「アサヒる」に限らない。むしろ、そういう欠点があると知りつつ皮肉や風刺とつきあうべきだろう。
よく考えもせず嫌悪した対象へ反射的に使用するばかりでは、「アサヒる」に風刺としての価値はない。


最後にWikipediaで参考リンクにされているWIKI『asahiru辞書』*5からいくつか強調部分を変更して抜粋引用する。極端ではあるが、「アサヒる」の意味を拡散させている一例だ。
アサヒる者たち - asahiru辞書 - アットウィキ

5.史実かどうかわからない話を、教科書に載せるのはいかがなものでしょうか?一時「エセゴッドハンド」藤村新一によって、日本の旧石器時代史の争点であった前期・中期旧石器時代が教科書に掲載されました。しかしそれが捏造であることが判明。藤村は社会的に抹殺され、またそれによって史実とされた部分の削除を余儀なくされました。南京大虐殺も百人斬りも史実かどうか疑わしいわけですから、いくら「近隣諸国条項」があっても掲載されるべきではありません。

本多勝一
朝日新聞社在籍時代に「中国の旅」を上梓。そのため向井敏明少尉の娘夫婦一家の幸せを破壊。向井少尉や野田毅少尉の名誉を傷ついているところをさらに傷つける。一本の刀では百人どころか数人も斬れないのは有名だが、心底アサヒった人物である本多勝一は「ならば剣豪小説も全てウソだと言うのか!」と反論し、チャンバラと現実の区別が付いていない事で衝撃を与えた。

百人斬り裁判の結果をもっても、まだ現実が見えていないのだろうか。
ちなみに、藤村氏が捏造した歴史を大量に掲載し、後の変更を余儀なくされたのは『新しい歴史教科書』だった。
また、本多氏はあくまで歴史で語られる有名な剣豪の存在*6を想起させるため小説に言及しただけだ。小説を根拠としたというのは誤読もしくは捏造。本多氏は論争時代に、鵜野晋太郎陸軍中尉の証言を根拠としている*7
反アサヒる者 - asahiru辞書 - アットウィキ

日本経済新聞・2006年7月20日朝刊のいわゆる「富田メモ」報道の意図的な誤報を暴いたり、

富田メモについては、いい加減にあきらめるべきだと思う。

橋下徹
山口県光市母子殺害事件の21人の弁護団」を、出演番組の視聴者に向けて、懲戒請求を呼びかけ結果、3900件もの懲戒請求が立てられるきっかけを作ったのである。
この事件は、「アサヒる」という言葉が生まれる4ヶ月前のものですが、まさしく「アサヒる者」に対する至極当然の対応をしたまでです。それに逆ギレを起こした「アサヒった」弁護士連中がおかしいのです。

橋下徹弁護士について、いまだにこういう文章をかかげられる神経に驚く。

*1:http://d.hatena.ne.jp/pr3/20071003/1191390246

*2:ただし、朝日新聞は揚げ足を取っていて議論を建設的にしていない、と何とか朝日にも問題があるかのように表現していた記憶もある。手元に資料がないので要確認

*3:わざわざ項目を立てるような内容ではないだろうとも思う。ただし言及されることの少ない貴重な情報もいくつかある。

*4:そう批判者が思いこんでいること。

*5:http://www42.atwiki.jp/asahiru/pages/1.html

*6:実際に百人斬ったか否かを争点にしていない以上、本多氏は武勇伝を史実と主張する必要すらない。

*7:『南京への道』167〜170頁