法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

秦郁彦教授は本当に……

従軍慰安婦制度を擁護する唯一の近現代史専門家、秦郁彦教授に対して、Stiffmuscle氏が引用文献とつきあわせた詳細な批判を始めている。
どくしょのじかん 1 - Stiffmuscleの日記
どくしょのじかん 2 - Stiffmuscleの日記


補足として、従軍慰安婦関連で、ネットで見られる秦郁彦批判の代表例を並べておく。
まずは林博史教授の批判。
http://www32.ocn.ne.jp/~modernh/paper44.htm
対抗言論*1高橋亨氏による批判。
http://homepage3.nifty.com/m_and_y/genron/hatsugen/ianfu-hata.htm
碧猫氏による『正論』記事批判。
Gazing at the Celestial Blue 「正論」における「米下院の慰安婦決議阻止案」


逆に、けして歴史修正主義者ではないのに秦郁彦主張を信用してしまった一例も上げておく。(追記:こちらのページについてはコメント欄も参考のこと)
慰安婦と野暮な男とアジア女性基金による解決 | 日華事変と山西省
秦郁彦による従軍慰安婦論争の経緯を信用してしまい、誤解の上に主張を積み上げてしまった。それでもさほど歴史修正主義的な見解になっていないのは、ある意味で凄い。


さて、これほど批判が多いのに、秦氏が評価されているのは、やはりそれなりに業績を上げているからではある。昭和天皇独白録、百人斬り証言、その推測や調査によって判明した歴史も少なくない。
あくまで憶測だが、業績を上げつつも問題だらけの行動を続けるのは、学者として傍流に位置するからではないかと思う。いや、現代の歴史学は国家の史料でも懐疑的に見ることを基本としている以上、防衛大学の教授でもあった秦郁彦は最初から非主流学者だったといえるかもしれない。
主流ではないからこそ、他の学者が見落としていた資料や、特異な視点に気づく。『慰安婦と戦場の性』にかかげられた学歴*2も、劣等感のあらわれではないか。逆に、左派すら言及することが少ない東条英機の起こした戦争犯罪「陽高事件」をくり返し指摘*3するのも、自己の業績を広く知らしめたいがためと考えればしっくりくる。
もちろん、あくまで全て憶測にすぎないのだが……

*1:近年はサイト更新が少なくなって言及されにくくなったが、ネットにおける歴史修正主義の跋扈に早くから対抗している老舗。私も幾度となく利用させてもらった。内容の濃さや多岐にわたる批判が素晴らしいが、歴史修正主義者の詐術が全く進歩していない記録としても興味深い。

*2:http://d.hatena.ne.jp/Stiffmuscle/20070717/p1

*3:http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20070606/p1