法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『きんぎょ注意報!』が「ポテチ」という言葉を広めたとしても、それ以前のメディアにおける使用例は複数ある

 はてな匿名エントリで、湖池屋が「ポテチ」の商標をもっているという話題の前提として、Wikipediaから根拠を引いていた。
「ポテチ」食ってて何となく気になったんだけど

wikiにも載っている通り、「ポテチ」という言葉が世に広く知らしめられたのは

1991年にアニメ化もされた「きんぎょ注意報」とされている。

「きんぎょ注意報」は少女漫画雑誌の「なか〇し」にて1989年2月から連載が開始され、

1989年5月に発売された号にて初めて「ポテチ」という呼称が登場した。

 しかしWikipediaを見ると、たしかに作品項目の冒頭で断定的に記述されているが、情報源とされているWEB記事はタイトルを見ると断定をさけている。
きんぎょ注意報! - Wikipedia

ポテトチップスの略称「ポテチ」を日本中に広めた作品として知られている[1]。

1.^ 「ポテチ」の言葉広げたのは『きんぎょ注意報』? 優しい世界の鋭い笑いに要注意 - マグミクス

 実際に記事を読むと本文で断定しているが、その根拠はどこにも書かれていない。
「ポテチ」の言葉広げたのは『きんぎょ注意報』? 優しい世界の鋭い笑いに要注意 | マグミクス

 みなさん…ポテトチップスを略した「ポテチ」って言葉は『きんぎょ注意報!』から広がったのですよ……。発売前に今ここで『きんぎょ注意報!』をおさらいしていきたいと思います!


 そこで初出をしらべるために、国立国会図書館デジタルコレクションの全文検索に「ポテチ」を入力したところ、少なくとも1980年ごろから少女雑誌で用例が見つかった。
国立国会図書館デジタルコレクション

セブンティーン = Seventeen 11(36)(527);1978・8・29
雑誌
(集英社, 1978-08)
109 コマ: もいいわ」新ジャガのポテチ娘席が近くだったの中学3年のときは、その彼とはもう1年と3か月女の子

ラブリーフレンド 9(1)
雑誌
(講談社, 1982-01)

全 2 件の該当箇所
166 コマ: あちがうの昼間ポテチを食べたからあ
167 コマ: シーツだってそうよポテチでもおせんべでもも

りぼんoriginal 1982(5月20日)
雑誌
集英社 [編] (集英社, 1982-05)
196 コマ: ゃーりー-つねっねっポテチ買っといたヨッし緒にたべよ〓ったく

ハローフレンド 6(8)(67)
雑誌
講談社 [編] (講談社, 1985-08)
167 コマ: ーんアイスとポテチとチョコくださ

週刊少女フレンド 23(25)(950)
雑誌
(講談社, 1985-12)
165 コマ: 電車にのったんです。ポテチを、さあ食べよ一下ネタ =LOVE あー、もったいない!みなさんもギンギ

セブンティーン = Seventeen 19(41)(947);1986・10・21
雑誌
(集英社, 1986-10)
29 コマ: ば、そりゃ太るって。ポテチ&コーラのGコンビはダメ子さんだって。男のコはデブはキライ

セブンティーン = Seventeen 19(44)(950);1986・11・11
雑誌
(集英社, 1986-11)
18 コマ: ク!!]家に帰ったらポテチおともにゴロゴロ、テレビお菓子は思わぬ高力ロリー。食べちやったら後悔し

セブンティーン = Seventeen 20(13)(968);1987・3・31
雑誌
(集英社, 1987-03)
92 コマ: ぶたれました。笑顔でポテチ食っちゃいけねーんですか、とーさん。うちは、ポテチも安心し

月刊ぶーけ = Bouquet 10(5)
雑誌
(集英社, 1987-05)
216 コマ: こたつん中でポテチばっかし食べで

 1978年の使用例は文章がこなれていなくて、入力ミスの可能性も考えられるが、1982年以降は「ポテチ」と呼ばれていたと考えられる。ひとつの雑誌が流行らそうとしていたわけでもない。
 少女雑誌以外にも、『きんぎょ注意報!』以前の使用例が見つかる。これも当時に流行していたカードがオマケに付くポテトチップスと考えて良いだろう。

週刊ベースボール 42(49)(1669);1987・10・26
雑誌
(ベースボール・マガジン社, 1987-10)
46 コマ: 26 日月曜カード付ポテチを買ったらば5枚中ニンニ部一荘 L30枚巨人だった私はっ!西武ファンだ!遠藤さんに私の足を貸してあ

 念のため、少しずつメディアで定着した言葉が人気作品につかわれて、より広まっていくことは否定できない。人気作品だった『きんぎょ注意報!』が略称を広めて定着させた可能性はある。
 事実として、1990年ごろから「ポテチ」の使用例が格段に増えた印象がある。統計をとったわけではないが、オノマトペなどにつかわれる「ポテチン」という言葉よりも検索で引っかかりやすくなる。
 ただ略称が広まった時期がさらに古かったことになると、匿名エントリが下記のように指摘したように、よく湖池屋は「ポテチ」の商標をとれたものだと思えてくるが……

「ポテチ」の出願は1989年12月となっている。

 

後乗りじゃねーか!

え?ポテチ流行ってんじゃん!商標権取らなきゃ(使命感)

じゃねーか。