TVアニメ3期の放映が10月にひかえているが、いまだ監督が発表されていない不思議な状況にある。
ともかく、初めて2期を視聴するにあたって1期も再視聴したが、やはり以前に見た時の印象どおり作画アニメとして絶品だった。
どれだけ出来が良くても枚数をつかって動きまわりつづけるだけでは単調になって飽きやすいが、マッドハウス制作らしい止め絵重視な演出も適度に入ることで、映像の単調さを避けられている。止め絵重視の出崎統監督がAプロのアニメーターとともに作った『ガンバの冒険』の逆と言おうか。
どのような敵でもワンパンチで倒してしまうため、ランダムに戦いながら退屈していたワンパンマンが、ヒーローとして階級社会に身を投じることでついにそれなりに戦える相手に出会えたというストーリーのまとまりもいい。
ワンパンマンの押しかけ弟子ジェノスの復讐劇はまったく進展していないが、無力でもヒロイックにふるまいつづける無免ライダーともどもヒーローの類型を描いて、最初の戦いを例外として強くなりすぎてヒーローの精神性を失ったワンパンマンとの対比として機能している。
ただ、ぷりぷりプリズナーは、もともと特に良いとも思えないステロタイプなキャラクターだったが、現在に視聴するとマジカルゲイにセクハラさせていることが本当に厳しい。悪い意味で匿名掲示板出身の漫画家らしいキャラクターだ。
そして声優とキャラクターデザインの久保田誓だけが残留して、他のメインスタッフをほとんど交代させ、制作会社もマッドハウスからJ.C.STAFFに変更となった2019年*1の2期だが……
あまり評価が良くない作画だが、J.C.STAFF作品としては健闘しているし、ヒーローパロディ漫画のアニメ化としては相応の水準ではないだろうか。どちらかといえば1期の映像クオリティが異常だっただけで。米たにヨシトモが絵コンテを担当したOPの、くりかえし絵がヘチョくなる演出なども、意識的に制作リソースにあわせて楽しめる作品を作ろうとしているように見える。サイボーグやメカニックの表現で、入念にメタリックな効果をつけているところは1期とは違う良さがあって目を引いた。かつて仕上げや撮影が得意だったJ.C.STAFFらしさがある。
どちらかといえば、どうにも話がとっちらかっているところに厳しさがある。1期で少し顔見世しただけのフブキがきちんと主人公と接触したかと思えば、ほとんど置物のようになって物語にかかわらない。怪人になろうとする男のヒーロー襲撃サスペンスは腰砕けで終わる。超常のヒーローが活躍する世界でおこなわれる格闘大会が、怪人と対峙することで本筋にかかわってくるかと思えば、ただの能力的な弱者のように終わる。
スケールの異なる複数のストーリーが同時進行して交錯することで展開を予想できない良さはあったし、個々のエピソードはそれなり以上に楽しんで見ることができたが、ふりかえってみると何の物語だったのかがよくわからない。連載漫画的と考えれば極端に悪いわけでもないが、1期のまとまりの良さを考えると2期もそれなりの落としどころを用意してほしかった。