法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』ダマしてゴメンね♡SP

南米ブラジルからは視聴者ドッキリ番組。とにかく一般人を右往左往させる古典的なドッキリがつづく。ただ一般の通行人を対象にしつつ意味もなく群衆で賞賛するドッキリはシンプルでいてフラッシュモブっぽさもある。
もう日本ではすたれるかと思いきや、芸人を対象にモニターと称する番組がレギュラーになっていたりする。もちろんこの番組そのものがオープニングの北野武をはじめゲストへのドッキリを伝統的につづけているわけだが。


同じく南米はチリから、人気司会者が犯罪者を撃退する番組を紹介。今回は首都サンティアゴの高層ビル、コスタネラの周辺にたむろするぼったくりタクシーを調査する。
まずは変装してタクシー運転手を経験してから、ぼったくりタクシーにおとりの客を乗せて相場との乖離を確認。偽運転手が親しげにしゃべりつづけていたが、終盤でオーディオの音量スイッチと連動してメーターが上がるしくみになっていたことが判明する。司会者が乗っている正規のタクシーの存在が気づかれてぼったくりタクシー集団に追われて、映画のようなカーチェイスがはじまったりも。
さらに自動車の表面にフィルムをはることで色を変え、タクシーに偽装する田舎の工場にも潜入。すでに番組内に同型の偽タクシー車が多数映っていたが、そのように産業化するほどだとは……


最後は大企業のオーナーが変装して自社の末端に潜入し、さまざまな現場の課題や社員の奮闘をすくいあげる、恒例の番組。今回はスポーツ観戦を楽しめるレストラン「Walk-On's(ウォークオンズ)」が舞台。
善良で誠実に奮闘する人々にオーナーが心打たれてボーナス等を奮発するパターンだが、そもそも職場体験と称してカメラが堂々と入っているし、給料や人事など組織的に変化を決定する結末も見たことがない。
あくまで水戸黄門漫遊記のようなリアリティ番組とわりきって視聴し、さまざまな仕事の裏側と人間模様を楽しむべきなのだろう。

『デリシャスパーティ♡プリキュア』第9話 かみ合わないふたり?ここねとらんの合わせ味噌!

新しいSNSアイコンについて、華満はラーメンにしようと決めているが、芙羽はパンダにしたほうがフォロワーが増えると意見する。後日、タコ焼きパーティーで距離をちぢめようとするプリキュアローズマリーだが、今度は華満がつくった変わり種のタコ焼きに芙羽が驚き、甘いものは食事の最後にするべきだと意見する。そして和実は祖母の合わせ味噌を思い出していた……


演出の河原龍太は東映では初めて見る名前。検索するとサンライズの制作進行出身だが、演出家としてはさまざまな制作会社でのスポット的な参加でキャリアを積んでいて、よくわからないところがある。

過去のコンテ演出回は何度も見たことがあるが、ソツやクセがなかったのか、良くも悪くも名前が印象に残っていなかった。
とりあえず今回は、落ちついて淡々と主張する芙羽と、コミカルに表情を変えて主張する華満を同じフレームに入れて、それぞれの印象をきわだたせるカットをうまく多用していた。しっかり枚数をつかって複雑な芝居をさせた作画そのものに見ごたえあることに加えて、動きのコントラストで実質以上によく見える。プリキュアに変身する後半まで背景にいる和実の、シンプルにデフォルメされた作画もかわいらしい。


物語は、オーソドックスに道徳的な内容。距離をちぢめようと無理に発言をひっこめる態度をやめて、たがいの違いを尊重するようになることを肯定する。一昔前の子供向け番組ならそのまま成功したような、たがいに我慢して相手にあわせることを作中アニメなどから学んだふたりが、それでも失敗したからこそ結論は普通でも経験を踏まえた厚み、説得力がある。
さすがに和実家の混ぜる味が違うほど良くなる合わせ味噌のたとえは無理があると思ったし、せめて華満にダブルスープの手法などで共感させて納得する説得力を増す手続きは入れてほしかったが、そういうところもふくめてぐっと対象年齢を下げたEテレ的な教育番組らしさがあった。

『ドラえもん』母の日はおおせのママに/ノゾミルじゅう

 前後とも現キャラクターデザインの丸山宏一が単独で作画監督。前半の序盤など、キャラクターの全身がフレームにおさまりながら複雑な芝居を地味に破綻なく描いたカットの多さがすごい。


「母の日はおおせのママに」は、何でもいいという母の願いの難しさをスネ夫が指摘して、のび太たちは迷う。部屋においてあったスカーフをドラえもんのものと思って贈ることにするが……
 内海照子脚本で、アニメオリジナル秘密道具「かぐやスカーフ」が登場して、着けた人の望みを過剰に必ずかなえようとするスラップスティックコメディが展開される。
 さらに窓の外をウサギらしい謎の影が出没し、試供品と思われたスカーフは押し売りによるものだったと判明し、タイムリミットサスペンスで不穏感が増していく。
 しかし母の日にそぐわない雰囲気になりかけたところで、野比玉子が感謝に感謝を返して感動的な雰囲気に。さらに出没していたウサギは商号を勝手に詐欺につかわれた未来デパートの対策課と判明。
 原作の「未来からの買いもの」を思わせる逆転劇だがひとひねりしているし、竹取物語のモチーフという一貫性もあって悪くない。


「ノゾミルじゅう」は、のび太たちが捨て犬を見つけ、みんなで土管のなかで飼うことに。しかしのび太だけ餌を用意できず困っていたところ、家にきた車のセールスマンも売れずに困っていた……
 原作者の没後にカラー作品集に収録された短編をアニメ化。原作で似たようなパターンの秘密道具や物語が複数あるので、あまり新鮮味を感じない。
 アニメオリジナルのセールスマンも、まさに似たパターンの原作「ほしい人探知機」*1をそのまま引いた印象で工夫がない。それに前半に押し売りを登場させながら、後半のセールスマンに同情させようとする構成があまりうまくない。
 ただアニメオリジナル描写で、まず公園で何かをさがしている警官を先に出して犬をほしがっている人物と印象づけ、犯罪者が登場する伏線にしたアレンジはうまかった。そのほしがっていた犬は警察犬のことだったというツイストもいい。
 また、ドラえもんが買ったチョコ餡のどら焼きをのび太が犬に食べさせようとして、ドラえもんが止めた時に犬にはチョコレートが毒だと説明したことも感心した。犬や猫になんでも食べさせる描写への疑問をつぶして引っかかりがなくなるし、子供の視聴者向けの教育的効果もあるだろう。
 さまざまな人の隠している望みも、最初の公園は見た目の印象にそったステロタイプなものばかりだが、街中の群衆ではコワモテの男がショートケーキをほしがってたり普通の若い女性がオートバイをほしがっていたり意外性を出そうとしていたことも良かった。

弁護士の高橋雄一郎氏が呉座勇一氏を擁護しようとして、まともに文章を読めなくなっていた

ツイッターの「いいね」に一定の責任を求めるid:hokusyu氏に対して、高橋氏は異なる話題の過去の文章を引いて内心を憶測していた。


呉座先生はラムザイヤー論文紹介ツイにいいねをつけた。北守はこれのみを根拠に「呉座勇一が歴史修正主義に共感的だった」と断じる論稿を発表した。この内容はオープンレターにも取り込まれ、いま訴訟の対象になっている。「いいねを慎重に使う義務」は北守の最後の砦。
web.archive.org

引用リツイートを見ると漫画原作者の喜多野土竜氏など、高橋氏への同調が目立つ。


ジオン兵「イイネなんてブックマーク代わりです。エロ嫌いな人にはそれがわからんのですよ」


池江璃花子選手を個人攻撃しまくった北守が何をいってるんだって感じだなあ。
自分の人権侵害は綺麗な人権侵害かよ。


しかし高橋氏のツイートは4月13日におこなわれている。はてなブックマークで指摘されたように、4月7日の時点で呉座氏自身が批判された過去ツイートを公表し、反駁していた。
[B! SNS] 高橋雄一郎 on Twitter: "呉座先生はラムザイヤー論文紹介ツイにいいねをつけた。北守はこれのみを根拠に「呉座勇一が歴史修正主義に共感的だった」と断じる論稿を発表した。この内容はオープンレターにも取り込まれ、いま訴訟の対象になっている。「いいねを慎重に使う義務… https://t.co/BZGbF73V2L"

id:yas-mal 本人の書き込みでも「歴史修正主義に共感的」な発言をしていますね。/ありがとう、まとめてくれた日本歴史学協会(&それを公表した呉座先生)。 https://ygoza.hatenablog.com/entry/2022/04/07/102424

具体的にはリストにされた「従軍慰安婦問題について」という項目で、歴史学会の声明に対して「性奴隷制度」という位置づけを根拠なく拒絶するツイートをおこなったり、いわゆる「鍵RT」*1で同様の意見をひろめたりしていた。
ツイッターの機能がどのように判断されるかは司法でわかれており、いまのところ「いいね」はブックマーク目的という可能性が認められたが、リツイートは名誉棄損になりうるという判決も存在する。
そのリツイート、名誉毀損かも 安易な情報発信に警鐘:朝日新聞デジタル

阪高裁判決はコメントを付けないリツイートについて、「元ツイートの表現が他人の社会的評価を低下させるものだと判断される場合、経緯、意図、目的、動機などを問わず不法行為責任を負う」と判断。その上で、投稿者には「投稿に含まれる表現が他人の品性や名声などを低下させないか、相応の慎重さが必要だ」と述べ、岩上氏に33万円の支払いを命じた一審・大阪地裁判決を支持し、岩上氏の控訴を棄却した。

さらに5月6日になって、反訴したと報告する呉座氏のエントリでは六つの「いいね」の他、リスト以外にひとつのツイートも「歴史修正主義」と評価する根拠として提示されたと説明して、反駁していた。
反訴の提起について - 呉座勇一のブログ

原告らは、歴史修正主義についての記載は、3件の投稿と6件の「いいね」を前提とした論評であり、投稿・「いいね」が真実であるから問題ないと主張しています。

また、これら投稿・「いいね」は全体の文脈の中で捉えると、いずれも歴史修正主義に同調するものではないことが分かります。

呉座氏は全体の文脈を提示していないので、その主張の根拠がわからない。しかしどちらにしても、hokusyu氏が呉座氏を論評する根拠は「いいね」だけではないのだ。


そもそも高橋氏が根拠にしたhokusyu氏の文章だが、提示されている記事を実際に読んでみると、高橋氏が単純な誤読をしてしまっていたことがわかる。

 呉座勇一の歴史修正主義ツイートは、主に日本軍「慰安婦」問題に関するものだった。「慰安婦」の性奴隷制を否定するものや、直近では、国内外の研究者によって学術的な欠陥が指摘されているマーク・ラムザイヤーの「慰安婦」は性奴隷ではなく商行為だったとする論文を支持するツイート複数にいいねをつけていたことがわかっている。

「Xや、Y」という文章を読んで、XとYが同じものとしか解釈できない高橋氏は、はたして弁護士をやっていけるのだろうか*2
たしかに「性奴隷制を否定するもの」と「性奴隷ではなく商行為だったとする論文を支持するツイート複数にいいねをつけていた」は印象としては重なる。しかし、わざわざ読点をはさんで「直近では」と時系列も明記しているのに誤読したなら、さすがに書き手ではなく読み手に責任があるだろう。
hokusyu氏が「いいね」の責任を重視する因果について推論を誤った高橋氏は、陰謀論に片足をつっこんでしまっている。呉座氏を擁護したい心理が先入観となって誤読をまねいたのか、それとも誤読によって先入観を強固にしてしまったのかはわからないが。


最後に、私は上記で指摘された他にひとつ、従軍慰安婦問題にまつわる呉座氏のツイートを知っている。それは元朝日記者の植村隆氏が「捏造」という評価に反論したことへの、否定的な論評だった。
植村隆記者による従軍慰安婦報道は、表現の慎重さにおいて頭ひとつ抜けていた - 法華狼の日記

日本中世史研究家の呉座勇一氏*3も、植村氏が先行研究を引いたことに上層部の意図をかんぐっていた。

先行研究から通説を引いた時、その誤りを専門家が見ぬけなければ批判されることがあるかもしれない。それでも、通説を引いたこと自体に特別な指示を見いだすのは、ただの陰謀論でしかあるまい。

はてなダイアリーというサービスからはてなブログへ強制的に移転されたこともあり、埋め込んだツイートは現在のエントリから消えているが、呉座氏は下記のように発言していた。

植村氏の反論は立場上「他紙も書いていたのになんで俺だけ」と言わざるを得ないから分かりにくいのであって、「上の指示で書いたのになんで俺だけ」というホンネに翻訳すると、とても明快になる。

攻撃的な報道により教授職の内定をとりけされ、さらに脅迫などもあって非常勤講師の立場も失わされた植村氏に、当時の呉座氏は陰謀論をもって攻撃に同調していたのだ。
誹謗中傷をおこなった責任があるとはいえ多くの批判にさらされ、弱い立場で勤務先と争っている現在の呉座氏を考えると皮肉だが、だからこそ今さら指摘したくない気分もあった。今回のエントリでとりあげた出来事がなければ、ほりおこすことはなかっただろう。
ただせめて、呉座氏が起こしている複数の裁判でどちらにどれだけ正しさが認められるかとは違う問題として、今の呉座氏が植村氏をおもんばかることができるように願っている。

*1:鍵をかけたアカウントの発言が、第三者によって公開されることもある慣例を、ここで呉座氏自身がおこなっていたことが興味深い。一応、「鍵RT」では発言者が誰なのかは秘匿する慣例があるようだが、それはそれで「いいね」はもちろん一般の「リツイート」よりも拡散者の責任が重くなるのではないだろうか。

*2:他の可能性としては、「「慰安婦」の性奴隷制を否定するもの」と「国内外の研究者によって学術的な欠陥が指摘されているマーク・ラムザイヤーの「慰安婦」は性奴隷ではなく商行為だったとする論文を支持するツイート複数」の両方に「いいね」をつけたという解釈もできなくはない。しかし高橋氏は「ラムザイヤー論文紹介ツイにいいねをつけた」「これのみ」と、「いいね」の対象を限定して解釈している。

『テイルズ オブ エターニア THE ANIMATION』

2001年にWOWWOWで放送された、ファンタジーゲーム原作のTVアニメ。うえだしげる監督、川崎ヒロユキシリーズ構成。

良くも悪くも今は亡き制作会社ジーベックらしい、フェティッシュな性的シーンや原色ギトギトの彩色に満ちたファンタジー。作画がどんどんヘロヘロになっていくのもいつものパターン。いのまたむつみデザインのおかげか、ちゃんと水着などが文明レベルにあった縫製技術で作られているっぽいのは良かったが。


物語については、1クールとはいわないが、半クールくらいを飛ばして旅の途中から始まるシリーズ構成が謎。それゆえ旅の始まりは夢で見た回想ですまされる。それでいて3話から小さな諸島の王国に何話も泊まって、水泳勝負や温泉や酒屋のバイトなど萌えアニメっぽいエピソードが連続するのも謎。
……などと思っていたら、その小さな諸島が主人公チームの目的であるふたつの世界の衝突が歴史的に残された場所であることが判明。ロードムービーのように思わせて、予定外にたちよった場所こそが本筋の象徴的な舞台だった、という構成は意外性があって良かった。
本筋の黒幕っぽい存在も、主人公チームがロードムービー展開にもどるように思わせて、その真相でひっくりかえす。陰謀がそれなりにそれっぽくおこなわれていて、最終回まで見れば納得感はそこそこあった。大筋の話は結局アニメでは終わっておらず、大長編から1エピソードを抜き出したという感じは変わらなかったが。