法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

「世界史の稲田先生」は自身の授業では、きちんとナチス体制の「相互に矛盾するご都合主義」などを教えていたとのこと

「世界史の稲田先生」は、ナチス政策を肯定する高校生の小論文を「思想はともかく、事実は問題なく、高校生のレベルではない」と評した人物として登場する。
hokke-ookami.hatenablog.com
私にしても「少し情けないのでは」という感想を上記エントリで書いたが、おそらく本人の知らないところで不評を買って、一部でネットミームのように流通している。
匿名掲示板のスレッドタイトルでも、「世界史の稲田先生に非難殺到」と表記されていたりもしている。小論文についてツイートした田島圭祐氏本人は無視されているのに。
asahi.5ch.net


この「稲田先生」だが、同じ苗字で世界史関係の講師は複数いるが、田島氏が相談する同僚という立場から稲田真乗氏と思われる。僧侶でもあるようだ。
www.inadagobo.org
田島氏の過去ツイートにも信頼されている同僚として登場する。


その稲田氏が実際はどのようにナチスドイツをとらえているかについて、同僚の田中一平氏から誤解されないよう願うツイートがあった。

また、授業資料をアップロードして、稲田氏がナチス体制を肯定するはずがないと指摘するツイートもあった。

発端のツイートを消した後の田島氏の補足では、「世界史の稲田先生」が評価したのは、あくまで教科書レベルの事実関係とのこと。

「高校生のレベルではない」という評価は謎だが*1、小論文に論証の不備がないことや有用性や合理性の基準といった根幹まで太鼓判を押したわけではなさそうだ。

*1:そもそも田島氏の表現に誇張や歪曲がふくまれていないと信用することは、正直にいって難しい。

ナチスの政策を肯定した高校生の小論文は、「虐殺の有用性」を主張する内容だったという

予備校講師の田島圭祐氏による下記ツイートが注目を集めていた。

つづくツイートもふくめて伝聞からの印象にすぎないが、とりあえず「世界史の稲田先生」が少し情けないのでは、という感想をもった*1
togetter.com
ツイートへの反応を見ると、そのような小論文を書いたことを今の本人は恥じているかもしれないという推測も散見される。
しかし後日の補足ツイートによると、当事者の承諾はえており、数年前にもブログで書いた逸話だという。


とりあえずブログを読めば違う印象になるかもしれないと考え、田島氏の名前でブログをさがし、それらしいエントリを見つけた。
waseyobitajima.blog.fc2.com

慶応志望の女子が「統治」に関するテーマで、ナチスの政策がいかにすばらしいかということを超論理的に書いて提出してきた。


内容はおよそ高校生が書くものではなかった。


つまり、文体や論理性がずばぬけているのだ。


しかし、「虐殺の有用性」は明らかに倫理に反する。
この答案の採点には困った。


要するに答案としては「満点」なのだが、思想的な側面で無条件で「不合格」にされる可能性があると思ったからだ。

どちらがとはいわないが、予想以上に中学二年生かと思った。いや、中学三年生か*2
たとえ倫理を無視したとしても*3、収容や侵略や殺戮による収奪でいつまでも経済を動かせるわけもないだろうに。

生徒「ヒトラーは合理主義者で近代の中枢的な思想先取りしているんですよ。」


田島「ごめん、ヒトラーに関しては高校の世界史レベルでしか勉強したことないんだ。」

どちらがとはいわないが、せめて「世界史の稲田先生」から学んでおくべきだったのでは、と小学生並みの感想をおぼえた。

*1:たとえば紹介したTogetterでも言及されているアウトバーンは、厳密にはナチスが政権をとる以前から計画が進められていた。「ドイツの高速自動車道路。1925年ごろから各地で建設企画を開始,1932年ケルン〜ボン間にヨーロッパ初のアウトバーンが開通した。」 kotobank.jp

*2:dic.nicovideo.jp

*3:「虐殺」など、それ自体が国家の運営において失点にしかなりえまい。一部を優遇して生まれる「有用性」は、不遇な一部を無視しないと成立しない詐術でしかない。

『世界まる見え!テレビ特捜部』爆笑&衝撃映像 ほぼ400連発!? 世界一笑えるおマヌケさんが決定!

番組改編期でもないのに、雑多な投稿映像を集めただけの2時間SP。テーマに筋がとおってないし、どこかで見た映像ばかりならぶ。
スタジオゲストも登場せず、アナウンサーとビートたけし所ジョージの三人だけ。映像の内容にふれたコメントもなく、別撮りしたかのよう。
既存のドキュメンタリーをダイジェスト紹介する番組の特性上、これほど画面が苦しくなることがあるとは思わなかった。


代わりに売りにしていたのがナレーションをつとめる声優。
切りかえごとに顔出しで代表作とともに紹介され、公式サイトバックナンバーでもゲスト表記欄に「ゲスト声優」がならぶ。
www.ntv.co.jp

ゲスト声優:内田真礼 梶裕貴 佐倉綾音 島﨑信長 下野紘

ただこれも若手の人気声優を雑多に集めただけ。上記では下野紘がちょっと笑いとして良かったかな、と思ったくらい。
もっと台本をつくりこむか、アドリブが得意な声優を集めてほしかった。


この番組の手軽い安さは嫌いではないのだが、さすがに今回は限度があると感じた。

ミャンマーのインターネット遮断が終わったニュースで軍事クーデターを賞賛するのはもう遅い

民族紛争がつづくミャンマー西部のふたつの州で、アウンサンスーチー政権がインターネットを遮断してから約二年半*1
www.hrw.org
2月1日の軍事クーデターで前政権がたおされた後、ふたつの州でインターネットが復旧したという。2月4日にAFP通信がつたえていた。
www.afpbb.com
この記事が2月5日に時事ドットコムに掲載され、2月6日になって匿名掲示板「5ちゃんねる」の「ニュース速報+」等に転載され、拡散されつつある。
【ミャンマー】軍部クーデターの原因はスー・チー国家顧問による「長期インターネット遮断」が原因か [和三盆★]

1和三盆 ★2021/02/06(土) 03:10:31.76ID:adUpf2Sr9
ヤンゴンAFP=時事】インターネットの遮断期間が世界最長となっていたミャンマー西部のラカイン州とチン州で、19か月ぶりにアクセスが復活した。ノルウェー通信大手テレノール・グループが3日、国軍によるクーデター発生を受けてサービスを完全復旧したと発表した。

民族紛争が続く両州の8郡区では、アウン・サン・スー・チー国家顧問率いる文民政権の「緊急」命令により、2019年6月からインターネットが遮断され、100万人以上の住民が影響を受けていた。

 「テレノール・グループとテレノール・ミャンマーは、これまでサービス復旧へ向けて提言を繰り返し、通信サービスへのアクセスを通じた表現の自由は人道目的として維持されるべきだと強調してきた」と同社は説明した。
 ラカイン州では、仏教徒少数民族ラカイン人の自治権拡大を求める武装組織「アラカン軍」と国軍が激しく衝突し、これまでに死者・負傷者は数百人に上っている。戦闘は隣接するチン州にも飛び火し、キリスト教徒が多数を占めるチン人は数千人が村を追われて仮設キャンプに避難している。
 また、ラカイン州ではイスラム少数民族ロヒンギャを政府が武力弾圧し、約74万人が隣国バングラデシュに避難。国連が「ジェノサイド(集団殺害)」の恐れを指摘している。
https://www.jiji.com/sp/article?k=20210205041138a&g=afp

記事の全文が転載されており、とりあえず捏造や歪曲は見られない。スレッドを見ていくと、インターネットを復旧させたクーデターに好意的な意見がつづく。
拡散しているまとめブログを見ると、あたかもミャンマー国民すべてがインターネットを復旧させたクーデターを歓迎しているかのような論調になっていた。
しかしクーデターを起こした国軍がインターネットの復旧を推進しているという情報は見あたらない。


事実として、軍事クーデターへの反発が広がったことで、ミャンマーのインターネット遮断は全土に広がったという。
2月4日のAFP通信記事によると、3日にはFacebookへのアクセスが難しくなっていたらしく、反クーデターはツイッターハッシュタグで表明されていた。通信の秘匿性を高めるVPNサービスも活用された。
www.afpbb.com
さらに2月6日のAFP通信によると、5日になってインターネット全般の接続が遮断されていき、VPNサービスをつかったアクセスも難しくなったようだ。
www.afpbb.com

 ミャンマーで通信サービスを提供する主要企業の一つ、ノルウェーのテレノール・グループ(Telenor Group)は、当局から5日、ツイッターフェイスブック傘下のインスタグラム(Instagram)を「当面の間」遮断するよう命じられたことを認めた。

 AFPが入手したミャンマー運輸・通信省のものとされる書類では、ツイッターとインスタグラムが「国民の間で誤解を生む」ために使われたと指摘している。書類の真偽は確認が取れていない。

 ネット接続状況を監視するネットブロックス(Netblocks)によると、インスタグラム以外にもワッツアップ(WhatsApp)などのフェイスブック傘下サービスにも通信障害が出ている。

つまり日本で軍事クーデターが賞賛されている2月6日より前から、すでに前政権よりも接続状況が急速に悪化していたわけだ。


状況がひどすぎる時、どのような方向であっても変化があれば、わずかな改善を期待してしまうことがある。実際に結果的に状況が好転することもあるだろう。
しかし状況がより悪化しない保証はどこにもない。わずかな望みをかけてしまう当事者がいることは、第三者が変化を安易に肯定する理由にはならない。

*1:それ以前にインターネット全体の監視をアウンサンスーチー政権が強化して、軍事政権時代よりも摘発が増加した問題は2017年から報じられている。 www.afpbb.com

『ドラえもん』山おく村の怪事件/争奪戦回避銃

「山おく村の怪事件」は、両親の結婚記念日に何を贈ろうかとのび太が頭を悩まし、父は日曜だから休もうとしているが、工事の騒音で邪魔されていた。そこにドラミちゃんが登場して……
2009年にアニメ化*1した原作を、前半のみの短編としてリメイク。ややギャグを増やしつつも原作どおりの清水東脚本に、今井一暁コンテ。
何よりも中本和樹の単独作画監督による一人原画が特色。全体的に良好な作画で、いつもと違うシチュエーションをそつなく映像化していた。
もどった街中でちゃんと冒頭の工事音がして、ジャイアンスネ夫に声が聞こえず、行き倒れの物真似と判断して去っていくアニメオリジナル描写が良かった。
2009年版では弱められた怪奇色も出ている。ただ、せっかくなら雪だるまが動く場面まで真相を隠して、街中で救出された謎めいたニュースからさかのぼるように真相を見せていくアレンジをしてもおもしろいかも。
しかし、無人だからと他人の家をつかうシチュエーションは、廃墟ブームがつづいている今だからこそ逆に現実の問題と関連づけられそうな危険も感じた。今後にアニメ化するときは、のび太たちが入る家は誰でも自由に使えるよう告知された集会所などの設定が追加されるかも。


「争奪戦回避銃」は、演劇の主役や給食のプリンや理科の顕微鏡をジャイアンが独占し、のび太は不満をもらす。おまけにドラえもんのび太のどら焼きを食べかけていて……
これまで演出をつづけていた岩岡夢子の初コンテ演出回にして、今年初のアニメオリジナルストーリー。アニメアール原画回でもある。オリジナル秘密道具は平等に分割するかわりに性質も薄まるという、おすそわけガムを思い出させる設定*2
どら焼きを食べかけて抗議された後、秘密道具の機能説明で事実上どら焼きを半分食べて再び抗議されるドラえもんの意地汚さがかわいい。
そして漫画こそ面白味のなさに三方一両損で捨てられたが、途中からジャイアンは機能がおちた分割品すべてを独占。さらにジャイアン自身が事故で小さく分裂して、予想外の方向に転がっていく。
小さい3人になっても、協力して非道をはたらいたり、たがいに争ったりするジャイアン。そして巌流島の決闘劇で、武蔵と小次郎とお通をすべて演じる。まさか冒頭の全部主役がシュールなオチの情景につながるとは思わなかった。

*1:hokke-ookami.hatenablog.com

*2:あくまでスネ夫が感想で語るだけの、あまり活用されない設定だが。 hokke-ookami.hatenablog.com