法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』謎と驚きの3時間! 秋の夜長にミステリークイズSP

今回のクイズでは、序盤に難問だからと100万円の賞金が出て、犬が命を救った真相は癌の探知と早々に気づきながら答えを変えるような、謎の難しさをめぐる出題者と回答者の駆け引きが面白かった。


「世界の欠陥建造物」
は、ロンドンの南向きに凹面型をした高層ビルで、窓ガラスに反射した日光が集中してしまう事例などを紹介。
高層ビルの反射光で車が溶ける、開発業者が調査開始 ロンドン 写真9枚 国際ニュース:AFPBB News
上記の記事では「今はこの状態が毎日約2時間続いているが、当初の試算通りであれば2~3週間で収まる」というビル側の釈明が報じられているが、さすがに全窓にブラインドをつけて反射を抑えるようにしたという。とはいえ奇抜なデザインそのものも不評で、2015年には英国で最も醜い建物に選出されたそうだ。
CNN.co.jp : 英国の「最も醜い建物」、今年はマンチェスター郊外の娯楽ビルに
上述の記事のはてなブックマークにも指摘がある、ラスベガスのヴィダラホテルという似た形状のビルも紹介。こちらはプール利用客のためパラソルを無数に立てたが、利用者はいなくなったようだ。
クイズが出題されたのは、ドイツで完成しながら運用が中止されているブランデンブルク国際空港。原因は排煙機構を天井ではなく床面に設置したため、火災への対処が疑問視されているためだという。あまりに予想外で誰も正解できなかったが、そもそも設計図の段階で指摘されるべきことでは、と思うのだが……


「髪の長い女性たちが暮らす村」は、中国南部の紅ヤオ族と黒ミャオ族が時代にあわせて変化をせまられる姿を紹介。
髪を長くのばしつづける紅ヤオ族は、観光地化することで生き残りをはかる。髪をとかすだけの動作で観光客を喜ばせるが、若者は無関係なダンスを踊ったりして、世代間のあつれきが生まれたり。伝統を偽ったシャンプーを若者が売り、それを批判する高齢者は伝統と無関係な土産物を売る。
一般人の銃所持が禁じられている中国で、黒ミャオ族は伝統的な火縄銃をもつことが許されている。しかし実際の狩猟は許されず、こちらも観光客向けのショーで稼いでいる。全体主義的かつ資本主義的な現代中国の、弾圧まではされていないらしい少数民族の風景として興味深くて、やはり多くの問題を感じざるをえなかった。


「キャットフィッシュ」は、恒例のインターネット恋愛で相手の正体をあばくリアリティー番組。
今回は恋愛脳の母を心配して、息子が依頼。母子家庭で、母が次々に恋人をつくっては別れることを息子は苦しんでいる。そんな母親はインターネットの恋人を信頼しきっているが、実は自分がプロフィールを偽っていた。
そしてクイズでスタジオの回答者が推測したとおり、インターネットごしの恋人は、かつて母親がつきあった恋人のひとりだった。たがいにプロフィールを偽っていたため、ケンカ別れした相手だとは気づかなかったという。プロフィールを偽っても友人関係からSNS側が紐付けたのだろうという番組の推測が興味深い。
なお、対面して真実を知った時は再びケンカ別れしたが、後日に再びつきあうようになったという逸話がなんともいえない。


「エジプトの神殿を救え!」は、1960年代にアスワンハイダムの建設で水没することになった遺跡を保存する活動のドキュメンタリー。
有名なアブ・シンベル神殿が移築されたものとは知らなかった。もちろん遺跡を保存するためにさまざまな案が提示されたことも、この保存活動が世界遺産につながったことも。
水没させた遺跡に水中エレベーターで見に行くという砂岩のもろさを無視した無茶な案や、ジャッキで遺跡全体をもちあげるという重量的に不可能な案、フロートで水面に浮かべて上昇させるバランスの難しい案など。防護壁で水の侵入を防ぐ案はないかと思ったが、そちらは貯水中の遺跡移動の時間稼ぎとして使われていた。
しかし遺跡を分割して移動するのも、当時の切断技術では機械が使えず、職人の手作業による切削というのが予想外。ドキュメンタリーではなく、VFXを多用して劇映画化しても面白そうな情景だった。


他に、1992年に米国で行方不明になり、メキシコで死体となって発見されたフィリップ・ペリーという男の事件を紹介。
敬虔なクリスチャンだったフィリップだが浮気相手がいて、しかし事件の夜に呼び出した人物とは似ても似つかない。しかし9年後に再捜査すると浮気相手の夫の姉が呼び出した人物と似ている。さらにフィリップの署名があるタイプライターの手紙の切手から、唾液のDNAが検出され、浮気相手の夫と確定。
人間関係がいりみだれていて、アリバイ工作などもおこなわた派手な事件だが、しかし謎解きとしては共犯者が多すぎて犯人の意外性もない。

『スター☆トゥインクルプリキュア』第33話 フワの決意!お手伝い大作戦☆

小さなユニコーンのような姿にフワが成長した。自由に動けて話せるようになったフワは、さっそくトゥインクルイマジネーションを探そうと星奈たちに呼びかけるが……


プリキュアシリーズの妖精としては自己主張の少なかったフワが、いざ成長すると手のかかるおせっかいな存在に……育児のアナロジーとして視聴している親に共感されやすい描写かもしれないし、幼い視聴者からすれば妹や弟をかわいがる気分で楽しめるのかもしれないが、大きなお友達からするとストレスを感じてしまう。かつてそのような言動をとっていた過去を思い返すことはできるが、それによっておぼえる共感は、懐かしさというより羞恥心と気まずさだ……
単純に迷惑をかけるだけの行動ではなく、少女たちの日常と、プリキュアという超常の活動が衝突するのも、娯楽活劇の根底をゆるがすようにストレスをためる。今回だけで解消できる問題ではないので、解決の爽快感もない。実際、天宮と香久矢の年長組は、夏期休暇中から活動の継続が難しいという伏線がはられていて、次回以降へ引いていく。
巨大な角を印象づけるように何度も地面に突き刺してしまうギャグや、長い夏期休暇のフォローを入れるように学園生活に再びスポットライトを当てたりと、連続ストーリーとしてやるべきことをやった回だとは思う。しかし解消できない課題を描くなら、いっそのこと鬱屈したドラマにふりきっても良かったかな。敵幹部にフワの問題をしっかり指摘させたりして。

『小説 魔法つかいプリキュア! いま、時間旅行って言いました!?』村山功著

魔法学校の創立祭の準備をしていた主人公カップルのところに、敵幹部オルーバが襲来。それぞれ家族と葛藤していた主人公たちは、過去に戻って同世代の親の視点を知る……


ドラえもん』の「プロポーズ作戦」*1を思わせる、2017年10月出版の児童小説。2016年2月から2017年1月にかけて放映されたTVアニメを、シリーズ構成がノベライズした。

他のシリーズノベライズは、放映終了から数年たって成長した読者に向けているためか、やや高年齢向けな印象がある。
しかし終了から半年のこの小説は、あまりアニメ本編と雰囲気が変わらず、語り口も内容も低年齢向けな印象だ。


内容も後日談ではない。後半に登場してさまざまな作戦を展開した敵幹部の、作品の主題をほりさげつつも本筋を動かさないくらいの作戦のひとつを描いている。良くも悪くも本編でそのまま映像化されたとしても違和感が無さそう。
それでいて主人公カップルのドラマこそが最重要*2だったアニメ本編と異なり、あとがきで著者が語っているように描ききれなかった家族の物語を補完する内容となっている。放映終了後に出す意味は感じられた。
親子関係だけでなく、序盤で描かれた創立祭の光景が過去に飛んだ主人公たちによって作られていく展開や、主人公たちが正しい時間に戻そうとして失敗していくくだりもタイムスリップSFのポイントを押さえている。それでいて、決意によって主人公の今後の行動がかたまり、時間が本来の流れに戻っていくことが確定していくところに、プリキュアらしさもあった。
物語の展開上、主人公ふたりの仲を見せる局面は少ないが、息をぴったりあわせて魔法をつかう場面は印象的だ。時間を変えるポイントとなる料理で、食材のひとつが「愛を示さなければ」*3美味しいハート型にならないという設定があるのだ。


ただ残念ながら、あまり小説としては感心できなかった。
幼い登場人物がパートごとに一人称を分担するのはいいとして、プリキュアならではの戦闘シーンはひたすら技の名称をならべるばかりで、動作も脚本家らしく説明的。
ただ日常バートはそつなく書かれていたとも思うし、公園で落ち葉に寝そべる象の影などは印象的だった。良くも悪くもOVAで見たかったな、という印象を覆すほどではないが……

*1:『ドラえもん』クモノイトン/プロポーズ作戦 - 法華狼の日記

*2:主人公カップルをしっかり別離させてから大人になって再会させた終盤が、敵を倒すことがクライマックスではない作品の個性を象徴している。『魔法つかいプリキュア!』第49話 さよなら…魔法つかい!奇跡の魔法よ、もう一度! - 法華狼の日記

*3:123頁。

五輪担当および女性活躍大臣として初入閣した橋本聖子氏は、体罰肯定を公言するような政治家

三原じゅん子氏との対立構図をつくる『女性自身』の記事で、ソチ五輪でのセクハラ等とあわせて指摘されていた。
jisin.jp

《子どものお尻や頭、ほっぺたも叩きますし、泣き止むまで怒り続けたり、直立不動にさせて怒ったり。善悪を教えるには、「ヤキを入れるしかない」》(『読売ウイークリー』’07年4月15日)

思えば2013年にも、女子柔道の体罰問題において、告発者15名の実名公表を求めたことがあり、さすがに多くの批判をあびた。
www.sponichi.co.jp
体罰が蔓延していた時代にスポーツ選手として活躍し、その成功体験を修正しないまま政治家になった問題といえるだろうか。


もちろん、そもそも自民党に見られる保守思想そのものが体罰肯定と親和性がある。
女子柔道の告発者の実名公表は、自民党の調査会においても求める意見が出ていたことから、橋本氏一個人の問題ではないことが明らかだ。

5日の自民党スポーツ立国調査会の会合でも、調査がしくにい点などを理由に告発選手名の公表を求める声が出ていた。

現政権と近しい保守派の女性として知られる櫻井よし子氏が、「体罰は教育」と主張するシンポジウムで石原慎太郎氏と対談したことも記憶に新しい。

『カンナさん大成功です!』

人気歌手のライブで実際に歌っているのは、裏に隠れた肥満体のカンナだった。その外見が表で活躍する歌手に嘲笑され、感謝していたプロデューサーにも利用されていただけと知り、カンナは自殺をはかる。しかし死の淵からはいあがったカンナは、全身整形して美女となり、正体を隠してプロデューサーに近づいていく……


日本の同名漫画を原作とした、2006年の韓国映画。コメディタッチな芸能ドラマとして、劇中のパフォーマンスも手を抜くことなく映像化した。

カンナさん大成功です! 特別版(2枚組) [DVD]

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やや色彩設計キッチュだが、シネマスコープを使うだけの情景を、ちゃんとセットでもロケでも成立させている。
劇中のライブパフォーマンスは実際に人気を集められそうなクオリティはある。満員の観客席も充分なエキストラを集めていて、カメラワークに空席を映さまいとする不自然さがない。
美女となってテンションが上がったカンナが起こすトラブルでも、わざわざ車がいきかう街中で追突事故させるほど手間をかける*1。免許証写真を見せる意味があるとはいえ、本筋に無関係なギャグなのに、わざわざ自動車を壊すなんて韓国映画かよ!

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……いや韓国映画ではあるけど。


物語などは、以前に原作を読んだ記憶と大きく異なっていた。実際、再読すると芸能界が舞台という設定からして映画で改変されたものだし、外見を変えて承認を求めていくカンナのキャラクターも全く違う*2
映画のメインテーマとなるのは美醜そのものではなく、女性は社会において利用される側でしかないという問題意識。整形によって美を獲得する前からカンナは歌唱力をさしださなければならなかったし、敵対する歌手も外見やダンステクニックをさしだしていた。
そうして美女も醜女も芸能のために利用するプロデューサーの、どこか善悪を超越したストイックな性格も、映画独自の面白味だ。意外なことに、女性同士の対立や自己承認のドラマだけでなく、芸能プロジェクトを成功させようとする男性のドラマとしても楽しめる。
プロデューサーは上層部に覚悟を示すため、奪ったガラスコップを叩き砕いてみせる*3。なんで韓国映画みたいな流血描写を!

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……いや韓国映画ではあるけどさ。

*1:39分59秒。

*2:ちなみに原作は、美人らしくあろうとして性悪にふるまうカンナのキャラクターが魅力であり、笑いどころだった。対する天然美人は、女性も男性も性格の良い人ばかり。どこまでも小市民的な世界で、美醜にこだわる人々の愚かしさを笑いつつ共感するような作品だった。

*3:1時間38分53秒。