法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』クモノイトン/プロポーズ作戦

今回は前後とも初期原作から。前者は2005年のリニューアル後の初アニメ化で、後者は劇中の日時と放送日が同じ。


クモノイトン」は、尻にくっつけると蜘蛛のような糸を出せる秘密道具が登場。のび太たちは蜘蛛の糸を活用して空中の楽園をつくって自由に遊ぶ……
原作者の生前は単行本未収録のカラー漫画が原作で、2005年のリニューアル以降で初のアニメ化。小学2年向けの作品なので内容は単調といっていいが、蜘蛛の生態をとおして理科的な好奇心を楽しませる作品でもある。
ほぼ原作に忠実な内容で、違いといえば結末をスネ夫単独からジャイアンのコンビに変えたくらい。もうひとつ空中の楽園のディテールが増えていたが、布のような巣をつくる蜘蛛もいるし、その発展形と思えば理解できるか。


「プロポーズ作戦」は、相手からプロポーズされたと両親ふたりとも主張して、結婚記念日なのにケンカをしてしまう。その謎を解くためタイムマシンを使うが……
2009年に中編SPとしてアニメ化。しかしアニメオリジナル要素を足すだけではなく、首をかしげるような改変が多かった。若いママの髪型を変えていないことからして残念だったし、初期原作では珍しい情感ある結末に説教を足していた。タイムパラドックスの処理も甘かったはず。
『ドラえもん』のび太のプロポーズ作戦 - 法華狼の日記
対する今回は、映像も物語も原作を忠実に引きつつ、最小限の改変で効果を高めている。劇中と現実の日時をあわせているところから原作の尊重がうかがえる。
特にパパやママを説得する場面で、のび太ドラえもんがプロポーズを演じたアレンジがいい。台詞に混ざる無意識の言葉が、原作の滑稽な台詞回しを説明しつつ、のび太ドラえもんも家族の一員ということを証明する。2017年リニューアルから参加している鈴木洋介の脚本回に、今のところ外れがない。
小西富洋も、キャラ設定だけでなく作画監督まで担当。2015年ごろから注目していたが*1、原作の柔らかいニュアンスをひろいつつ、より現代的なラインで成立させている。ショートボブのママが非常にかわいらしい。
そしてコンテはまさかの楠葉宏三。総監督をしりぞいてからも何度か参加していたが、さらに制作体制を一新してからも登板するとは。とはいえTVサイズならば演出家として信頼できるし、事実としてそつのないしあがりだった。