法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

話数単位で選ぶ、2021年TVアニメ10選

特筆したい視点があったり、埋もれそうなエピソードを掘りおこす企画のため、各作品1話ずつで順位はつけない。

ドラえもん』ジジ島の怪魚ハンター
『トロピカル~ジュ!プリキュア』第29話 甦る伝説! プリキュアおめかしアップ!
ウマ娘 プリティーダービー Season 2』第2話 譲れないから!
『オッドタクシー』第4話 田中革命
ルパン三世 PART6』第4話 ダイナーの殺し屋たち
ゾンビランドサガ リベンジ』第5話 リトルパラッポ SAGA
乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X』第8話 お見合いしてしまった…
『回復術士のやり直し』第5話 回復術士は、新しいおもちゃを見つける!
『俺だけ入れる隠しダンジョン』第6話 チューリップライオン
『SK∞ エスケーエイト』#07 PART つりあわねーんだよ

毎年のように書いているが、年々とりこぼしたタイトルが増えている上、今年は過去にとりこぼした作品群へ意識して目をとおしたため、リアルタイムの評価はますます遅れつつある。
話数単位で選ぶ、2020年TVアニメ10選 - 法華狼の日記
そこで2017年に最も票を集めた『Fate/Apocrypha』は、作品全体でもキャラクターが出そろう前にデスゲームをはじめるテンポ感などがシリーズ作品で最も良いと感じた。
「話数単位で選ぶ、2017年TVアニメ10選」の投票集計結果の雑感 - 法華狼の日記
前後も別方向にシャープな作画アニメとして完成度が高いからこそ、当該話数の作画アニメぶりもきわだっていた。作品をとおして観ることの重要性を今さらながら痛感した。

それでは以下、各話の選出理由と、選出もれしたエピソードをいくつか紹介していく。

ドラえもん』ジジ島の怪魚ハンター

小倉宏文現監督によるアニメオリジナルストーリー。タイムスリップ時代劇としての面白味があり、その時間移動が怪魚の存在を生みだしている意外といりくんだ構造が良かった。
『ドラえもん』ジジ島の怪魚ハンター - 法華狼の日記
はしばしにあるコミカルな作画と、ひどい目にあいつづけるドラえもん。キャラクターをしぼって状況を整理して、難題に向きあう試行錯誤を魅力的に描く。ゲストキャラクターのすっとぼけた性格もそれらしい。
もうひとつ選ぼうか悩んだ回として、ウーバーイーツを代表とするデリバリーサービスがもつ請負い問題を、アニメオリジナル秘密道具で風刺したエピソードがある。アバンタイトルをつける枠組み崩しも印象的。
『ドラえもん』剛田、いつ?/ぼくを、ぼくの先生に - 法華狼の日記
一年半前の水道事業風刺エピソード*1のように、アニメオリジナル秘密道具で社会の一面を再現して風刺する回は、どれも娯楽としても完成度が高いし、ひとつの設定からさまざまな展開をする原作らしさがある。いずれ中編エピソードとしてつくられれば、それを話数単位ベストテンに選ぶ日が来るかもしれない。新型コロナ禍になった2020年から、再放送が増えているのが懸念材料だが。

『トロピカル~ジュ!プリキュア』第29話 甦る伝説! プリキュアおめかしアップ!

ギャグによせた今作はつくりが不安定で、特にアクション性では低空飛行をつづけている感が強い。だからこそシリーズ全体でも突出して魅力的なエピソードが生まれた。
『トロピカル~ジュ!プリキュア』第29話 甦る伝説! プリキュアおめかしアップ! - 法華狼の日記
もうひとつ、近年はショートアニメでしか見られなかった大地丙太郎の本領が発揮された10本立てと悩んだ。
『トロピカル~ジュ!プリキュア』第33話 Viva! 10本立てDEトロピカれ! - 法華狼の日記
しかし現代的な作画アニメをやりきったエピソードの魅力は忘れがたい。カットごとにアニメーターの絵柄がけっこう出ていて、しかし演出スタイルのもとで違和感なく融合している。
学校にいる主人公のもとへ仲間が集まっていくシリアスドラマという主軸もしっかりあり、なおかつ今作らしい気の抜けたギャグが適宜はさまれたことも良かった。娯楽性をたもちつつクールダウンして、目まぐるしく動きまわるエピソードでありながら視聴者をふりおとさず、目をなれさせて勢いが落ちたと感じさせる愚もおかさない。

ウマ娘 プリティーダービー Season 2』第2話 譲れないから!

擬人化少女の競技アニメとして普通に完成されていた一期から、さらに障害と克服を描いていく物語として完成度を高めた二期。期待以上のものを見せてくれそうだと感じさせるエピソードだった。
走り抜ける寸前に、不在の主人公を意識して競う少女たち。ここで主人公を乗りこえる側の、一頭一頭のドラマとなる。挫折の感傷にひたる物語が、競いあう未来を見つづける物語へと開かれた。

『オッドタクシー』第4話 田中革命

全体もオリジナル作品として、群像劇として思惑が同時進行するサスペンスとして完成度が高く、それを擬人化動物のビジュアルでTVアニメ化した意味もきちんとあった。そのなかで本筋とは直接の関係がなさそうな、せまい社会の挫折を少年時代からかかえていく青年のエピソードを選んだ。
このエピソードは、ヤクザの拳銃を偶然に青年が入手したり、偶然から主人公のタクシー運転手をつけねらったり、実は物語全体の都合が集中している。しかしだからこそ、サブキャラクターを愚行と苦難に向きあわせた物語に一話すべてつかって、あたかも偶然が運命のような印象を生み出した。
つまり単独エピソードとして完成度が高いこと、そしてそれがシリーズ全体で完成度が落ちる部分を支えるという構造。リアリティラインの巧みな調節が、作品全体を象徴もしている。
挫折の経緯でネットオークションやソシャゲガチャが登場するあたり、TVアニメが避けがちな現代性があったことも良かった。アニメーションは通常通りだが、青年が少年時代に父親からけりとばされたカットが地味に良かった。

ルパン三世 PART6』第4話 ダイナーの殺し屋たち

押井守脚本一回目。ダイナーでのだらだらした会話と、真相のだらだらした説明。ただそれだけで緊張と弛緩のメリハリある時間が流れ、画面から目を離せなかった。『ぶらどらぶ』が作画スタイルこそ更新こそすれ、コメディアニメとして自己模倣に終始したことを思うと、時代遅れな怪盗物語という枠組みは時代についていくことをやめた今の押井監督にちょうどいいのかもしれない。
なお作品全体では、1クール目の終わりにして、ロンドン編の完結、全体像がわからない組織だからこそとっくに瓦解していて、末端は気づかず行動していたというオチは良かった。しかし手先が誰だったのかはあからさまで、すでにインターネットの感想でも多くが指摘していたように意外性がない。
オチに少年姿のモリアーティが登場したように、いっそのこと少女ワトソンが真犯人でも良かったのではないか。強大な組織に利用された存在として、名探偵の助手の身内が無邪気に行動していたという真相には嫌なサプライズが出たと思う。もちろん、ホームズ作品をふくめていくつもの前例があるが、だからこそ1クールをかけて描いた守るべき少女が真犯人というオチは強烈になるはず。押井守脚本二回目を思い出しつつ、そんなことを思った。

ゾンビランドサガ リベンジ』第5話 リトルパラッポ SAGA

無印では評判が高かったがピンとこなかったトランス少女*2の物語二本目として、幼い芸能人が切磋琢磨し競う物語として、成長と不死の物語として完成度が高かった。山岸涼子の某短編を思い出させつつ、すがすがしい。
前半では意識的に演出された逆境が、後半で主人公側が意図せず直面する、そんな皮肉な構成も面白い。

乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X』第8話 お見合いしてしまった…

物語るべきことは一期でほとんど終えており、全体がファンサービス的だった二期において、このエピソードの後半がすごかった。ほとんど動きがない草木のなかの散策を、完璧なレイアウトと撮影による色彩変化、静かなカット割りの呼吸だけで魅せきった。
メインキャラクターはほとんど出ず、無口でメインのなかでは地味な青年が、今回はじめて登場したような女性キャラと静かに語りあうだけ。しかし手入れされた草木にかこまれて貴族という枠を超えようとする会話は、内容も隠喩も主人公カタリナが見せた可能性によるものだろう。
それにしてもコンテ演出を担当した戸澤俊太郎は若手でコンテ経験もあまりなく、過去回で特に印象に残ったこともないのに、いったい何が起きたのかと驚いた。

ただ、撮影効果を利用して画面をリッチに見せる手法はシルバーリンク作品がかつて多用していた印象はある。その会社の体力と経験値が若手をはばたかせたのか?

『回復術士のやり直し』第5話 回復術士は、新しいおもちゃを見つける!

全編たっぷりのアクション作画が普通に……個性が突出した作画アニメではなく、本当に普通に……良かったので。こういうアニメーターのがんばりも記憶したい。
作品自体は、おそらく大藪春彦作品が人気があったころはこういう感じだったのかな、とか思ったりしてたら、実際にYahooニュース個人記事で比較されていた。
なろう発『回復術士のやり直し』に見る大薮春彦・西村寿行的ハードロマン・リバイバルへの懸念(飯田一史) - 個人 - Yahoo!ニュース
復讐にはしった主人公のようでいて、次は何をやろうかなと語りだす虚無ぶりが、表層に反して意外な見やすさがあった。深みのない刺激だからこそ飲みこみやすいというべきか……

『俺だけ入れる隠しダンジョン』第6話 チューリップライオン

人外の存在との時間を超えた友情を描き切ったのが期待しない方向性でよかった。いつもと同じヘロヘロ気味の作画もゾンビのB級な雰囲気をもりあげていて悪くない。
女体*3で欲望を満たすことがスキル獲得につながる主人公の能力と、その能力のため「ラッキースケベ」を意識的にスキルとして獲得するという世界観だからこそ、同性間の無私の友情がきわだつ*4
もちろん、これはこれで典型的なホモソーシャルではあるのだが。

『SK∞ エスケーエイト』#07 PART つりあわねーんだよ

林明美コンテ回。どうしても勝者と敗者が出るタイプのスポーツアニメにおいて、どれだけていねいに敗者によりそえるかという課題を、ダブル主人公のポジティブ側の惨敗をとおして鮮烈に描き出した。
もともとポジティブ主人公によってスケボーをするようになったクール主人公がひょうひょうと滑りつづけ、ますます鬱屈を深めていくポジティブ主人公。アニメらしい記号的なキャラクターデザインだからこそきわだつ対比。

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シリーズ全体をとおしても、そのポジティブ主人公に競技における逆転をさせないまま、スポーツアニメにおける存在意義を証明した。女性ファンを重視しているだろうアニメが、ジェンダーバイアスのような問題は克服されつつも競いあうマッチョイズムに堕しがちなところ、勝利の準備ではない純粋な敗北を描いた意味。
作品全体は、せっかく沖縄でスケボーを題材にするなら、廃鉱山ではなく放棄された米軍演習場などを舞台にしなかったことを残念に思っているが……


他に、いくつか印象に残ったものをならべていく。
『RE-MAIN』第8話「誰なんだよ、こいつら」この話というより、序盤の少女関係からにおわせていた主人公の傲慢さがあばかれる一連の流れが良かった。記憶喪失という古典的ギミックを、現代的なスポーツアニメと旧来のスポーツアニメを対比させるためにつかったシリーズ構成はおもしろい。ノイタミナ『バクテン!!』のように怪我をおして出場する少年を賞揚するスポーツアニメもいまだあり、スポーツアニメでなくても競うことに子供をかりたてる『ブルーピリオド』のような作品もあるなか、良いアクセントに感じられた。ただ、集団競技スポーツでこういう展開をやるなら2クールは必要だと思ったし、懸念したように勝利至上主義の部活動が人格形成をゆがめる構造そのものに向きあうにはいたらなかったが……
『戦闘員、派遣します!』第十話「キサラギ幹部、配信します!」ずっと題名に反して異世界ファンタジー的な異星を舞台とした作品で、番外編的に視点を地球へ戻し、期待していた悪の組織パロディをお色気たっぷりに映像化。ギャグのテンポはゆるめだが、幹部の人気投票でくりかえし不正がおこなわれる展開に愛知リコール不正問題など、2021年に発覚した各種の事例を思い出ざずにいられなかった。
ひぐらしのなく頃に卒』第14話「神楽し編 其の参」ループごとの世界線をまたぎながら一連の争いをひとつながりに見せる演出手法と、それで描かれるドラマが相手を惨殺しての「絶対に勉強したくないでござる!」な逃げ口上というギャップ、そこから異能バトルへの展開……そのしょうもなさが極まって爆笑しながら視聴した。ここまでやるなら見世物としての楽しさに共感せざるをえないし、劇中の観察者の笑いにも同調できた。
『NOBLESSE-ノブレス-』第5話「友の手/Fight for…」エフェクト作画監督が橋下敬史で*5、原画にもろゆき沙羅*6近藤高光など。テロップにならぶ名前が強い。
『半妖の夜叉姫』第13話「戦国おいしい法師」後半の作画が良い。パターン化された流行とは違って、面白い構図のコンテにそって、人体を普通は見ないようなポージングで動かしている。特に16分48~57秒、17分18~38秒あたりが白眉。特別なアニメーターが飛び飛びで担当しているのだろうか? 残念ながらギリギリ昨年末なのでルール上は外れるが、だからこそ話数単位ベストテンに選ばれることが難しいエピソードであり、埋もれそうな良い仕事だからこそメモ的に紹介したい。


全体として、2021年は評価しづらい作品のなかでアクセント的に印象に残ったエピソードが多く選ぶことになった。ねじれたかたちだが、『オッドタクシー』もその一環である。
そうではない『ウマ娘2期』が入っているのは、リアルタイムで視聴した時点で話数単位ベストの候補に入れていて、最後まで相対的に落ちなかったため。『半妖の夜叉姫』のように、ルールの制約によるとりこぼしも気になるからこそ、あえて残して後悔はない。

*1:『ドラえもん』水道ジュース変換アダプター/ぼくミニドラえもん - 法華狼の日記

*2:終盤でトイレが印象的な舞台になるあたりが、現実の社会の動きを思わせたところが、良くも悪くも印象に残った。スタッフは意図していないとは思うが。

*3:ちなみに直前の5話がルッキズムを前提に女性を評価するエピソードだった。

*4:そのスキルをこっそり獲得して楽しんだ後日の第10話で、温泉に入ろうとする男子を主人公ひとりが反対したり、その直前に女子たちから信頼されている描写が入ったのは、いろんな意味でどうかと思った。

*5:12、13話も。

*6:7話も。