惨劇のあった佐伯家を不動産屋が売りに出そうとする。そのため特殊な力がある妹が呼ばれるが、妹は自分では祓えないと語った。それでも不動産屋は呪いをさける方法を教えられて次の住人を入れるが……
清水崇監督によるシリーズ最初期の、Vシネマ1作目*1から直接につづく2作目。この2000年の作品から劇場版1作目へつづく。
しかし話には聞いていたが前作のおさらいが長い……今回につながる呪いの根源たる一家を説明するためとはいえ、前作最大の見どころだったエピソード「伽耶子」をまるまる収録して、そこからつづく最終エピソード「響子」も新規撮影を入れつつ収録。冒頭のダイジェストもふくめれば一時間超の三分の一が前作のつかいまわしだ。
前作と違う良さは、画質が粗いVシネマならではの表現が見られること。ブラウン管TVのスプラッター作品がVHSらしいノイズまじりになったかと思えば、それを視聴する少年の映像もノイズまじりになる。さらに幻視される殺人事件もノイズまじりの情景が実景につながったような描写で、うまく演出に昇華できていた。
直接的な刺激だけではないホラー演出も多い。エピソード「響子」のそっけなく唐突な殺人は『CURE』のような黒沢清作品を思わせる*2。雨中にたたずむ伽耶子も古典ホラー映画『回転』*3の引用だろうか、その実在感が最も怖い。直後の増殖した伽耶子はさすがにギャグじみているが、後のシリーズにはないインパクトがある。
前作でも独立エピソードでは家以外にも呪怨が広がっていたが、今回は完全に家をはなれた場面がクライマックスとなり、呪われた家を舞台にした物語ではなくなっている。そこで前作は恐怖が頭上からやってくる原則があったが、今作は窓のような隙間ごしから恐怖が侵入する法則がある。
ちなみにオーディオコメンタリーを聞いていると、白塗りの子供という表現は大駱駝艦から来ているという。それを知って探すとインタビューも見つかった。
Jホラーの巨匠に聞く、世界最恐の「日本の幽霊」Vol.3 清水崇:第28回東京国際映画祭|シネマトゥデイ
笑われてもいいから堂々とやろうと思い、オーディションで選んだ子役を全身白く塗ったんです。ヒントは大駱駝艦(だいらくだかん)(※麿赤兒を中心に結成された舞踏集団)などの暗黒舞踏ですね。大駱駝艦の人たちの動きって、普通の動きじゃないし、人間ではないようなものを感じさせる神秘性と怖さ、美しさを持っているんです。
統合失調症の主観を描いた2015年のドラマ『悪夢』で登場した時に清水崇作品を連想したが、まさにイメージの源流だったわけだ。
『バリバラ特集ドラマ「悪夢」』 - 法華狼の日記
ありふれた路地に、さびれかけたアーケード街に、白塗りの男たちがうごめく。中途半端に特撮を使わず、舞踏集団「大駱駝艦」を起用して、実在感ある恐怖をつくりあげた。堂々と異形の存在を画面に出す演出は、『呪怨』『輪廻』の清水崇作品を思わせる*2。
*1:hokke-ookami.hatenablog.com
*2:オーディオコメンタリーによると黒沢清監督に1作目と2作目を同時に贈ったところ1作目が再生できず、この2作目から視聴したそうだ。