法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第12話 逃げ出すよりも進むことを

謎の敵の襲撃により、スレッタとミオリネは分断され、それぞれの親とともに行動をすることに。ボブという偽名ではたらいていたグエルも、戦闘の混乱に乗じて占拠された宇宙船から脱出して戦闘に参加する。それぞれの選択が状況を動かすが……


大河内一楼シリーズ構成の脚本による1期最終回。襲撃には決着がつきつつ、それぞれの隠していた情報が開示されたキャラクタードラマとしては2期にもちこし。これまで重層的に進行してきた大人世代の陰謀劇と子供世代の学園ドラマが衝突して、それぞれの親子の一見して愛情をもちつつも呪いのように視野をせばめた顛末が描かれた。
親に誘導されたスレッタと、親に反発したミオリネが、それぞれ精神年齢の異なる対応をとることなどは、これまで描かれたドラマの延長ではある。ただ、Bパート後のスレッタがミオリネを助けるEDが、Cパートの展開でニュアンスが変わってくるギミックはおもしろかった。また、あくまで人を殺さない決闘として戦いを描きつづけたことで、メインキャラクターがはじめて人を殺した禁忌感を重くしていることは印象的だった。
新鮮だったのは、MSに乗って出撃するジェターク親子。それでもグエルは成長と挫折のくりかえしの一環ではあるが、社長でありながら出撃したヴィムが、時代錯誤の武人キャラクターという意味で一貫性が生まれたことが意外で良かった。第1話*1からくりかえされた暗殺とその失敗も、ただ卑怯で狡猾で無能なのではなく、安易な暴力で下剋上をはかってきたと考えると、それなりに周囲からしたわれる理由もわかってくる。決闘のホルダーだった時の息子の態度が、父親のふるまいを真似ていたのだと思えてくる。だからこそ、一区切りになる今回で暴力が自分に返ってきたというわけだ。


しかし絵コンテが3人くらいなのは珍しくなくなったが、作画監督の数が多い……鈴木勘太は近年の『映画ドラえもん』の中核で見る名前だが、そちらは毎年作るハイクオリティな劇場アニメなのに、なんとか少数精鋭でこなせている。制作体制が違うのか、描線の情報量の多寡が負担につながっているのか。