つい最近、Colaboが運営しているDVシェルターについて、代替としてハウジング・ファーストを推進するエントリが書かれ、注目をあつめている。
note.com
anond.hatelabo.jp
それぞれ、はてなブックマークが200以上と300以上。エミコヤマ氏の文章を引いたヤヤネヒロコ氏のnoteより、具体性に欠ける後発の匿名記事がなぜか多い。
[B! 福祉] colabo事件に関するスクラップ(1) シェルター型女性支援撤廃の必要性と、困難女性支援法|ヤヤネヒロコ|note
[B! 福祉] シェルター型支援は構造的欠陥を抱えており、既に対策も見つかっている
どちらもハウジング・ファーストがシェルターにまさる解決策で、Colaboが「既得権益」で採用しないかのような論調に読める。匿名記事に対するkingate氏のコメントもその解釈に立つようだ。
id:kingate DVシェルターとハウジングファースト、NPOと国営、Colaboの問題点、全部別立ての話しなので混ぜてはいけない。片側に全部仁藤が立つけど、それを切り離し、奴を分断してから解決すべき。奴には関わる資格がない。
他のコメントは、すべてが肯定的ではないが、やや素直に賛同しているコメントが多い印象。なお匿名記事に対しては、Colabo理事がハウジング・ファーストを推進していることを指摘するenvygreedlust氏のコメントはある。
id:envygreedlust 「ハウジングファースト」といえば、SEALDs創設メンバー奥田愛基さんのお父さんでColaboとも関わりがありNPO法人抱樸を率いて積極的にホームレス支援活動や多くの発言をしている奥田知志牧師ですね
事実として、匿名記事以前に下記エントリで書いたように、実際は理念でも実践でも明確な対立はしていないし、未成年女性が対象であるかぎり単純な代替はできない。
hokke-ookami.hatenablog.com
また、上記エントリがツイッターで言及されたことで、間接的にエミコヤマ氏の目に止まって補足的な連続ツイートが書かれている。
やばい、わたしが十何年も前に書いたやつが変な方向に使われているらしい。ハウジングファーストは最近はラピッドリハウジングと呼ばれることが多くてDV被害者支援では先行したオレゴンよりゲイツ財団がお金を出したワシントン州で実績が積あるけど、万能ではないし他の形態の支援を否定はしない。 https://t.co/1nTsGP2WUA
— エミコヤマ (@emigrl) 2022年12月14日ラピッドリハウジングの利点は、ホームレスの状態をできるだけ短くすることで、精神的なものを含めた健康や職や子育てなど日常の崩壊を食い止めて、さらなる生活の悪化を防ぐこと。でもそれはもともとそこそこまともな生活があってのことなわけで。
— エミコヤマ (@emigrl) 2022年12月14日もともとハウジングファーストは、ホームレスの状態であり同時に深刻な精神疾患や薬物依存や慢性病に悩まされていて、治療をしようにもまず生活を安定させないと無理、というケースで広まったもので、実際それで助かった人もいるんだけど、経済的な問題を解決しないと助成金が切れたら終わりみたいな。
— エミコヤマ (@emigrl) 2022年12月14日ただ住居があるというのは本当に大切で、それなしには支援は一時的なものにならざるを得ない。わたしもアイリーンズでストリートで働いている女性たちの支援やってるから、アパートに入るだけであるいは安全に車を停めて寝られる場所を得るだけで前向きにいろいろ解決できるようになった人を知ってる。
— エミコヤマ (@emigrl) 2022年12月14日DVシェルター、中期的住居、ラピッドリハウジングそれぞれの利点や問題などは、最近読んだ本にも書いてあった。 https://t.co/BcLmqZ4b5n
— エミコヤマ (@emigrl) 2022年12月14日
そもそもハウジング・ファーストもシェルターとは違った管理介入をおこなえる構造がある。
ちょうど匿名記事の直後に報じられたように、行政がホームレスを排除してから選択肢として提示しても、それは強要と大差がない。
困窮者支援拠点の美竹公園が完全封鎖…渋谷区の「ハウジングファースト」利用者が伸び悩む理由とは:東京新聞 TOKYO Web
生活困窮者支援や路上生活者のよりどころだった東京都渋谷区立美竹公園。市街地再開発に伴う準備工事のため14日、完全封鎖された。行き場を失った人たちの今後が懸念される中、区は路上生活者に一時的に住まいを提供し、社会復帰を支援する独自の「ハウジングファースト事業」の利用を促したい考えだ。ただこれまで利用は一部にとどまり、支援制度の難しさも浮かび上がる。
また運用についても、匿名記事が「条件を付けている時点でファーストではない」と批判する「住居は期間限定で提供するが過ぎたら出ていけ」という事例に見える。
区は2016年度に事業を開始。利用者は、区がシェルターとして借り上げた民間アパートに、3〜6カ月をめどに住む。定期的に訪問する職員とともに、定住するアパートを探し、生活や健康、就労などの相談を受けながら地域生活に移行、再び路上に戻らないようにする。
生活保護への偏見や足止めが、おそらく支援対象者自身に距離をとらせている問題もある。ハウジング・ファーストを運用するには課題のひとつだ。
美竹公園で炊き出しを行ってきた路上生活者支援団体「のじれん」の関係者は、事業の理念は理解しつつも「アパート利用は期限付きで、その後は生活保護に移行するケースが大部分。生活保護を利用したくない人もいる」と指摘。
シェルターというかたちが支援対象者を管理介入する問題を知っても、行政や社会そのものが支援対象者に管理介入をさけつつ支援する方針をとらなければ課題は解決できない。