法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

共産党左派の「長周新聞」が「真のメディア」とされるべきでないなら、旧統一協会関連の「世界平和研究」も普通の「学術ジャーナル」とするべきでないのでは

統一協会、現家庭連合が学界へ影響をおよぼすための関連団体「世界平和教授アカデミー」。その媒体「世界平和研究」について、寄稿者の顔ぶれが話題になった昨年に事態を矮小化するようなツイートが注目を集めていた。


「世界平和研究」に書いた研究者が統一教会関係者とか距離が近いとかいうの、流石にパラノイアだな。木宮正史や廣瀬陽子、川島正樹や渡辺靖などもそうだと言うつもりなのか。


b.hatena.ne.jp/entry/s/twitter.com/kanose/status/1547299962676883456 例えばこれとか見ると「金をもらってる」とか言ってるアホがいるんですよね。学術ジャーナルへの掲載で原稿料が発生するとでも思ってるのか。

つい先日の元首相の安倍晋三氏が銃殺された事件を受けて、「5億円 2017@Beriya」氏自身が引用リツイートして、ふたたび賛同を集めている。


これは何度だって言ってやるが、本当に馬鹿げてますね。


横山が三国志を潮で書いたから創価みたいな話


ゼロ年代ネット右翼がそれ言ってた

先日にid:flurry氏が指摘したように、寄稿者が媒体や背後団体との「距離が近い」こと自体を「5億円 2017@Beriya」氏や同調者は反証できていない。


「距離が近い」というのは間違ってないのでは。
たとえば横山光輝「三国志」潮出版社から出ていたのと一緒にするわけにいかんのは当たり前だろうがよ。いいかげんにしろ。

コミックトムに連載した漫画家が必ずしも創価学会員ではないように、「世界平和教授アカデミー」の構成員も必ずしも信者ではないという。
しかし、それだけは団体との距離があることにはならないし、何を目的とした媒体なのかは問われる。


また、コメント先のはてなブックマークにあるid:kanose氏は私のエントリを紹介しているが、さすがに「5億円 2017@Beriya」氏は私へ批判していないだろうと考え、言及するつもりはなかった。


統一教会にこだわる人に釘を刺すような発言をした木村幹氏も統一教会系の学術誌に寄稿しているのか。この法華狼さんの記事の中でも、篠田英朗氏の名前が出てきた

エントリの結論部分を読んでのとおり、寄稿者と媒体の関係に複数の可能性を想定していたし、距離が近くない根拠が出てきたとしても私への反論として成立しない。
統一協会の関連媒体へ記事を掲載させている政治家や研究者は反省してほしい - 法華狼の日記

背後関係を知っていても知らなくても、記事が掲載されただけでも研究者としては問題だろう*9。記事そのものは妥当な内容でも、それはそれで背後組織の宣伝になりかねない。
政治家も研究者も、脇が甘いならば反省すべきだろうし、理解して協力しているならば悪質だ。反省してほしい。

*9:記事内で発表媒体を批判するなどすれば、許容されうることもあると思うし、まったく関係ない場所で発表した文章が利用されたなら話は違ってくるが、木村氏の記事はそうではなさそうだ。

そもそも私がエントリで寄稿を指摘した発端は、朝鮮半島地域研究者の木村幹氏が朝鮮半島における旧統一協会の影響力低下をツイートしたことにある。

少し気になるのが「韓国内では」と限定していること。文章を素直に読めば、反共保守の宗教団体として日本国内で影響力を残していることは否定していない。

つまり多数の著名な研究者が関連媒体に寄稿していることを「5億円 2017@Beriya」氏が指摘すればするほど、私の問題意識の裏づけにもなるのだ。


しかし数日後のツイートを見かけて、「5億円 2017@Beriya」氏とその周囲こそが党派性にとらわれ危機感が欠けていることがうかがえ、言及することにした。


毛沢東盲従集団」の長周新聞が真のメディアみたいに扱われてるのさすがに爆笑ものでしょ、以前からのウォッチャーとしては凄いものが見れたなという感じだ。

カルト宗教が学界へ食いこむために設立された団体と距離が近い研究者を懸念することを「アホ」と呼びながら、どうして他人のメディア受容を「爆笑」できるのか*1
実際には一般的な「学術ジャーナル」でも場合によっては原稿料が発生するが、旧統一協会は姿をかえた*2さまざまな援助で政界から学界まで影響をおよぼそうとしている。
“破産してもなぜ献金?”の問いに宗教学者「自分が出したお金が教団を大きくし、役立つことに誇りを感じることも」 | 国内 | ABEMA TIMES

献金の使途については「おそらく統一教会の場合には、勝共連合とか、勝共連合系の平和運動と称している政治運動の方に使われているのでは。大学については世界平和教授アカデミーという組織があり、ここが色々なイベントを開いたり、学者にお金を出して留学させるなどしている。そういうところの資金の源が統一教会になったと考えた方がいい」とも。

【舛添直言】私が東大と永田町で目撃した統一教会「侵食の手法」 安倍元首相銃撃事件をきっかけにあぶり出された日本政治の膿(1/4) | JBpress (ジェイビープレス)

 私は、東大の研究室に残り、ヨーロッパ諸国で勉強した後に東大の助教授に就任した。すると、今度は「世界平和教授アカデミー」という団体が接近してくる。海外でシンポジウムが開催されるので、是非参加してほしい、渡航費・滞在費はすべてこのアカデミーが負担するという。高名な教授たちは、海外の学界に参加する機会も多いが、駆け出しの若い研究者には無縁な話である。そこで、この「おいしい話」に飛びつきたくなるのである。

 しかし、海外渡航には教授会の許可が必要であり、その手続きをする過程で、過去に蓄積された情報から、この団体が統一教会の関連団体であることが判明するし、そのことを周りの教授たちが教えてくれるので、東大の場合は教授会に書類が出る前に、ほぼブロックされていたように記憶する。

 しかし、この誘いに1度でも乗れば、後は統一教会の広告塔として利用される運命が待っているのである。

つまり寄稿した個々の研究者が影響されるほどの金脈でつながらなくても、早川タダノリ氏も指摘するように人脈そのものに意味がある。


世界日報や世日クラブに登場する右派系言論人の問題は、なによりもまず、あの教団系の大衆運動・大衆組織との敷居がほぼなくなっていて、利用し・利用される関係をつくりだしてしまっていることではないか。だから、たぶん「信者」ではない。だけど登場するのを拒否しなかったという事実は残る。

親学で有名なお髭の先生も「一線を画している」と言いながら『世界日報』にがんがん寄稿しているが、たぶん「信者」ではない。けれども「なかよし」ですよね。

関係者や寄稿者の媒体への認識は良くも悪くも不明だとして、少なくとも一年前までは私がエントリの注記で指摘したように読者のあいだで周知されていなかった。

*4:「IPP」は「平和政策研究所」の略称。はてなブックマークを23users集めながら、統一協会との関係を指摘するコメントがないところが悩ましい。
b.hatena.ne.jp

特異な状況において特異な媒体が一般的な媒体には珍しい発信をしている時、それが高評価される理由は媒体や受容の他に状況にもある可能性も考慮するべきだろう。それが良いことなのか悪いことなのかは別として。
それでは「世界平和研究」に寄稿することにどのような意味があるだろうか。寄稿している著名な研究者は、その媒体でしかおこなえない発信をしているのだろうか。そうしたことが問われている。

*1:念のため、想定されているだろう記事自体の評価は早川タダノリ氏の懐疑ツイートを引いておく。

*2:少なくとも「長周新聞」は各記事にリンクされたページ「長周新聞について」で創刊の経緯やメディアとしての立場を明らかにしている。それが充分な説明かは議論がわかれるとしても、「世界平和研究」と旧統一協会の関係ほどわかりにくくしてはいない。 www.chosyu-journal.jp