法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』危険な旅SP

「裸のサバイバル」は男女ふたりが全裸にそれぞれ道具ひとつだけを過酷な環境にもちこんで、3週間のサバイバルをおこなう番組。
今回はアマゾンのジャングルではじまったが、初日でいきなり優先順位をまちがえる。着火装置をつかった火おこしに女性が失敗して、ナタをつかう男性の住居づくりに協力して完成させたが、その夜に蚊の大群におそわれる。次の日から雨がつづいて着火が困難になり、煙で蚊を追いはらうことができないまま。女性に着火をせまられた男性が装置を壊してしまい、怒った女性が4日でリタイア。残った男性もすぐにリタイアした。
さすがにこれでは番組が成立しないと、別々のサバイバルに成功した男女を送りこむ。今度も着火装置とナタをもちこんだふたりだが、あっさり火おこしに成功。家屋も完成して今度は順調か、と思いきや蚊の大群はやはりおそってくる。根本的にサバイバルが困難な地域なのだ。1週間近くまともな食糧もなく、ようやく見つけたのはデンキウナギ。ここで男性は調子に乗った台詞で殺そうとするが、女性は食べるために殺す生物への敬意が必要と批判し、気まずい空気になるのが逆に良かった。

女性自身も食べること自体には喜びつつ、そのヴィーガニズム的な考えを番組全体で肯定していく流れが、自然のなかで生き抜く番組だからこそ感心した。男性も空腹がおさまれば客観視できるようになって女性の批判を受けいれ、軍人として育ったゆえの内心の暴力性を見つめなおし、関係が回復する。
そこから気力をふりしぼるように見事なイカダを組み上げ、合流地点を目指して川を移動しようとする。たくさんの水草に動きをはばまれたり、夜間にワニの群れが目を光らせたりするが、合流に成功したふたりは抱きあって喜ぶのだった……リアリティ番組ということを考慮してなお、展開が興味深かったし、そこで描かれた価値観も良かった。


米国からは1988年、偵察衛星を設置するためスペースシャトルが打ち上げられた。しかしそのアトランティス号の耐熱タイルがはがれていた可能性がもちあがる。
1986年のチャレンジャー号の爆発事故からひさしぶりの打ち上げだが、順調に成功したと思われた。しかし打ち上げ時の映像を見返していた地上スタッフが、補助ロケットから何かがはがれてスペースシャトル本体の裏、耐熱タイルに当たった可能性に気づく。
連絡をうけた乗組員は船外アームの先にあるカメラで裏面を映し、穴らしきものが撮影された。それを地上基地に送ったが、影がたまたまそう見えているだけだという判断が返ってくる。そのまま大気圏突入し、無事に帰還することはできた。
しかし対ソ連のため秘匿性の高い任務のため、通信は暗号化されていて鮮明な画像が送れず、地上基地がまともに判断できなかったことが事後的に明かされる。どう考えても地上基地は判断できないことを乗組員につたえるべきだったろう。
そして地上で耐熱タイルを確認すると、はっきり損傷していた。たまたま連鎖的にはがれるジッパー現象が起きなかったのと、損傷部分の裏側がシャトル全体でつかわれているアルミではなく鉄骨だったため、溶けながらも高温に耐えられたのだった。
もちろん記憶に新しい2003年、シャトル計画全体の見直しをせまったコロンビア号の事故も紹介。予測できる事故だったというNASA関係者の証言が映し出される。コロンビア号の爆発は、ぎりぎりの幸運で助かった事故の再現だったのだ。


最後はシャングリラと呼ばれた理想郷として、ネパール奥地の高山に掘られた住居遺跡を調べる番組。
途中でたちよった村の、大岩の上に石がつみかさねられた中から人骨を発見したり。岸壁を掘り進めて部屋同士をつないだ目当ての遺跡から、状態のいいチベット文字の壁画を発見したり。古くから信仰されているチベット寺院の鍵をあけてもらい、極彩色の彫像群を見せてもらったり。
興味深い情景のドキュメンタリであったが、戦争や迫害を逃れて高所にうつりすんだ歴史は他の世界遺産でも見られる。それを「平和」な世界と表現するまではともかく、「理想郷」に位置づけるのは微妙なところ。
そもそも古い神話に登場するシャンバラと違い、シャングリラは20世紀に英国の小説で登場した理想郷。伝説が史実だった可能性をもとめて探索する対象としては不適切ではないだろうか。
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