法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『名探偵コナン』消えたダイヤを追え!コナン・平次VSキッド!/阿笠からの挑戦状!阿笠VSコナン

もともと2006年と2007年に応募者全員サービスでDVDが配られたOVAを、ひとつのパッケージに収録。

TVアニメと並行して制作されるOVAということもあり、あまりクオリティに期待してはいけないが、定番から外れた展開が楽しめる。


「消えたダイヤを追え! コナン・平次vsキッド!」は、怪盗キッドは偶然から事態を最後に解決するカメオ出演に近い。物語の本筋は、間違い電話でかかってきた犯罪の声だけから、どのように事態を解決するかというアイデア合戦。
電話がかかってきた緊急通報室内だけで謎解きをつづける映画『THE GUILTY ギルティ』*1に似たコンセプトで、制限された状況からの謎解きや策略が展開されていく。
ほとんど皆無に近い手がかりから、間違えるなら似た電話番号のはずと推理して被害者を調べたり、酷似した声色の服部平次を呼び出して罠をしかけたりする。
どうしても服部が犯人のイントネーションを再現できないと困った時、変声機をつかうことを思いつくことも興味深い。本格ミステリならば禁じ手に近いが、だからこそ世界観の根幹をゆるがす寸前の描写が、外伝的な作品ならではの面白味があった。
なお、名探偵の活動は犯人の声を公開して情報を集めるアイデアで終わり、犯人の姿は後日談的な逮捕劇で登場するだけ。短編でまとめるなら、これくらいで充分だろう。
ただ、毛利蘭が褒め言葉として「標準語」という表現をつかったことに違和感あった。小学館の子供向けアニメとしてどうなのだろう。


「阿笠からの挑戦状!阿笠VSコナン」は、誘拐されたとして博士が子供たちに手紙を残す。もちろん子供たちもそれがゲームと気づき、小学生レベルの暗号を解いていくが……
地図の距離をコンパスではかったり、古代ギリシャの暗号を引用したり、ほとんど学習アニメ。そこから本当の誘拐事件に発展するが、ただの偶然でしかない。拉致された博士がつたえる手がかりも、やはり理科的な知識や社会生活にもとづいているが、ゲームと比べて伏線が足りず厳密さにも欠ける。
たとえば序盤に誘拐のニュースが流れて、博士が被害者なのかと子供たちがやきもきする描写があるか、逆に冒頭ひとりの博士がニュースを見てゲームを思いつく描写でもあれば、物語の流れが強まり、後半の伏線にもなったと思うのだが……