法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『六花の勇者』第十二話 解明の時

第1巻を1クールかけてじっくりTVアニメ化。それほど中だるみを感じさせず、ファンタジーミステリーとして必要な設定を過不足なく提示できていた。
結末は原作第1巻分より少し進んで、やや前向きなエンディング。原作のように新キャラクターが登場した瞬間に終えたほうが、いわゆる「奇妙な味」らしくまとまったと思うが、これは好き好きか。


コンテはまさかの川尻善昭。しかし動かさなければならないことが多くて、作画監督が多めで、かなり絵が苦しい。今期で比べると『オーバーロード』での連続コンテは、ずっと静と動のメリハリがうまく、弱者の惨劇と主人公の強靭さも作風にあっていた。
結末に出てくるキャラクターは、原作と同じデザインではあるが、ちょっとフリーキーにデフォルメしすぎかな。挿絵によっては、もっと素直に肉感的なだけの女性に見えるものもあるので、それを基準にしてほしかった。


ファンタジーミステリとしては、残念ながら原作の弱さを拡大してしまっていた。
『六花の勇者』山形石雄著 - 法華狼の日記

真犯人を特定する手がかりが登場する場面は、伏線がなさすぎてミステリとしてはつらい。ただし手がかりが描写される前からも犯人はしぼられているし、手がかりが登場した後で傍証について言及される。おまけに読者しか知らない傍証も存在するので、許容できる範囲ではあるか。

この読者しか知らない傍証とは、真犯人のモノローグのこと。声優が語ると正体があからさまになるTVアニメでは当然のように削除され、原作よりも手がかりが少ない状態。たとえば特定する手がかりを最終回のひとつまえに、ふたつの石板を掘りおこす場面をアニメオリジナルで入れるとかすれば、ぐっとミステリらしくなったと思うのだが。