法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』

西の名探偵の服部平次と、その幼馴染の遠山和葉は、競技カルタとのさまざまな縁があった。TV局爆破事件や連続殺人事件にからんで、ふたりは皐月会でひらかれる競技に巻きこまれていく……


静野孔文監督、大倉崇裕脚本によるシリーズ最大のヒット作。20日金曜ロードSHOW!の放映版を視聴。
金曜ロードシネマクラブ|日本テレビ

映画コナン史上最大のヒットにして2017年邦画ナンバーワンヒット作のシリーズ第21弾がテレビ初放送!
物語のメインとなる舞台は、秋の京都。“競技かるた”(百人一首)の名人が殺害された事件にコナンと西の名探偵・服部平次が挑むことになるのだが…。

今作の題材に同じ日テレ関係で映像化されている『ちはやふる』を連想したら、両原作者の特別対談において、影響されて発案したことが明かされていた。
【人気漫画家SP対談】“コナン”青山剛昌דちはやふる”末次由紀、貴重なコラボイラストも完成! | ORICON NEWS

ちはやふる』が好きだったこともあり、映画で“競技かるた”を絡めようと提案したという青山氏は「実写映画『ちはやふる』が公開した後だから、映画でかるたを扱ってもいいよね、コナンくんって思っていたら、その後また実写映画の続編があるんですよね。やばいって思いました(笑)。でも、これで競技かるたが盛り上がるといいですね」と相乗効果を期待。

しかし今回でアニメ初登場となるサブレギュラーだけでなく、レギュラーキャラクターの設定として競技カルタが出てくるのは、いくら原作者の発案とはいえ唐突すぎないかと思った。趣味としてマイナーすぎて、過去ににおわせもしなかったのが不自然だ。
それでいて敵も味方も競技そのものに真剣に向きあわず、自身の恋愛感情を優先するばかり。もっと題材への狂的なまでの愛情を描いてほしい。過去の事件に説得力を感じなかったのも、題材への愛情がキャラクターに欠けていたからだ。
競技カルタという題材と、シリーズ恒例のド派手な爆破シーンにも違和感がつきまとう。目的からしても、もっと穏健で注目をあびずにすむ手段がとれたはずだ。前半とクライマックスの爆破シーンと脱出劇は、アニメアクションとしては良い出来だったのだが。


本格推理としても弱くて、犯人しか知りえない状況を口走る描写が手がかりになるのは古臭い。さすがに名探偵ならすぐわかって中盤で処理されるくらい、簡単な手がかりと位置づけられているとはいえ。
大倉崇裕作品は短編しか読んだことがないが、あまり文章がこなれていない印象がある。今作も、犯人の口走るシークエンスや、名探偵が推理を開陳する場面の台詞回しには違和感があった。服部と大岡が過去にかわした約束も、予想通りバカバカしい聞き違いでしかなかった。


事件の大きさに比べて、せまい世界の出来事のように終始したのも疑問。
いや、発端となる過去の事件は衝動的なものらしいし、真相は隠蔽されていたからいい。しかし現在の大事件は、真相があばかれた以上、競技カルタ界において大スキャンダルに発展するはずで、エピローグのような能天気な情景にはならないだろう。
真犯人にしても、人間関係や爆破をおこなえる人脈を示唆した描写から見当をつけることは難しくない。それなのに多くの敵や味方を犠牲にしながら、ただ愛のために行動した善良な性格のように描写して終わった。謎解き優先の本格推理らしい倫理観といえばそれまでだが。