法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』見たことない世界!極端だなぁ

冒頭の映像コーナーの後に、前衛的なファッションがならぶロンドンコレクションで、学生が仲間とともに奇抜なファッションを安い材料で適当につくり、周囲を騙せるかという実験が紹介。
最初は友人のサクラにさわがせて有名なモデルのように装ったが、すぐにマスメディアが食いついてきた。ファッションを変えた二度目はサクラも必要なく、周囲に人がよってきて有名な俳優からも賞賛の声がかかる。配色などがけっこう良くて、完全な素人が思いつきで作ったのではなく、それなりにそれっぽさを狙って理論武装もしていたようにも見えた。
一応、記者であれば知らなくても怪しくても素材のため取材をしている可能性を感じなくもないが、しかしよくある風刺のように前衛を茶化すふるまいが成功した姿は興味深かった。どこまで周囲を騙せていたのか、騙されたと知った後の評価はどうか、もっとくわしく知りたいところ。


中央アフリカでは、大型トラックの荷台に乗客を満載したタクシーや、水漏れがするフェリーで河を移動する。
トラックは悪路を進み、大きく揺れつづける。必然的に車速は遅いが、もし転倒すれば荷台にいる人々は投げ出され、多くの犠牲者を出しそうな危なっかしい光景だ。
フェリーの名前は「約束の地3号」で、1号と2号は沈没。50人ほどの死者を出した事故があったと笑顔で語られるが、視聴者としては笑えない。現在のフェリーも乗組員が水をくみだしつづけなければならない。夜間航行するための照明もないため先頭の見張りが懐中電灯で闇夜を照らすが視界を確保できず、小型船と激突してしまう。
さらに看護師しかいない村では、医者のいる地域へ移動するためにバイクに乗せられる。やはり舗装されていない悪路を進まなければならない。バイカーは貧しいからこその絆を肯定的に語るが……


スウェーデンでは、ソマリア難民によって結成された氷上スポーツチームの挑戦を描く。
ボルレンゲでは3000人ほどのソマリア難民が生活しており、地域住民との軋轢が生まれている。社会から疎外されて難民が犯罪に手をそめる可能性も語られる。
そこで難民の存在感をしめすため、バンディというホッケーの原型的なスポーツでチームを組み、ロシアの国際大会への出場を目指す。
ワールドカップで何度も優勝したヘッドコーチをまねき、最初はスケートリンクに立つこともできなかった選手たちが試合をおこなえるようになるが、さすがに半年ほどでは国内予選で惨敗。
総合的な審査によって特別に国際試合に出場できたが、やはり日本チームなどに圧倒的な大差をつけられゴールもできない。しかしロシアの観客席に応援され、強豪国ドイツに1ゴールだけでも決めることができた。その後は難民チームが逆に子供たちへバンディを教える関係になったという。
多くの描写は興味深くもスポーツドキュメンタリの定番におさまっているが、ひとつ印象深かったのはスポンサー。香港から来た実業家として、移民というつらい立場に共感して応援。試合で惨敗をつづけても、鷹揚な態度ではげましつづける。地球の反対側まで社会問題への視野が広がったことが良かったし、成功した中国人らしい独特な器の大きさも興味深かった。


米国からは、オハイオ州のふたつの高校で、教師が銃で武装することを投票で決めるドキュメンタリ。
2016年にマディソン校で起きた14歳による銃乱射事件をきっかけとして、教師が銃をもてば安全を確保できるという保安官や射撃場の共感たちと、校長や生徒たちが対立する。
ハミルトン校では校長が反対意見を主導。実際に犯人が襲撃*1した場合を想定して訓練し、銃にたよらない対処を学んだようだ。
マディソン校では被害者のひとりにして、犯人の友人だった少年をピックアップ。教師が銃を保持している状況がつづくことへの恐怖感をうったえる。
ハミルトン校では教師が銃を保持しないことが決まり、マディソン校では教師が銃を携帯することが決まる。保安官は後者の決定に安堵を見せるが、被害者の少年は転校した。
被害者であれば武装や復讐や反撃を求めるようになるという思い込みを退けながら、それを共同体の結論に反映することは困難をきわめる。

*1:襲撃役が黒人に見えたのは、別の偏見を育てかねず、少し引っかかったが。