法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『トロピカル~ジュ!プリキュア』第27話 やる気が消える? 水族館ふしぎツアー!

母がつとめている水族館のチケットをもらった夏海は、トロピカる部のみんなで見に行った。しかしイルカショーに行った人々に元気がない。ヤラネーダのしわざかと考えたが、反応が弱くてはっきりしない。ローラが人魚姿で水槽を調べるため、周囲に人がいない状況を考えて、ナイトツアーへ参加することに……


井上美緒脚本に貝澤幸男コンテ、岩井隆央演出で、アバンタイトルの夏海家と水族館だけに舞台をしぼった物語が展開される。
作画はひさびさに完全な青山充一人原画。あまり絵柄をあわせることに力をつかわないし、どのようなカットでも合格点ぎりぎりのリソースですませるが、逆にいえばどれほど難しいカットでも合格点を叩き出せるアニメーターだ。
特に番組開始11分すぎで俯瞰で多様な群衆を描いた構図など、止め絵だが手間のかかるレイアウトをさらっとこなしていた*1。一人原画ができて劇場アニメのレイアウトもできる底力を感じさせる。普段は目にしない動物をアニメ的に簡略しつつそれっぽく動かせてもいる。
人間から少しずつ奪うだけで充分な敵ならではの策略や、昼と夜で雰囲気が変わる水族館の姿も良かった。


しかし動物を保護して学ぶ場所としての水族館のディテールには疑問がつきまとった。
イルカの生態展示は国際的に無批判で描いていいとは思えないし、曲芸させることも水族館の本来の理念とは異なるはずだ。逆にプリキュアの戦いでイルカに協力してもらったり、イルカとふれあえることを大事だと主張するところで、自然の安易な賞揚も感じた。これらはアニメの描写が現実と比べて間違っているというより、日本の水族館のありようを無批判に描くことの問題だ。
かつて子供の感情的な意見とされがちだった、野生動物は自然のなかで自由にさせたほうが幸せだという考え。それが現在では原則としても正しいと考えられている時代の変化にアニメ作品が追いついていない。子供向け作品だからこそ、現在の社会問題をとらえて、少し成長した後にも通用するくらいの内容でつくるべきではないかと、もはや子供ではない視聴者としては思った。

*1:演出の手が入っている可能性も感じたが。