法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』新しい商売SP

さまざまな色のパンケーキ生地を焼いては重ねていく手法で、ひっくり返して絵にするタイのパンケーキ屋など、冒頭のミニ映像集は有名な手法の精緻化や発展が多い。どちらかというと本当に誰も考えなかった斬新さより、映像としての見映えを重視した印象。技術的な新しさもドローンを利用した宅配や害虫駆除など。結果として最後に紹介された中国の、花火がわりに鍛冶屋が融かした鉄を壁にぶつけて火花を咲かせる伝統的な祭りの光景が、最も印象に残った。
ただ紹介される地域ごとの傾向として、欧米は過去の風景と違いがあまり見えないことに比べて、東南アジアでは小さな個人店まで客と会計のうけわたしでロープをつかったりするほど新型コロナ禍の影響と対策が見えること。もちろん先述のドローンをつかった宅配は新型コロナへの対応なのかもしれないが、もともと広い土地に居住している光景ということもあってかマスクなどをつけている光景が少ない。


カナダのニューファンドランド島では近年タラの漁獲量が減ってきた。そこでかつて沖でタイタニックを沈めたような氷山を見つけ、溶かし、貴重な美しい水を採取する仕事をはじめた。
まず小さな船で接近し、銃弾を撃ちこんで流れた破片を採取して純度をたしかめる。ようやく巨大な採取船で巨大なアームで氷を砕き取り、水にして船内のタンクにいっぱいためる。水はウォッカの材料としてカナダで大ヒットし、採取者は一億円以上の収入をかせいで島に活気がもどったという。
しかしスタジオで北野武が紹介した氷山の氷をそのままロックアイスにつかうほうが、商売としては古いが、貴重さが増すと思うのだが。


新しい仕事としてゴーストワーカーというものを紹介。パソコンとインターネットさえあれば可能な副業として、ドキュメンタリの当初は夢のように見せているのだが……
北米での仕事はAIの学習を助けるため、人力でさまざまな写真のパターンをクイズのように答えていったり、風景で該当する存在を囲ったり。しかし在宅とはいえ障害のある子供のため1日8時間働いている女性は、月に3万円ほどしかかせげない。おそらく収入をえるための仕事としては、日本でも問題になっているクラウドソーシングとかわりない。
あるいはポルトガルでの、秘密裏にインターネットを巡回し、エロティックだったりグロテスクな画像を基準にしたがって機械的に削除していく仕事。しかし陰惨な光景を見つづけて潜入取材者は精神が耐えられなくなり、3週間の研修を2週間で脱落した。その仕事を精神的にたえられなくなって辞めた人物は、問題のある光景を削除するだけで通報できないことが逆に負担だったと匿名で証言する。食事などがついて月に13万円ほどの収入は判断しづらいが、ドキュメンタリで指摘されたようにたしかに精神的ケアの不足を見ていて感じざるをえなかった。


ベトナムハロン湾では、海上で住居を浮かべて生活する人が取材時点で1600人ほどいるという。発泡スチロールの塊でイカダを作って小屋を建てただけのような小さな家だが、新婚家庭は不動産会社への借金に苦しむ。
高級魚を養殖している父も夫婦を助けられるほどの余裕はなく、母が子育てを手伝ってくれるくらい。夫婦はそれぞれ釣りや貝とりで生活するが借金を返せそうにない。
そこで当時の平均年収の6倍のかせぎになる行商人に目をつけ、銀行で借金して船を購入し、新しい仕事をはじめていく……スタジオで指摘されたように、どこかで誰かにだまされそうで危なっかしかったが、その登場人物の純朴さが逆にドキュメンタリの味わいになっていた。
またスタジオで紹介された後日談として、漁業ではなく観光を主な収入にしている現在のハロン湾の風景も、興味深い光景を描いたドキュメンタリ自体の補完になっていて面白かった。