法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ジジ島の怪魚ハンター

今回はのび太もふくめて骨川家のクルーザーに乗せてもらい、骨川父の友人のしりあいの親戚がもつ島へ釣りにやってきた。美しい小島でさっそく釣りを楽しもうとするが、スネ夫しかうまくできない。
そこで秘密道具で釣りをしようとしたドラえもんのび太が島の主らしき巨大魚に引きずられ、釣りに飽きて秘密道具で勝手に遊んでいたジャイアンと衝突事故を起こしてしまい……


伊藤公志脚本に、今年初の小倉宏文監督コンテによる完全アニメオリジナルストーリー。30分枠をいっぱいにつかったタイムスリップ冒険劇が展開される。
元号を質問して江戸時代と特定する描写にはじまり、狸をも食べる怪魚の伝説をめぐる活劇として、意外性こそないが期待にはこたえる細やかな話運びと充実した映像が楽しめた。
まず浮世絵風のサブタイトル絵が印象的。クルーザーを手描き作画でていねいに。ロングショットでロッジから堤防へ走っていくドラえもんはコミカルな作画。魚釣りのディテールも、作品になじむ描きこみで自然に作画。
そこからタイムスリップして大長編のように四次元ポケットを失ったと思ったら、怪魚の腹にひっついていたことから、ゴンスケそっくりの釣り人と目的が一致して協力することになる。


のび太は普通に助けられているのに、狸あつかいされるドラえもんがあわれで、しかしテンポ良く笑える。流れついて丸焼きにされかけたあげく、怪魚の餌にされるドラえもん。釣り人の腰痛から畳みかけるように岩に頭から激突するドラえもん。いったんヨーヨーを疑似餌にしようとして失敗したからこそ、あらためて自ら餌に志願したドラえもんの決意もきわだつ。
その釣り人は、優しいのにどこか冷たく、ほがらかなのに無機質。真相を開示する前に見当がつくくらい、お殿様というキャラクター性に説得力があった。
最後の巨大魚拓にのこったドラえもんの姿が現代で狸あつかいされるギャグも時間移動SFらしいオチで良い。