法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』わすれ鳥/無敵のスーパーランドセル

「わすれ鳥」は、宿題のノートを忘れて家へ帰ったのび太が、父親も忘れ物している姿を目にする。そこでドラえもんが忘れ物を注意する秘密道具を出して、父親は喜んで手紙を出しに行くが……
初期の原作を2005年以降で初アニメ化。伊藤公志脚本、釘宮洋コンテ。父の日にあわせた放送で、アニメオリジナル描写で強調しているが、この内容を父親に見せて良いのかどうか。
原作は野比父のトラブルだけを描いた短編。もう忘れ物をしないからと油断して手紙を帰りに出すことを決めるギャグなどもふくめて、遅々関係は基本的に原作に忠実。
そこに今回のアニメ化では、しずちゃんジャイアンスネ夫もアニメオリジナルで登場させる定番のアレンジ。落語のように無駄のない起承転結が楽しめた原作に、無理な追加でノイズが混入するかと思いきや、それぞれの場所で忘れ物する物語が並行する構成で楽しませる。それがギャグとして楽しいだけでなく、父子のドラマを感じさせる。
たとえば、のび太が源家へもってきた道具の分だけでも宿題をするのではなく、たったノート一冊のため家にもどることを決めるのはツッコミどころだが、父親と似た愚かさを感じさせて、意外と違和感ないギャグになっていた。
原作とは違った方向のさまざまな忘れ物を描いて、設定を尊重しながら違う面白さを足したことにも感心。秘密道具が忘れ物をしていることを警告するだけで、何を忘れたかの説明まではしない原作の描写を、何を忘れたかを悩むギャグにつなげて、そこから父の日を思い出して季節ネタに展開する巧妙さ。


「無敵のスーパーランドセル」は初回放送が2015年で、最近の再放送では少し古い選出。
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当時はただ拡大していく状況を楽しむだけのギャグと受け止めていたが、あらためて見ると細かな工夫が目につく。秘密道具そのもので状況をつくりだすのではなく、改造するための秘密道具を原作から引用しているワンクッションで、うまく作品になじんでる。
改造したランドセルの機能をテストする場面も、いつものトラブルがテンポよくふりかかる描写が笑える。そこで出てきたエアバッグが飛行競争の墜落時に使用されるのも気がきいている。その墜落シーンが、攻撃による煙幕が晴れたら地平線が横になっているというコンテもうまい。