法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 Season18』第11話 ブラックアウト

年末のゴルフ場で開かれた親睦コンペに、特命係も参加していた。そこには警備会社を経営する警察OBの蓮見恭一郎や、その息子で三課の出世頭の姿もあった。
ゴルフが終わり、杉下や蓮見が地下駐車場に降りた時、突然の爆発で出入り口が全てふさがれる。それは収監されている組長や仲間の釈放をせまる暴力団員のしわざだったが……


テレビ朝日開局60周年記念 元日スペシャル」として2時間超にわたって放映。海底トンネルに閉じこめられる映画『デイライト』*1を連想させるクライムパニックを、きちんとした絵作りで展開した。
何よりも舞台となる地下駐車場の崩落をきちんと作りこんで、一般向けTVドラマとは思えないほど照明を落として暗闇を演出。照明になるのは電線の火花や自動車のライトなど、埋まった地下にあるものだけ。
単純に閉じこめられるだけなら救出して終わりになるところ、毒ガスを発生させる薬剤がもれたり、そもそもが脅迫のための大事件だったりして、制限された舞台でも状況が変化していく。


さすがに脅迫ひとつに事件が大がかりすぎるかと思えば、暴対法によって生活できなくなった組員の思いがあり、余命半年という立場で動かずにいられなかった心情が語られる。
さらに蓮見が同じような事故に巻きこまれた過去があり、偶然に思えた危機すらも意図的な再現とわかっていく。
そこからは『相棒』らしい複数犯の動機がかかわってくるが、ありきたりといっていい復讐もあっさり流して、組員ともども他者の感情を利用した謎めいた真犯人が全てを制御していたという展開に。
組員の怒りは組長にさとされ、復讐心は煽られただけで、すべては利益目的の冷徹な犯人が起こした事件だった……とまとめるのは、後に残らない娯楽にするなら正解だし、結果的にせよ死者を出さず巨悪をあばいて大金をかすめとるキャラクターには愉快犯的な魅力がある。


実のところ、その真犯人には共犯の復讐者がいたというツイストも入るのだが、こちらはドラマの当初から予想したとおりだった。その復讐心の発露も、いかにも刑事ドラマらしい平凡さで、悪くはないが良くもない。
過去の被害者となった路上アーティストの位置づけもよくわからない。現在では依頼を受けて許可をとって絵を描く例もあるが、そうした美術家の卵を描いているのか、公共物をキャンバスにするチョイ悪にも夢見て生きる権利はあるという話なのか、どちらで解釈すべきなのだろうか。
いきなり動き出す無人の遊園地という演出も、オーソドックスな良さこそあるが、誰が何のために動かしているのか説明がまったくなく、絵作り優先が鼻につく。
いっそ地下に閉じこめられた時間をもっと長くして、第二の復讐者は先に逮捕して、冷徹で利己的な真犯人との対決で物語を終えてほしかったかな、という感想。

*1:途中で毒ガスがもれるあたり、元ネタのひとつなのかもしれない。 『デイライト』 - 法華狼の日記