地球に帰還したプリキュアたちは、ひとまず日常生活に戻る。もともと親の期待を一身に受けながら生徒会長として奮闘していた香久矢まどかは、さらにプリキュア活動と両立するために疲弊していく……
冒頭から描線の強弱がついた作画で、上野ケン作画監督とすぐわかる。アバンタイトルではロケットが着陸するエフェクト作画も地味に良かった。
演出は前作の最終決戦を担当した若手の川崎弘二で、その時の印象*1と同じく冒険は少ないが手堅い作風。どうしても派手さを期待してしまう最終決戦より、今回のように地味な日常描写を重ねていくエピソードが持ち味に合っていると感じた。
今回の脚本は平見瞠。1990年版の『ジャングル大帝』でシリーズ構成をつとめたりして、児童向けアニメではベテランだが、どうやら『プリキュア』シリーズには初参加らしい。
ていねいな日常描写を地味に積み重ねていく展開は過去作にはない味わいだが、そもそも今作全体がかなり過去作から味つけを変えているので、担当脚本家の個性なのかどうか見当もつかない。
とりあえず、本筋がひたすら地味で鬱屈する一方なところを、古典的な金髪縦ロールな姫ノ城桜子を香久矢の後継者ねらいに配置したのは良かった。笑えるほど自己評価の高い言動で硬軟のメリハリがついて見やすくなったし、その髪型が怪物化した時に武器になるギャグも笑えた。香久矢を尊敬しているからこそ後継者になりたがるという立ち位置なので、この種のキャラクターには珍しく不快感もない。
同時に、姫ノ城という一般人の視点だからこそ、今作のポップな雰囲気から離れた展開にできたのだろう、とも思った。今作のプリキュアはたがいの自由を尊重して、執着しない。それは良いことなのだが、結果として香久矢の孤独を変えることなく、後継者を目指す姫ノ城が先んじて異変に気づくこととなった。
あと、敵幹部に場所が知られたからと、冒頭でロケットの着陸位置を変えたところも、地味に背景美術の手間をかけてまで整合性を気にしていて感心した。