法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『タイタンの戦い』

同名の1981年の映画をレジェンダリーでリメイクした2010年版。勇者ペルセウスメデューサを倒し、クラーケンを退治するまでをVFX満載で描写する。

ギリシャ時代の街並みを怪獣のように豪快に破壊していくクラーケンが、いかにもレジェンダリー大作といった感じで楽しい。他にも大サソリとの戦いやメデューサとの対決など見せ場は多く、2時間に満たない娯楽活劇でも充実している。気になったのは、立体映像化を意識しすぎて不自然にオブジェクトが飛び出てくる描写が多いことくらい。


さて物語の本筋は、海に捨てられていたペルセウスが成長して、仲間を集めながら神々による難題を解いていく旅路……なのだが、ギリシャ神話の神と男のクズっぷりが何よりも印象に残ってしまった。
少しは現代的にマイルドにしているかと思いきや、メデューサはポセイドンにレイプされてるし、ペルセウスも母がゼウスにレイプされて産まれたことが明言される。そしてレイプ被害者が穢れた存在としてあつかわれ、メデューサは守護してもらおうとした処女神によって怪物にさせられ、ペルセウスは父王によって母ごと海に沈められる。
それでゼウスが人間を愛している神に位置づけられ、ペルセウスの庇護者を気取って目の前にあらわれるのだから唖然とさせられる。そこでペルセウスは何よりもまず父親を殴り飛ばすべきだろう、と思ってしまった。
ちなみに映画のペルセウスの結婚相手はギリシャ神話と違って、助けたアンドロメダではなく、旅路をともにしたイオというくらいの改変はある。関係性の相似から考えると、いっそ半神ペルセウスが半蛇メデューサをめとるくらいの改変があってもいいな、などとも感じた。メデューサのデザインも、ハリーハウゼン人形アニメで完全に怪物として描いた1981年版と違って、人間時に神に見初められただけの艶やかで美しい造形の3DCGで描かれていたことだし。