法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ザ・ロード』

薄暗い空に、死にゆく生態系。残された人々は飢えながら、移動をつづけてどこかを目指す。災厄後に産まれた息子とその父もそうだった……


オーストラリア出身のジョン・ヒルコート監督による2009年の米国映画。コーマック・マッカーシーの原作にもとづき、ポストアポカリプスを正面から映像化した。

ザ・ロード スペシャル・プライス [Blu-ray]

ザ・ロード スペシャル・プライス [Blu-ray]

『マッドマックス』を思わせる暴力集団が登場して、食糧を求めて人肉にまで手をのばすが、それを倒すヒーローはおらず、主人公父子は逃げのびるだけ。
絵も話もミヒャエル・ハネケ監督の『タイム・オブ・ザ・ウルフ』を思わせる陰鬱なムードが充溢しながら、娯楽作品らしく状況が動く場面が多い。
食糧のために飼われた人々がいたかと思えば、たっぷりの保存食を見つけて歓喜する一幕もある。荒涼とした風景は基本的にロケで表現されるが、崩壊した文明の全景はVFXによるもの。


基本的に救いのない一本道を行くだけのロードムービーだが、終末を描くにあたって陰性にも陽性にも偏らせず、意外とバランスのいいポストアポカリプス物になっていた。
ただ、短いながらけっこう凄惨な場面があるのに、ただの父子のドラマのように宣伝しているので、届くべきところにまで届いていなさそうな惜しさを感じた。
淡々としているが、ホラー映画好きも見て損はないと思うのだが。