法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『HUGっと!プリキュア』第22話 ふたりの愛の歌!届け!ツインラブギター!

キュアブラック美墨なぎさと、キュアホワイト雪城ほのかが、はぐたんの力で異世界からやってきた。それはそれとして、愛崎のギターが壊れた問題がつづく。一方、敵幹部パップルは最後の支えを失って……


ふたりはプリキュア*1からのカメオ出演回。
プリキュアがたくさんいることを示唆する会話があるが、オールスター映画のメタ的な説明というだけではなく、世界観的な主張と感じさせる。たぶん世界設定的な説明ではない。今後の物語で異世界プリキュアとの交流が展開されるのではなく、「なんでもなれる!」のメッセージの強調なのだろう。
物語の本筋も、全てを失ったと思って自暴自棄になり、止めてほしいと願いながら堕ちていったパップルを、愛崎とルールーが「なんでもできる!なんでもなれる!」とはげますというもの。そこですぐに抱きしめないという距離感が良かった。誰にでもすぐ距離をつめる愛崎も、上司部下の関係だったルールーも、パップルのすべてをわかることはできなくて、しかしわかりあえない哀しみを理解することはできる。
前後して、愛崎とルールーがたがいを思いやって逆に距離をとっていた問題が、パップルを救う助けになる。距離をとったふたりの関係が、『ふたりはプリキュア』初期の仲違いエピソード第8話と重ねあわされ*2カメオ出演した美墨雪城の存在感を高める。
ただ、愛崎とルールーとパップルのドラマの一区切りとして完成度が高く、さらに別作品のカメオ出演や新アイテムの販促や敵幹部の退場や敵首領につながる描写まで、入れるべき情報量が多すぎて、さすがに薬師寺と輝木がドラマにからめていない問題は気になった。雪城と薬師寺がかかわる描写などはあるのだが、本筋のドラマの濃密さに負けてしまっていた感はある。


カメオ出演に敵幹部退場と新アイテム登場が重なり、映像も充実していた。
シリーズ初代から若手演出家としてかかわりつづけてきた座古明史シリーズディレクターが演出を担当し、先述の初代第8話と同じく爲我井克美が作画監督をつとめるというスタックワークも力の入れようがうかがえる。
濱野裕一*3原画と思われるキュアブラックキュアホワイトの激しい戦闘も、徒手空拳の打撃をメインとする初代の特色を引きだしていた。現プリキュアの戦闘も1カットを長めに連続攻撃を描写していただけに、うまい差別化になっていた。もっともこれは、シリーズ初代の泥臭い魅力が少しずつスポイルされた現状を示しているわけでもあるが。

*1:プリキュアデザインからすると、厳密には続編の『ふたりはプリキュア Max Heart』か。シャイニールミナスは本編に出てこないが。

*2:東映で演出家としてキャリアを重ねた五十嵐卓哉監督が、最後に東映作品で本編演出を担当した傑作回。光源のつかいかたなどの陰影がよく、敵との戦闘も短いながらよくできていた。主人公ふたりが少しずつ距離をつめていくドラマが、新アイテムの販促をかねているクレバーさもあった。

*3:単色の破片を散らすことが特徴のひとつ。