法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『HUGっと!プリキュア』第24話 元気スプラッシュ!魅惑のナイトプール!

町内会が企画したナイトプールの泥臭さを嫌がって、野乃たちがデザイン全般に手を入れて、イベントを再構築。
華やかに盛りあげることに成功したが、再生して輝いていく周囲を見ながら、野乃はひとり曇っていく……


敵組織が新体制になった後処理として、これまでプリキュアが戦ってきた敵幹部をフォロー。それが同時に、周囲をフォローしてきた野乃自身はフォローされていないことを浮き彫りにする。
イケメンユーチューバー*1としてハリーとはりあうチャラリートや、ふたたびルールーと上司部下の関係になりそうなパップル*2薬師寺による短時間の救いを逆にキャラクターとして活用したダイガン。
こうして敵幹部と再会していく流れで、野乃ひとりが関係性からとりのこされていく。輝木も幹部との因縁は弱いが、かわりにハリーとの関係を描いているし、薬師寺とともに芸能にかかわる立場としてパップルたちと関係を深めていく予感がある。
さらにイベントをライブでもりあげるのも、敵によって曇らされた一般人の精神*3を救うのも、プリキュアとして活躍する時間も、愛崎とルールーのコンビがもっていく。セットで新プリキュアになったことでコンビで完結しており、既存のプリキュアと関係性が薄いふたり。それは野乃の周囲との関係性を薄いままに固定して、かつそれを明示する時まで視聴者に気づかせないギミックだった。


前回の過去描写*4で期待したことを、さっそく深めてくれた。
いかにも夏らしい楽しいイベント回として成立させつつ、それが主人公の孤独を増すという構成の妙にうなる。泥臭い町内会のナイトプールを拒絶したことで、野乃自身がイベントの虚飾性を増してしまった皮肉もいい。
主人公ひとりを優遇するのではなく、周囲を遇していくことでキャラクターが成立するという構造もうまい。女児向け販促アニメという表層を維持したまま主人公を追いこむドラマが作れている。
ちなみに作画監督は高橋晃。近年は『アイカツ』シリーズへの参加が多いためか、全体として整いつつも顔立ちが幼い。それも野乃の幼さと危うさの表現にひとやくかっていた。

*1:一般人としては凄いが食べていくには不安な再生回数「283回」というリアルな数字が今後の不安をさそいつつ、未来の可能性を感じさせる。過去作での、1回の再生でも宣伝として意味がある弱小商店街のPVとは、近しいリアルな数字でも達成度が異なる。『キラキラ☆プリキュアアラモード』第13話 ムリムリ!ひまり、まさかのデビュー! - 法華狼の日記

*2:幹部としての退場回で愛崎との因縁も生まれていたことも、ちゃんとふたりをスカウトする流れに回収される。『HUGっと!プリキュア』第22話 ふたりの愛の歌!届け!ツインラブギター! - 法華狼の日記

*3:今作は例年よりも怪物化に利用される負の感情が弱くてきっかけに使われているだけと感じていたが、まさか主人公がその場で最も闇が深いとなるとは……『HUGっと!プリキュア』第19話 ワクワク!憧れのランウェイデビュー!? - 法華狼の日記

*4:『HUGっと!プリキュア』第23話 最大のピンチ!プレジデント・クライあらわる! - 法華狼の日記