法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

2017年夏TVアニメ各作品について簡単な感想

おおむね全話見た作品を、いくつか五十音順で。

18if

さまざまな他人の夢を見る物語にあわせて、エピソードごとにスタッフやビジュアルを変える趣向は楽しかったが、現在のGONZOでは制作リソースが不足気味。第3話と第7話と第10話は絶品だったのだが。
立ちあげの第1話と第2話のスタッフが同じで、趣向の面白味が弱まった問題もある。せめて第2話くらい、GONZOが礼をつくして中澤一登木崎文智を呼ぶべきではなかったか。

アクションヒロイン チアフルーツ

箱物を誘致した側による過疎地の振興を描きながら、嫌味がなくて、問題から目をそらさないのも良かった。ご当地アイドルヒーローの舞台裏も楽しかった。
ただ、いくら素人という設定でも、劇中のヒーローショーのテンポが悪いのは難。ちゃんと劇中評価どおりの楽しさを感じさせたのは第1話と最終回くらいしかなかった。

アホガール

短い放送時間いっぱいに視聴者を楽しませようとするネタをつめこんで、OPからEDまでちゃんと楽しかったのは良かった。ボケキャラの良き倫理観の側面は正しく高評価され、ツッコミキャラの人間性に問題がある部分がきっちり批判されたことも感心した。

異世界食堂

異世界の住人が地球の料理を絶賛するパターンが、単調にくりかえされる。しかも異文化を評するボキャブラリーがなさすぎて、何の変哲もない料理しか出てこないのに、ふわっとした印象しか残らない。工夫があったのは豆腐ステーキくらい。
ただ、まったくの異文化料理では美味と感じられないことも多いのでは?とか、なぜ地球側から異世界の文化への興味は描かないのか?とかの疑問が、最終回に明かされた過去で一気に氷解したので、全体の印象は悪くない。

異世界はスマートフォンとともに。

長大な原作からどこまで映像化するのは悩むところだろうが、せめてもっとネタをつめこんでテンポ良く楽しませることはできなかったのか。WEB小説にありがちなクセが、薄味ゆえに出てこない良さはあったのだが。

仮面ライダーエグゼイド』

前半はピンと来なかったが、提示した設定を基盤として、展開と飛躍をつづけた後半には感心した。ゲーム的とされがちな復活する死生観が、ちゃんと医療ドラマらしさと結びついたことも期待以上。
比較的に安いCGでも表現できるゲーム的なビジュアルのおかげか、東映ヒーローには珍しく終盤になってもVFXの見せ場が多くて、物語のスケールにあった情景が見られたことも嬉しい。

ゲーマーズ!

すれ違いラブコメというコンセプトをつきつめてブレず、少しずつ事態を拡大させながら最終回までやりきった。序盤に出てきただけで放置されていた真面目なゲーム部を、最終回にひねったかたちで出した技巧も良かった

恋と嘘

少子化対策のため政府が男女をマッチングさせるというディストピア的な設定なのに、主人公周辺を恋愛で葛藤させただけで、雰囲気ハッピーエンドで終わった。
それならそうと理解したいが、マッチング過程がブラックボックスだったり、LGBTの存在が示唆されながら個人の内心にとどめて終わったり、なぜか政府に絶大な信頼がよせられていたりと、複数のディストピア要素が提示されたまま解消されなかったのは何なのか。

コンビニカレシ

真面目なメガネ委員長がサブヒロインとして存在感を発揮しつづけたのが、この種類のラブコメ群像劇では珍しくて良かった。

THE REFLECTIONザ・リフレクション–』

アメコミをそのまま動かしたような、ビジュアルインパクトは素晴らしかった。しかしその序盤の衝撃に目がなれた後の物語は、特に驚きのないヒーローとヴィランの抗争劇で、良くも悪くも普通という印象で終わった。

地獄少女 宵伽

新作は1クールの前半だけなのに、かなり作画が厳しい。1期から3期まで少しずつ絵に力を入れてきただけに期待外れ。

戦姫絶唱シンフォギアAXZ

恒例の決め台詞を絶叫するパターンが確立してきた主人公周辺の女性陣より、言動が自由な敵味方の男性陣がキャラクターとしては魅力的に見える。

徒然チルドレン

コミュニケーションのつたなさやあやまちをふくめて、誠実であろうとする若者たちの恋愛模様には好感を持てたし、それを金子ひらく監督が正面から映像化できたこともすごかった。
あと、恋愛マスターについてだが、ナルシシズムでつきぬけつつ好感が持てるキャラクター性だけなら、前例はあまたある。しかしまさか追随するキャラクターが出てくるとは「わっかんね☆」

ナナマル サンバツ

クイズを競技として見せるスポーツアニメとして興味深かったが、愉快犯がルールの穴をついて競技性を壊す展開がクライマックスになったシリーズ構成は疑問。あと、発声が重要になる題材なのに、メインキャラクターの声質がひとりだけ生っぽいのは首をかしげた。

NEW GAME!!

仕事でどんどん表情がくもっていく物語がつづいたが、あくまで創作の苦しみとして描いているため、嫌悪感がわかない。ひとつのゲームが出来上がっていくまでを劇中のデザインやゲーム画面で説得的に見せることもできていた。

捏造トラップ-NTR-

作画が好きになれない方向性で安かった。

ノラと皇女と野良猫ハート

「猫」のシナリオを「はと」が書いて登場するのが「ヤギ」とか、「あっれー☆、わっかんね☆」

はじめてのギャル

友人3人の性欲描写が楽しめないし笑えもしない。演出からして力が入っておらず、視聴者の性欲を喚起させたり共感させようとする作りですらない。ラブコメの定番を深く考えずに押しこんで、時代遅れとなったからと表層だけ過激に処理したかのように感じた。

バチカン奇跡調査官

米たにヨシトモ監督にしては演出に力がなくて、超常現象や殺人に恐怖が足りず、真相との落差が生まれない。推理や捜査もあわただしくて、真相の指摘がそっけなく、ミステリらしい思わせぶりが足りない。
ただ宗教との距離感は予想より良くて、バチカンの問題にはどれも元ネタがきちんとあるし、それを暴いた主人公の立場で組織の自浄作用の意義を描いたともいえる。奇跡のネタを割る物語でありつつ、奇跡と信仰への敬意を失わないことにも好感をもてた。

バトルガール ハイスクール

同年代の少女たちを一挙に第1話から登場させ、等分に映したので、誰も印象に残らないまま終わった。テロップで名前や学年を表記していたが焼け石に水。各話ごとにメインとなる少人数ずつ見せてほしかった。異分子的な少女に隠されていた設定はライトなりにSFの良さを感じたが。

ヘボット!

監督がコンテ段階で勝手にネタを追加したため先行きが見えなかった前半もすごかったが、そうしたネタを回収しながらパロディを脚本段階でつめこんだ後半も良かった。作画も1年間をとおして元気いっぱい。メタフィクション性も、この放送枠最後の作品らしさがある。

僕のヒーローアカデミア 第2期』

ほとんどの人間が特殊能力をもっている設定のためか、一般市民の立場があやふやで、ヒーローとヴィランの立場も概念的。ヒーロー候補という立場を争奪する前半と、ヒーローらしいヒーローを求めるヴィランと戦う後半とで、作品のヒーロー像の空虚さがあらわになった。
そんな概念としてのヒーローを目指すことしかモチベーションがない主人公も空虚だ。ただ、そのような空虚なヒーロー像だからこそ、ライバルと主人公が自己の存在をかけて戦った第23話は、魂がゆさぶられた。