法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『クローズアップ現代+』2兆円↑アニメ産業 加速する“ブラック労働”

いつもの30分枠で、若手動画職の月収10万以下という薄給ぶりや、制作進行職の200時間以上の残業をとりあげ、未来を模索する動きをつなげる。
JAniCA理事として入江泰浩監督もゲストに登場。最後の提言パートで、海外のような税制優遇を訴えたフリップとは別に、NHKもふくめて放送局が制作費を上げるべきという原則論を滑りこませていた。
2兆円↑アニメ産業 加速する“ブラック労働” - NHK クローズアップ現代+

もう1点、これはNHKを含め、いろいろなテレビ局にお願いしたいところなんですけれども、コンテンツとして、アニメーションをこれからも作り続けていくことが決まっているのであれば、制作費を倍にして、さらに安心してアニメーターが作ることができる、そういう環境を作っていただきたいと強く思います。


番組全体としては、とにかく現状のさまざまな動きを雑多に紹介。あくまで叩き台といったところか。
アニメーター寮やポリゴンピクチュアズの紹介パートなど、1ヶ月前の『オイコノミア』と同じ取材からと思われる抜粋も多い。
『オイコノミア』マンガとアニメ 熱〜い現場の経済学 - 法華狼の日記
そこで興味深かった新情報は、湯浅政明監督ひきいる新興制作会社サイエンスSARUの試み。かつてスタジオぴえろ等が試みて頓挫していた全自動中割りシステムを、顔面をパーツと輪郭にわけておくことで実現した。
そのFLASHツールで自動的に中割りする手法を漫画形式で解説していたのは読んでいたが、番組では目的と効果をチェ・ウニョンが解説。

上記の漫画では描かれなかったコピペの利用などもふくめて、実際に映像で確かめることができた。解説によると、手描きアニメでは珍しく、大幅なアニメーターの削減に成功したという。
もちろん、単純に人員を削減するだけでは仕事を奪いつつ、残った人員に負担がかかるという結果になりかねない。しかし先述したように、現状では動画職が過剰な仕事量と薄給のギャップに最も苦しんでいる。アニメーションの設計をする原画職と比べて、動画職の多くは海外の下請けを利用しているから、他の職種と比べて国内スタッフの仕事を奪う率も低いはずだ。
念のため、それでもシステムひとつで全てが解決する現状ではないし、デジタル撮影による効率化が労力軽減よりも表現の過剰化をまねいたような状況にいたるかもしれない。だが、ひとつの模索としては意義のあるものだろう。