法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『キラキラ☆プリキュアアラモード』第6話 これってラブ!?華麗なるキュアショコラ!

いちかの家の隣へ越してきた高校生、剣城あきら。危ないところを助けてもらったいちかは、あきらに無意識で恋をしてしまう。
ひまり、あおい、ゆかりの3人は、いちかをひとりにしてやり、チョコレートを買おうとするあきらとデートさせようともくろむが……


変身したキュアショコラこそ階段状の舞台でポーズを決める変身シーンともども宝塚的だが、剣城あきらのファッションは必ずしも男装的ではないところが魅力的。
たしかにベリーショートのパンツスタイルは中性的だが、特別に気負っている様子も女性らしさを排除している様子もなく、自然に着こなしている。あきら自身の台詞でも、男性と思われることは目的にしておらず、あくまで「かんちがい」と位置づけられている。


もちろん『プリキュア』シリーズで男装を描いた前例は少なくないが、おおむね特殊なイベントとして描かれてきた。
ふたりはプリキュア』の美墨なぎさは、あくまで演劇でロミオを演じた*1。『スマイルプリキュア!』の青木れいかは、絵本の世界で登場人物として桃太郎や王子を演じた*2。『ハートキャッチプリキュア!』の明堂院いつきは、普段から男装している前例だが、あくまで家をつぐためであって、男性ジェンダーを自認しているわけではない。また、3人とも同性からラブレターをもらったり、絵本の世界で同性にプロポーズしたり、同性にひとめぼれされたりと、レズビアニズム描写はあるのだが、それも特別なイベントや周囲の行動にとどまっていた。
ちなみに、『美少女戦士セーラームーン』の天王はるかも、少なくとも原作ではジェンダー規範を逸脱するための特殊な設定をもっていた。同系列作品の先例として比較されがちで、たしかにその言動の先鋭性は今なお新鮮に感じられるが、あくまで異性装は特別な行為と位置づけられている。
いまのところ特別な背景がなにもない、ただ自由なふるまいがジェンダー規範を逸脱するからこそ、剣城あきらのスタイルは現代的だ*3。そうして普段の姿で肩の力を抜いているから、プリキュア姿の華々しさも対照的に際立つ。


なお、いちかはあきらを男性とかんちがいして恋していた。辞書の記述も性愛の多様性を前提視するようになった昨今*4、今回の恋をただの間違いとして終わらせてほしくない気分はある。いちかは失恋するにせよ、それが同性に恋愛してはならないという規範を強化しないよう期待したい。
ただこれも深読みすると、いちかがあきらに恋したことに、相手を男性と思った以上の意味があるかもしれない。いちかは守られるだけの女性の表象ではなく、プリキュアとして危機にたちむかってきた。助けてくれたあきらと同じ行動を、第2話でひまりに対しておこなっていた。つまりあきらは、いちかの憧憬というだけでなく、投影でもありうるはずだ。


最後に、けっこうサブキャラクターの人間模様も味わい深い。あきらの名前を聞いて察するが何も説明しないゆかり、敵に襲われた時にしれっと合流するひまりとあおい、どれも台詞でくどくど説明しない良さがある。