法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

神奈川県の生活保護担当職員が受給者へ攻撃的なグッズをつくっていた問題が、当初の報道よりも大規模だった件

ジャンパーとポロシャツにくわえて、新たに8種類のグッズが作られていたことが発覚したという。
http://www.asahi.com/articles/ASK295FJ3K29ULOB01G.html

8品目はTシャツ、半袖シャツ、フリース、マウスパッド、マグカップ、ボールペンなど。ジャンパーが製作された翌年の2008年から16年に、職員有志が自費で作っていた。

ここまでくだらないことに給料を浪費できる身分なら、なるほど受給者の立場になって考えることなど不可能だったろうな、と皮肉のひとつもいいたくなる。
そうしたグッズ制作に税金を使っていると考えると*1、必ずしも悪意のない不正受給よりもはるかに悪質といえないだろうか。たとえば一時期に芸能人が攻撃された親類の扶養は義務ではないため、本来は形式的な不正ですらなかった。
子供がアルバイトした場合の申告漏れなど、きちんともらえる立場でも手続き不備で不正受給にカテゴライズされるケースも少なくない。ちなみに同じ神奈川県で修学旅行に行くため長女がアルバイトしていた一家が生活保護費を返還するようせまられた事件では、家族側の勝訴で裁判が終わった*2

Tシャツには「生活保護費支給日100回記念」の意味とされる英語と職員の似顔絵もプリントされ、担当期間が8年を超えた職員をねぎらうために作ったという。マウスパッドやマグカップは異動する職員への記念品、ボールペンは出産祝いの返礼の品とされる。

当初は有志が悪ふざけで作ったとされ、それはそれで問題だったが、上層部が直接的に問われるのは管理責任にとどまるという意見もあった。
念のため、グッズ制作を上層部が認識していなくても、生活保護の受給額をしぼろうとする動きはひとつの現場にとどまる問題ではなく、受給者を攻撃するような現場の思想も行政全体が育てていたと解するべきだろう。
しかし数年間にかけて記念品や返礼品として作られたグッズも複数あるとなれば、上層部がまったく知らなかったとも考えにくい。むしろ地位の高い人間が主導して配布していた可能性すら感じられる。


また、こうしたグッズ制作の動機として、発覚した当初は元受給者から攻撃された事件があると報じられていた。
http://www.asahi.com/articles/ASK1K551JK1KULOB026.html

小田原市では07年、生活保護費の支給を打ち切られた男が市職員3人を杖やカッターナイフで負傷させる事件があった。市によると、当時の生活保護担当職員らが事件後、不正受給を許さないというメッセージを盛り込み、このジャンパーを作った。その後、担当になった職員らが自費で購入。現在は28人が所有しているという。

もちろん、ひとつの傷害事件から不正受給問題の提議に向かうこと自体が的外れだという批判は当初からあった。甘くみても不正受給への対処にはなりえず、内輪受けの悪ふざけでしかないだろう。
しかし今回に報じられたくらい広くグッズが配られていたとなると、もともとも職員側に差別的な思想が蔓延していて、結果として傷害事件が起きたのではないかと疑いたくもなる*3

*1:もちろん、いったん給料として受け取った金銭をどのように職員が使おうとも自由ではあるべきだ。しかし生活保護費の使用目的の制約と比べて、いささか公正を欠いているとは改めて思わざるを得ない。

*2:生活保護家庭の女子高生アルバイト代返還騒動の結末とは | 週刊女性PRIME [シュージョプライム] | YOUのココロ刺激する

*3:さすがにこれは関連性を強く求めすぎとは自覚しているが。