法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ココロチョコ/独立!のび太国

アバンタイトルが、手描きを活用したラフな作画でドラえもんが動きまわる映像に変更。最近は劇場版ですら落ち着きつつあるので、予想外の作画アニメぶりに驚かされた。


「ココロチョコ」は、ジャイアンにみんなで抵抗しようとしたものの、のび太ひとりが矢面にたつはめに。そこで、割って食べさせた相手が自分と同じ意思をもつ秘密道具を出すが……
思考が共有される状況の気持ち悪さを描くSFらしいストーリーだが、あくまで名も無き群衆がのび太そっくりに行動するスラップスティックとして展開。好みとしては、もっと群衆の動きを同調させて、ファシズム的な不条理劇にしてほしかったかな。現状でも監視されるジャイアン視点の不条理感は良かったけれど。
ちなみに原作はあるが、生前の単行本には未収録。たしか初出の1980年には子供向けに定着していなかったバレンタインデーだが、今回のアニメ化ではしっかり季節ネタとして言及。スネ夫が本命チョコかと勘違いして赤面する場面もある*1


「独立!のび太国」は、出木杉のペンフレンドが外国人ということでさわがれているため、のび太も対抗して外国人になる。そこで独立国家をつくれる秘密道具が出されるが……
外国人になろうとする発端と、秘密道具の機能との、致命的なギャップが印象的な短編をそのままアニメ化。けっこう原作のドラえもんは求められているのとはズレた秘密道具を出すことが多い。
この原作を選んだのは、建国記念日にあわせてのことか。外国人への憧憬を肩透かしギャグとして消化した後は、けっこうなポリティカルサスペンスが展開されていく。原作通りとはいえ、亡命許可証をジャイアンに入手されてから始まるのび太の苦難は、なかなかに現代にも通用する政治的寓話だ。恣意的に引かれた国境という概念の滑稽ぶりが、なかなかブラックコメディとして完成度高い。

*1:コメディ的な描写だったが、ホモフォビアチックではないことに好感をもった。