法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『キラキラ☆プリキュアアラモード』第1話 大好きたっぷり!キュアホイップできあがり!

スイーツをつくることが大好きな中学2年生、宇佐美いちか。海外で医療活動をしている母が帰国すると聞いて、さっそくケーキをつくろうとする。
しかしスポンジケーキがうまくふくらまない。悩んでいたところに不思議な小動物ペコリンがアドバイス。混ぜすぎで“キラキラル”が失われているというが……


スイーツというモチーフを前面に出した今作は、若手の暮田公平とベテランの貝澤幸男による共同シリーズディレクター体制。負担を減らすことが目的で、若手をベテランがサポートする関係を目指しているという。
『キラキラ☆プリキュアアラモード』で肉弾戦を封印する理由とは!? | アニメイトタイムズ

ふたり体制にしたのはSDの負担を減らすためです。『プリキュア』のSDって、オリジナル作品をゼロから作って1年間コントロールする仕事なので、実はかなり大変で……。監督への負担が大きすぎるということで、そこは見直すことになりました。

作画にしても美術にしても、どちらの監督の考えを汲めばいいのか、スタッフを悩ませるようではいけませんよね。なので今回は暮田監督の感性で統一して、決定を選択するその責任を背負っていただいています。

貝澤さんはベテランなので、作業の進め方、まとめ方が、経験が伴っているので、 非常に合理的な点が、他のシリーズディレクターと違うところです。そこでスピードアッ プを図り、余裕ができたら他の面でもクオリティアップを目指せればと思っています。

そのおかげか、過去になく大幅な番組フォーマット変更をおこないながら、映像面は充実していた。
すみずみまで色彩設計がいきとどいた画面は華やか。キャラクター作画も全体として整っていて、アクション作画も逃げ足を重視しつつ期待以上に動いている。コンポジットにも気を配り、スイーツ関係の質感に適度なリアリティがある。
エフェクト作画監督として橋本敬史もクレジット。貝澤幸男SDの東映アニメ『墓場鬼太郎』でOPとEDを担当していたので、人脈から考えて不思議ではないが、まったく予想できなかった。今期も複数作品にエフェクト作画の中心となる立場でクレジットされていて、どれほど速筆なのだろうかと感嘆する。


物語面についていうと、まだひとつの出会いを描いただけでドラマは駆動していない。発端として街全体の超常的な異変をアバンタイトルで描きながら、本編に入ると忘れられているという一昔前の少女アニメのような連続性の欠落も好みではない。
しかし、番組フォーマットを説明する第1話としては完璧に近いものだった。“キラキラル”というスイーツにまつわるエネルギーを設定し、ありがちな製菓の失敗でそれが失われるという表現は、意外と説得力あるものだった。今後もリアリティある失敗をきちんと各話ストーリーにもりこめていけば、日常パートとプリキュアパートとの連続性をたもてるだろう。そのエネルギーを敵味方の妖精が奪いあう対立構図もわかりやすい。
アクションも変身だけで終わらず、あまりプリキュア側から格闘しない今作の特色を強調しつつ、きちんと敵との決着まで見せきった。敵との戦いにスイーツを使う表現も魔法めいていて、恐れていたより不潔感はない。


最後に、今作のオリジナリティである実写の製菓シーンについて。
まず本編終了後の1分間レシピについては、スイーツが早回しでできていく映像は単調と感じさせず、けっこう見ていて楽しいものだった。レシピ通りに作りたい視聴者は録画するだろうし、幼い視聴者に製菓の楽しさを感じさせる目的ならば、これはこれで間違いではないだろう。
ただ、本編の製菓シーンに実写を挿入した表現だけは、アニメーションの負担を抑えるためだとしても、さすがに初見では違和感があった。Eテレの教育アニメでは珍しくない手法ではあるし、より一般的なTVアニメでも『格闘料理伝説ビストロレシピ』のような前例はある。しかし全体として華やかでポップな表現がいきとどいていただけに、生々しい肌が画面に出てきたことのギャップが激しい。もっと照明を工夫したり、製菓器具だけ画面に映したりという工夫の余地はあるだろう