法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

次期都知事との声もあった蓮舫氏に対する、産経新聞と自民党議員によるデマの共通点

発端は、次期都知事へ期待する人物を街頭インタビューした時、テレビ朝日とTBSに同じ女性が映り、蓮舫氏を推したという出来事だった。
「やらせ街頭インタビューはピースボート」に産経が釣られる - Togetter
その女性がピースボートスタッフに酷似しているとインターネットで噂され、そのまま6月16日に産経新聞が記事化した。
エラーページ - 産経ニュース

TBSが6月15日夕の報道・情報番組「Nスタ」で、東京・JR新橋駅前で街頭インタビューした「20代女性」が、被災地・熊本をレポートしたピースボートの女性と酷似していることが16日、分かった。ネットでは「さくらか?」「やらせではないか」とTBSの報道姿勢を疑問視する声が続出している。

冒頭で書かれているように、違うTV局に出たことではなく「ピースボートの女性と酷似している」ことに力点をおいていた。
しかし産経はTV局に確認をとろうとして断られたのみで、ピースボートには質問しなかった。記事に用いた画像もテレビ朝日とTBSの映像のみで、ピースボートのスタッフとの比較はおこなわなかった。
産経はピースボートの抗議文をそのまま他人事のように掲載し*1、やがてピースボートとスタッフへの謝罪を表明して元記事を消したが*2、インタビューを受けた女性や蓮舫氏への謝罪はおこなわなかった。


一般論として、こころよくインタビューに答えて、それも番組で使える回答をしてくれる人物は多くない。だから同じ日に同じ場所でインタビューしてピックアップされても不自然ではない。朝日新聞の伊丹和弘記者は、インタビューをしてくれる人を独自に見つけようとせず、他局に答えた人物を利用した「手抜き」の可能性を示唆している*3
都知事選の候補として名前があがっている有名な女性として、同性で推したくなる心情も不思議ではない。むしろ違うTV局で違う候補を推せば、それこそ不自然だろう。
何より、インタビューで答えたのがピースボートのスタッフだとして、それがどれほど問題といえるだろうか。ピースボートに入ったからといって、選挙権を失うわけでも、言論の自由を失うわけでもない。さまざまな政治家と関係をもっているが、特定の政党と直接的につながっている団体でもない。
つまり、たとえデマでなかったとしても過ちでないことまで、産経新聞は問題視したのだ。ピースボート蓮舫氏に対する蔑視に乗っかり、扇動するかたちで。


そして、デマでなかったとしても過ちでないことを、6月17日に自民党菅原一秀衆院議員も問題視しようとした。
http://www.asahi.com/articles/ASJ6K5GFYJ6KUTFK00M.html

菅原一秀衆院議員は17日、東京都知事選をめぐる党会合で、民進党蓮舫代表代行について、「五輪に反対で、『日本人に帰化をしたことが悔しくて悲しくて泣いた』と自らのブログに書いている。そのような方を選ぶ都民はいない」と発言した。

 菅原氏は朝日新聞の取材に対し、「蓮舫氏のブログではなく、ネットで流れていた情報だった」と訂正したうえで、「五輪に後ろ向きな人が知事になれば困るので、自民党が候補を出すべきだとの趣旨。帰化した人が知事になってはならないという趣旨ではない」と説明。

当然のことながらインターネットの噂を検証もせず、そのまま批判につかおうとしたことは大問題だ。そのインターネットでも、蓮舫氏は日本人の母と台湾人の父の間に生まれて日本で育ち、二重国籍という立場から日本を選んだというid:fut573氏の検証がすでにある*4


その上で、「帰化をしたことが悔しくて悲しくて泣いた」という過去が、政治家としてどのように問題だというのか。国家への帰属に葛藤や不満をもった過去は、むしろ政治家として国家のありようを変えたい動機として充分なものではないか。
また、東京五輪に反対という意見をもつ都知事を、都民が推してはならないのかという疑問もある。民主主義や人権といった現代社会の根源にかかわる話題でもなく、本来なら意見がわれてしかるべきテーマだろう*5
さすがに菅原議員は謝罪したが、民進党から自民党あての要請には、個人の質問だからと個人名義で回答するという形式を選んだ。

辻元清美」を「辻本清美」と誤変換するというミスは見逃すとしても、「発言の経緯を説明するとともに、事実と違う部分について謝罪している」という回答は、発言の枠組みの問題点については謝らないという意味をもつ。
帰化した人間に対して、謝罪文においても自民党が撤回しなかった思想として、注目され記憶されるべき問題といえるだろう。