法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

運命論に流れるようでは日本の原子力政策は信用できないと思うしかない

フジテレビによる班目春樹インタビューを読んで、その内容に唖然とするしかなかった。
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00318311.html

班目氏は「(『班目委員長は、水素爆発はないと言ったじゃないか。しかし爆発が起きたじゃないか。この辺りから、菅首相と、あるいは首相官邸と班目氏との信頼感が揺らぐというような空気になったのか)なんとなく、あの爆発の映像を見せられてから、菅総理からは、信用されなくなったなというのは、ひしひしと感じました」と語った。
重要な局面で、専門家としての役割を十分に果たせなかった班目氏の失態。
それは、結果として、のちに「暴走」とも指摘された、菅首相ら官邸主導の原発対応を招く一因となる。
班目氏は、「あんな人を総理にしたから罰が当たったのではないかと、運命論を考えるようになっている」と語った。
「運命論」と、どこか、人ごとのように5年前を振り返る班目氏。

フジサンケイらしく「官邸主導の原発対応」について批判的な表現を採用しつつ、インタビューに答えた班目氏に対しても「どこか、人ごと」と手厳しい。実際、そうせざるをえないような内容だ。
しかも映像で確認すると、「罰」ではなく「天罰」と、笑いながら語っている。いくらなんでも良い印象は持てない。


原子力安全委員会の委員長が、自他の責任のありようを思索するのではなく、運命論に身をゆだねている。しかも、ただ責任を回避するのではなく、自身を信用しなかった首相と選んだ人々へ責任を転嫁するような内容だ。
本気で信じているわけではないにしても*1、災害へ天罰論を持ちこむことは看過できない。天災であれば罰を見いだすべきではないし、人災であれば当事者が逃げだしてはならない。
念のため、インタビューでは班目氏が避難民へのもうしわけなさを語ったり、現在の原子力政策に対して「安心しきった途端に、とんでもないことになります」と答えている部分もある。元委員長個人の考えを日本の原子力政策と単純に同一視するつもりもない。
しかし、責任を回避する運命論が公言されているということは、まともに責任の所在をたしかめることも、きちんと責任を負わせることもできていないということ。無責任な政策を信用することは大変に難しいことだ。

*1:本気で信じてしまうほど心理的に追いつめられているのであれば、班目氏個人への悪印象は薄くなったかもしれない。