エリートサラリーマンのサムは、親友の婦人科医に女の醜さを語っていた。そして別の友人の独身最後のバカ騒ぎパーティーに参加した帰り、奇妙な古道具屋に迷いこむ。
 そして次の朝、サムは女性の姿で目ざめた。あわてて婦人科医に突撃するが、おかしな女性と思われて相手にされない。そしてサムは親戚の女性と称して職場に向かうが……
2015年の米国映画。女体化やTSFと呼称されるジャンル作品。監督のニコラス・ブルックスで検索すると『LUCY ルーシー』の視覚効果スタッフと同名だが、情報が少なすぎて同一人物なのか判断できなかった。
映画そのものは全体的にカットが微妙に長く、それゆえかテンポがゆるくて、TVムービーのようだった。暗転の多さもCM挿入を前提にしていると考えれば納得がいく。
 いかにもな女性嫌いの女体好きの男が、謎の古道具屋に出会った次の朝から美女に変身し、仕事を地味にささえる女性の視点を知っていく……という物語にしては、派手な女性に対する蔑視的な評価は変わらないし、男性時は意味不明だった女性たちの会話もファッション関係として理解していく。そもそも肉体の性別と、会話を理解するだけの背景情報の知識や興味関心は直結していないだろう。映画で主人公に女性らしい動作やファッションを叩きこむ教師として男性が登場するが、そのねじれを相対化の端緒として活用したりはしない。序盤の独身男性パーティーに呼ばれたコンパニオンの立場や視点を知ったりはしない。
 どちらかといえば、もともと数少ないと思われる親友の婦人科医とのホモソーシャルな関係から、そのまま女体化ボーイズラブのように発展する物語といったところか。ただしサム以上に親友の妻が魅力がないため三角関係は成立していない。
 わりとTS前後の主人公の俳優はそれらしい美男美女をそろえているし、女性らしい服装や仕草を叩きこまれるパートもあるので、この種類のジャンルに求められる魅力はそなえているとは思うが……ただ性的描写というと先述のコンパニオンの煽情的なランジェリーくらいで、主人公のそれは無防備にショーツを見せる場面がある程度で、性転換ポルノとしても魅力は弱め。
