法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

脚本家の沖島勲氏が死去

映画監督の沖島勲が逝去、ピンク映画から「日本昔ばなし」脚本まで幅広く活躍 - 映画ナタリー
ちょうど実写監督作品の上映イベントがおこなわれているさなかだった。
沖島勲監督の全七作品、七週に亘り、一挙公開!! 過激で、キュートな、ユートピア。/ラピュタ阿佐ケ谷
まんが日本昔ばなし』のシナリオで有名だが、個人的にはりんたろう監督インタビューで語られた『ムーミン』起用の経緯が印象深い。
東映・動画・手塚・労働・運動・りんたろう - 法華狼の日記

家族ってものを別の視点で見せるようなドラマを作れるようなやつはいないか、と言ったんだ。そうしたら「いますよ。任せてください」と言うんだ。

 そこで出てきたのが、若松孝二若松プロダクション。その頃の若松プロは政治色の強いピンク映画をバンバン撮っていた。高坂が紹介してくれたのが、そこにいた沖島勲さんだった。会って話をしたら、僕と歳も同じだったし、話も合った。「『ムーミン』で4回に1回くらい視点を変えたホームドラマを入れて、抵抗してきたいんだ」と説明したら、面白がってくれた。

沖島勲は、アニメ界において後に『まんが日本昔ばなし』でメインライターとして活躍した。近年もアート系SF映画『一万年、後....。』を監督したりと精力的に活動している。

そして沖島は1人では間に合わないといい、共作希望者として栗田邦夫というドキュメンタリストを監督に紹介。さらに自分達はピンク映画を撮っているからと、名前を隠すように沖屋栗八という共作者名を使うことにした。彼らが最初に手がけた脚本は評判がよく、電通の人間から誰が書いたのか聞かれ、ごまかさざるをえなかったとは監督の弁。監督自身はムーミンが物置で靴を見つけて嗅ぐ場面から始まる第35話「パパの古い靴」が、「狙いが面白くて、新鮮」と特に好きらしい。

さらに監督は沖島と同じ日大出の足立正生にも脚本をたのんだが、「『ムーミン』は保守反動だから、俺はやらない」と断られたという。「まあ、そうだろうなとは思った」とは監督の弁。そして足立は後に赤軍へ入った。ともかく新左翼出身の作家が『ムーミン』にかかわり、自分の思いに引き寄せた回を作っていった。


しかし滝沢敏文監督やうえだひでひと監督など、最近の作品でもなじみのあったアニメ関係者の死がつづいてつらい。
お知らせ: 滝沢敏文の頭の中
http://www.brother-noppo.com/essay/zakkan/index.php?id=316
滝沢敏文監督はサンライズでの『装甲騎兵ボトムズ』の仕事が印象深いが、撮影出身だったからこそ実現できたOVAダンバイン』の実験なども面白かった。
うえだひでひと監督は、真下耕一押井守西久保瑞穂とならんで、タツノコ四天王ともいわれた。他の四天王が独自路線へ進むなか、ひとりの演出家として存在感を示しつづけた。特に東映のTVアニメ『ねぎぼうずのあさたろう』での仕事が素晴らしく*1、同じ東映作品の『トリコ』でも比較的に映像の力があった同作品において頭ひとつ抜けた演出をしていた。