まず、誤解をおそれずにいえば、声優だけではアニメはできないが、アニメーターだけでもアニメはできる。
三重野瞳のように声優や脚本家として活躍する歌手もいるし、音響監督をおこなう声優は多いが、それでできるのはラジオドラマだ。あとは静止画を作品に提供した井上麻里奈がいるくらい。
アニメーターなら脚本、コンテ、演出、原画、動画、撮影、編集までできる。さらに音響監督をかねるアニメ監督は少なくない。米谷良知監督など、原画や作画監督もおこなうし、作詞作曲歌唱の経験もある。
そして少数ながら、自主制作は除いたとしても*1。声優をつとめたアニメーターもいる。
有名なところで『風立ちぬ』の主人公、堀越二郎を演じた庵野秀明。ぼくとつな発声が、社会や人間への興味が薄いキャラクターにあっていたかもしれない。
他に話題になったのは『ガンダム Gのレコンギスタ』の最終回に出演した富野由悠季。基本的には演出家だが、『無敵超人ザンボット3』などでは原画も描いていたという。
他には『牙狼〈GARO〉-炎の刻印-』で王子の師匠ラファエロを演じた天神英貴。もともと俳優としての仕事が多い。アニメーターとしては美術やデザインにあたる仕事が主。
たとえば『十兵衛ちゃん2 〜シベリア柳生の逆襲〜』で声優としてクレジットされた馬越嘉彦。キャラクターデザインおよび総作画監督もつとめた。
同作品で右太衛門様を演じたユーリ・ノルシュテイン。たまたま日本に来ていたところをかつぎだされた。これを数えていいのか。
さらに『聖剣使いの禁呪詠唱＜ワールドブレイク＞』の敵のロシア語を演じた川畑えるきん。映像に時間も人手も足りてなさそうなところ、ロシア語の発音ができるからと凄腕アニメーターを声優にさせる、ウケねらいが全ての制作者に震撼させられた。ちなみに英語の決め台詞はいつも発音ガバガバで、同作品の稲垣隆行監督は音響監督を兼任。
とりあえず最近の作品をならべたが、さすがにイレギュラーな抜擢が多いようではある。
女性アニメーターが声をあてた作品が思いあたらないのも不思議といえば不思議。
