法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒season13』第10話 ストレイシープ

「犯罪の神様」としてさまざまな手法を考案した知能犯「飛城雄一」に対処しようと、警視庁が動き出した。その矢先、営利誘拐や予告有罪など、さまざまな犯罪に有名人が巻きこまれていく。
やがて連続事件のミッシングリンクとして樹海の集団自殺事件が浮上するが……


2時間半の元日スペシャルとして放映された今回は、杉下右京の周囲で起こった自殺が起点となる。そして行方不明になる杉下を、相棒の甲斐享らが探索するという、普段とは逆の構図。
聖書から引用したり、宗教画の前で犯罪計画を語りあったり、押井守作品を見ているような気分だった。雄弁なモノローグに比して思想性が欠落し、手段だけが肥大化しているところも通じている。
惜しむらくは「飛城雄一」の顔をはっきり見せてしまっていること。その正体をめぐっても押井作品らしいツイストが入っているが、もっと空虚さをつきつめてほしかった。見せるにしても凡庸すぎる顔立ちにするとか、最後に「飛城雄一」の組織だけが維持されてしまうとか。
たがいをよくしらない一般人を犯罪の構成要素に使うというトリックも、それほど斬新なわけでもないし、行動が直接的すぎて驚きがない。もっと人間ピタゴラスイッチみたいな複雑さがほしかった。


あと、このドラマは地味なつくりのようでいて、意外と最新の技術や文化をうまく引用してきたものだが、今回はいまひとつ。フラッシュモブはともかく、犯罪の瞬間を動画で実況する描写は雑に感じられた。
その犯罪が脅迫によるものと周知されたと最後にフォローされるが、そもそもそのフォローが入ることは視聴者からすると当然なので、予期された茶番にしか見えず、しかし笑いとばせるような演出でもない。