法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

大屋教授の疑問視について、第三者の情報を求む

くわしくは後述するが、大屋雄裕教授が下記のように主張していることについて、あらためて第三者の情報を求めたい。もちろん命令などではなく、あくまで希望として。
確信的誤読犯対応(1) - おおやにき

朝日検証自体の信頼性が疑問視されている(典型的には植村氏の利害相反問題)のに何言ってるんだろう

残念ながら大屋教授は私個人に対して応答しないと表明している。その態度が間違っているとはいわないが、私が直接に聞きだせるとは期待できなくなった。
しかしこの主張は、個人的に北星学園大学の件よりも興味があり、ぜひ「疑問視」の実際を知りたい。「疑問視されている」と表現していることから、大屋教授個人の意見でもないはずだ。


それに関連して、大屋教授エントリへのブックマークについて、いくつか具体的に「疑問視」していく。
はてなブックマーク - 確信的誤読犯対応(1) - おおやにき
まずは植村記事について「やらかし」と評するid:katz3氏のコメントから。

katz3 前職でやらかした人が大学に職を得ることにより、やらかし起因の脅迫から大学に守ってもらえるかという話。前職で何をしてても大学に逃げ込めさえすれば強力な盾を得られるのは正当か、と。大学人の特権階級化だな。 2014/11/05

私は「捏造」などなかったこと、「誤用」であっても記者個人の責任は問いにくいということを下記エントリで主張した。
専門的な書籍から引いた用語解説が後年に不正確とされた時、大学をやめる必要があると主張する人々 - 法華狼の日記
研究の進んでいない時期に、事典の誤りを他紙と同じように引いてしまったこと、そしてそれは記事の本筋ではなかった時、katz3氏は「やらかし」と表現するのだろうか。
ちなみに北星学園大学サイトでシラバスを確認すると、記者活動が評価されて非常勤講師となったように読める。
北星学園大学Webシラバス

私は社会部記者を経て、テヘラン、ソウル、北京の特派員を経験した元朝日新聞記者です。記者歴は32年になります。この講義では、私の取材体験や各地からのニュース、話題を紹介しながら、日本や世界の様々なテーマについて一緒に学んでいこうと思います。


次に、id:k-takahashi氏がコメントで引用している、先述の朝日検証への疑問視について。

k-takahashi メディアリテラシー 『朝日検証自体の信頼性が疑問視されている(典型的には植村氏の利害相反問題)のに何言ってるんだろうというレベル』 2014/11/04

k-takahashi氏のブックマークを見ていくと、一部分を引用したコメントばかりで、引用に強い否定も肯定もしていないようだ。ゆえにk-takahashi氏の責任は問わないと考えて、以降は引用部分への疑問符として書いていく。
さて、「典型的」といいながら、大屋教授は具体的な事実や風聞を示していない。実際に朝日検証を読めば、利益相反の指摘と思われる義母との関係についても説明されている。
「元慰安婦 初の証言」 記事に事実のねじ曲げない:朝日新聞デジタル

 植村氏によると、8月の記事が掲載される約半年前、「太平洋戦争犠牲者遺族会」(遺族会)の幹部梁順任(ヤンスニム)氏の娘と結婚した。元慰安婦を支援するために女性研究者らが中心となってつくったのが挺対協。一方、遺族会は戦時中に徴兵、徴用などをされた被害者や遺族らで作る団体で挺対協とは異なる別の組織だ。

 取材の経緯について、植村氏は「挺対協から元慰安婦の証言のことを聞いた、当時のソウル支局長からの連絡で韓国に向かった。義母からの情報提供はなかった」と話す。元慰安婦はその後、裁判の原告となるため梁氏が幹部を務める遺族会のメンバーとなったが、植村氏は「戦後補償問題の取材を続けており、元慰安婦の取材もその一つ。義母らを利する目的で報道をしたことはない」と説明する。

時系列から考えて、義母の団体と従軍慰安婦が初報時に直接のつながりはなかったのは事実だろう。
しかも直後に北海道新聞が詳細な報道をおこなったという事実も指摘されている。朝日記事が特別な利益供与をしていたのならば、北海道新聞よりも詳細な報道になったはずだという傍証だ。

 8月11日に記事が掲載された翌日、植村氏は帰国した。14日に北海道新聞のソウル特派員が元慰安婦の単独会見に成功し、金学順(キムハクスン)さんだと特報。

そもそも取材対象者が後年に参加した会の幹部が義母という利害関係は、さほど近いものとは感じられない。たとえば夕刊フジで連載している「テキサス親父」の活動を産経新聞が単独で報じていることと比べるべくもない*1
このように、親族へ特段に利益を供与する報道ではなかったという朝日検証について、私は疑問点を見いだせなかった。事実にもとづく批判も私個人は見かけていない。
インターネットを検索しても、以前に見かけたことがある[twitter:@daitojimari]氏の下記ツイートくらいしか目立つ批判がない*2

daitojimari氏は金学順氏が植村隆氏の親族と勘違いしているのだろうか。そのような認識での疑問視を大屋教授は前提視すると主張したのだろうか。それがわからないので困っている。
私個人へ応答しないことはしかたないが、当時の植村記者や朝日検証を批判したことに対しては、責任ある対応を望みたい。


また、批判へ応答する責任について、id:frothmouth氏が下記のようにコメントしていた。

frothmouth 見つけたんでブコメし kyo_juメソッド http://anond.hatelabo.jp/20090110024344  言ってないことを読み取るマン ハテナは何年も前からぜんぜん進歩してないって事かな/バカを相手したら「バカを見る」、だけなんだよなあ 2014/11/04

なるほど、大屋教授は続きのエントリの紹介で、下記のようにツイートもしている。批判の質によっては反論するべきでないというだけの主張なら、一理はあるだろう。

しかしfrothmouth氏がコメントしているエントリを実際に読めば、大屋教授は脅迫された元記者に対して、下記のように主張していた。反論するべきか否か、具体的に論じなければどちらの態度が正しいかは決められない。

批判・疑問などにも対抗していないことの理由にはならない。

そもそも、大屋教授がエントリにおいて「勝利宣言のごときコメントを付け加えている」と評したコメントで、大屋教授が引用していない範囲で私は下記のように書いていた。frothmouth氏は私のエントリにもブックマークしているが*3、気づかなかったのだろうか。

わざわざ反論する必要のない難癖であれば、あえて黙殺するのも「言論で闘うこと」「そういう対応」になりうると思います。

また、「言ってないことを読み取るマン」についていだが、大屋教授自身は続きのエントリで下記のように書いていた。
確信的誤読犯対応(2・完) - おおやにき*4

あるいは法華狼氏はおおやがぐうの音も出ないので沈黙してしまったと思ったかもしれず、そのために自分が書いたことは正しかったのだという確信と自己評価を高めてしまったかもしれない(いや彼むかしからそうですよと言う人もいるかもしれない)。

こちらにfrothmouth氏はコメントもブックマークもしていないようだが、相手の内面や第三者の評価を否定的に想像することこそ、「言ってないことを読み取るマン」にあたると思うのだが。
後述するように、私は大屋教授が自身の発言について「無料のtweet」と位置づけたことを重視したが、応答がなかったこと自体については評価をさけたつもりだ。
もともと大屋教授は私とは比べるべくもなく、社会的学問的に高く評価されていると考えている。だからこそ、評価に見あった責任が期待されると思うのだ。


そして大屋教授の続きのエントリでは、id:SUM氏が下記コメントをつけていた。発言の責任についてのものだ。
はてなブックマーク - 確信的誤読犯対応(2・完) - おおやにき

SUM このエントリは誰に向けて書いてるかよくわからないのだが、未だにほけ氏が「帰責可能性において 就職>出生」にどう反論できてるのかは理解できない 2014/11/05

私が最初に下記エントリで指摘した要点は、大屋教授が前提としてリツイートしたツイートがデマであること。デマを拡散させた責任は、「帰責可能性において 就職>出生」という論理とは独立して批判できるはずだ。
従軍慰安婦問題についての朝日検証を読んでなお、朝日新聞の影響力を大きく見積もる人々 - 法華狼の日記
さらに私はデマと指摘するなかで、朝日新聞は会社として出生での責任を主張していないといえる事実と、それゆえに「嗤うべき自己矛盾」は実在しないという結論を示した。
それぞれの発言が具体例に想定されていたため、「就職」と「出生」という立場だけでなく、「戦争責任」「吉田証言」「ツイート」それぞれの要素によっても責任の重みは変わる。さらに個々人の責任に対するふるまいによって、あらためて「嗤うべき自己矛盾」かどうかも違ってくる。
大屋教授の返答によっては、私の反応も違っていただろう。具体的には、否定せずにリツイートした前提ツイートがデマであると認めるか反論してほしかった。
ところが大屋教授は具体例が問われたことをふれず、私も言及している「有料のマスメディア」「無料のtweet」といった比較だけに落としこみ、私が気づいていないかのようにふるまった。だから下記エントリで反論した。
きちんと明記したことを気づいていないと反応されて困惑した - 法華狼の日記
さらにSUM氏がコメントしたエントリにおいて、大屋教授は自身の発言した責任が問われているという文脈を無視して形式のみを解説し、あたかも私が「有料のマスメディア」「無料のtweet」といった形式な比較に異議をとなえたかのように主張した。だから下記エントリで批判したのだ。
その記述は必要ないと大屋雄裕教授につたえたい - 法華狼の日記
SUM氏は、“帰責可能性において 本人>就職”という自明的な要素を大屋教授が捨象したことについて、どのように「理解」されているのだろうか。また、発言の責任を問われたことに対して、大屋教授が「無料のtweet」と自認したことを「理解」されているのだろうか。


最後に、あらためて私個人の興味関心について説明する。
北星学園大学が脅迫に屈したことは残念だが、実のところ最大の問題ではないと思っている。大学もまた脅迫による被害者という考えもないではない。かといって、警察に介入を求めたいわけではない*5
そもそも、日本政府や他メディアが植村記事に特段の問題がないことを指摘し、その記事以上の問題性が現在は明らかになっていると広報していれば、記者個人に脅迫が集中する可能性は低かったはず、そう考えている。
たとえば日本政府は国際広報予算を増額すると表明しているわけだが、それを国内の教育と周知に注げないものか。いっそ増額分を植村氏個人に補償金としてわたせば、「約20万人の女性を(旧日本軍が)強制連行した」を「事実誤認」と主張するより*6、よほど国際広報として効果があるのではないかとすら思う。
逆に、「朝日検証自体の信頼性が疑問視」と大屋教授がいう批判に妥当性があり、記者個人の責任があることが世間に周知されていれば、すぐさま北星学園大学が雇用を止めることができたかもしれない。それならば脅迫に屈した形にもならない*7
だからこそ、「朝日検証自体の信頼性が疑問視されている(典型的には植村氏の利害相反問題)」という大屋教授の主張について具体的に知りたい。「何言ってるんだろう」と周知の事実のように語っているのだから、きっと知っている人は少なくないはずだ。

*1:http://www.sankei.com/world/news/141022/wor1410220030-n1.html

*2:https://twitter.com/prequintet/status/497149507025371136でdaitojimari氏の別ツイートが大屋教授へ紹介されていたりしているので、朝日検証にからめて読んでいた可能性はあると思われる。ちなみにdaitojimari氏はNHK会長会見について、実在しない朝日新聞記者を批判した過去がある。現在は該当ツイートは消去されているものの、そもそも「保守速報」を根拠にしていたところから、daitojimari氏の信頼性はおしてしるべしといったところ。http://togetter.com/li/622586

*3:http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20141101/1414947107

*4:太字強調は原文ママ

*5:北星学園大学や植村氏やそれらの支援者が介入を求めることも否定はしない。

*6:http://www.sankei.com/politics/news/141015/plt1410150051-n1.html

*7:実際には、朝日検証で事実関係の誤りをふくんでいた部分で脅迫がおこなわれ、大学教授が辞職したことがあったばかりだが。http://www.asahi.com/articles/ASG9Z31T3G9ZPTIL002.html