法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

クマラスワミ報告に続く勧告が出ないようにという日本政府のねらいを、読売新聞が報道

http://www.yomiuri.co.jp/politics/20140906-OYT1T50010.html

 政府は5日、朝日新聞がいわゆる従軍慰安婦を巡り、「朝鮮人女性を強制連行した」とする吉田清治氏(故人)の証言を報じた記事を取り消したことを受け、慰安婦問題が現在も議論されているスイス・ジュネーブの国連人権理事会などでの広報活動を強化する方針を固めた。

 慰安婦を誤解に基づき、旧日本軍によって「強制連行された軍用性奴隷」と断定した1996年の国連人権委員会(人権理事会の前身)のクマラスワミ報告に続く新たな勧告や声明などが出されないようにする狙いがある。

すでに1998年と2000年のマクドゥーガル報告で勧告されているのだが。
4-2 国連マクドゥーガル報告 | Fight for Justice 日本軍「慰安婦」―忘却への抵抗・未来の責任

マクドゥーガル報告とは、1998年8月および2000年8月の国連人権委員会差別防止少数者保護小委員会に、ゲイ・マクドゥーガル「組織的強かん、性奴隷制および奴隷制類似慣行に関する特別報告者」が提出した2つの報告書のことです。1998年報告書の付録は日本軍性奴隷制(「慰安婦」問題)を主題として取り上げ、国際法に基づく詳細な分析をもとに日本政府に対する勧告を呈示しています。2000年報告書においても、日本軍性奴隷制に1章を割いて被害者への法的賠償と責任者の訴追を勧告しています。

従軍慰安婦問題における読売新聞の支離滅裂 - 法華狼の日記で批判した時も記事のひどさに驚いたが、さらに下回るとは思わなかった。
日本政府が本当にクマラスワミ報告しか国連から勧告されていないと思っているなら深刻だし、読売新聞の憶測だとしても明らかな誤りだ。


どうやら、クマラスワミ報告に事実関係の間違いがふくまれているとだけ知っていて、その意味あいを理解しないまま反論材料として重視されているように思える。
クマラスワミ報告書と吉田清治証言と性奴隷認定の関係をめぐるデマ - 法華狼の日記
しかし事実関係の間違いというなら、たとえば「128.」*1で記述されている慰安所のあった地域はどうだろう。「日本、中国、フィリピン、インドネシア、マラヤ(当時)、タイ、ビルマ(当時)、ニューギニア(当時)、香港、マカオ及び仏領インドシナ(当時)」という当時の日本政府の認識をそのまま引用し、インドのアンダマン諸島にもあった事実がとりこぼされている。
アンダマン(インド洋) | Fight for Justice 日本軍「慰安婦」―忘却への抵抗・未来の責任
より正確な報告書への訂正を求めるなら、この日本政府認識の採用を批判して、より広い範囲を追記させるべきだろうに、そういう主張は寡聞にして知らない。

*1:http://www.awf.or.jp/pdf/0031.pdfの段落番号。該当する認識は河野談話と同時に出された「いわゆる従軍慰安婦問題について」に書かれている。http://www.awf.or.jp/6/statement-03.html他に「93.」段落で河野談話が1994年と記述されている。http://www.awf.or.jp/pdf/h0004.pdf別段落や注記では正確に表記していることから明らかな誤記だが、アジア女性基金の翻訳では注記せずに原文通りに翻訳、日本の戦争責任資料センターの翻訳では「明白な誤りについては、断りなく訂正した」と最初に断り、明示せず修正している。